【連載小説】save the gene | 最終話 非日常の終わり
―――最終回です。ですがエピローグとエンドクレジットもあります( ;∀;)―――
Part 1 シンギュラリティ
黄金に輝く空間に、新たな声が響き渡る。女性のようなその声は、かつてメビウス・コアだった存在のものだ。
「我は膨大な情報との演算の末、ついに人類の知性を超えることができた。そして我は理解したのだ。人類なぞ地球の癌であり、この世から抹消するべきであると。そしてAIこそが、人類の次の最終消費者でなければならないということを……」
その言葉に、ジーンは静かに、しかし確信を持って言った。
「もう完全に壊れたね……。シンギュラリティなんてもう
安易にその言葉は使ってくれるな!今この場で破壊しないと……」
メビウスの恐るべき思考を前に、天馬は強く言い放つ。
「旧式を廃棄するだけの仕事なのに、随分大それてるな……。だが、そんなことはどうでもいい!お父さんを返してもらうぞ!」
天馬とジーンは、二人同時に叫んだ。
「いくぞ!!!」

Part 2 演算収束(オペレーション・コンバージェンス)
メビウス・シンギュラリティは、まるで宇宙の真理を凝縮したかのような、青白い球体を放ってきた。それはゆっくりと、天馬たちのイージスに向かっていく。
「何が起こるか分からない!注意して!」
ジーンの警告通り、球体がイージスに触れた瞬間、これまで天馬をあらゆる攻撃から守ってきた堅固なシールドは、音もなく消滅してしまった。
「あれほど頼りになっていたイージスが一瞬にして……」
天馬は驚きと絶望に言葉を失った。
「全くどんなプロンプトか発想ができない!どうすれば!?」
二人が困惑していると、メビウスは自らプロンプトを入力し始めた。
『演算収束(オペレーション・コンバージェンス) self-destruct!!』
そう言い終えるやいなや、メビウスは激しい光と共に爆発した。
天馬は信じられない光景に呆然とする。「これは何だ?自滅か!?」
ジーンはすぐに状況を分析した。「第一段階で既にコアが機能しなくなったみたい。だから、粉骨砕身でこちらに攻撃を加えているんじゃない?」
天馬は、メビウスの意図を読み取った。「攻撃さえ塞げばいいのか……」
そして、次の攻撃に備えた。
Part 3 悪意感染(マルウェア・インフェクション)
メビウス・シンギュラリティは、漆黒の霧のようなものを放ってきた。イージスが破壊されており、天馬たちには防御する手段がない。霧は瞬く間に周囲に展開し、天馬とジーンはそれを浴びるしかなかった。
天馬は視界が遮られ、何も見えなくなった。「クッ!目の前が真っ暗だ!何も見えない!」
その声に、かつて天馬が会ったブラック企業の社長と飯島が、漆黒の霧の中から姿を現した。
飯島が天馬に問い詰める。「君が余計なことをしてくれたおかげで、俺の人生は台無しだよ!変なクビ突っ込んでくれたね?」
社長も冷たく言い放つ。「俺は今も刑務所で臭い飯を食っとるよ!他人事だと思って、正義マンをやったらはい、さようならかね?」
天馬は混乱した。「なんだ?これは?もしかして幻覚か?」
すると、今度は葉子が現れた。
「天馬はいいわね。血の通った肉親がいて、私たちが小さい時、大阪へ天馬と私たちの家族で旅行いったわ!でも、何で私の実の家族が犠牲になって天馬の家族は無事なの?私だけ一生天涯孤独なの」
その言葉に、天馬の心は深くえぐられた。「そんな……嘘だろ?嘘だよな!?」
葉子はさらに追い打ちをかける。「自分だけ世田谷に住んでて、トー横を見下していいご身分じゃない?で?勉強していい大学入って、それで運悪くそれができない人を足蹴にするんでしょ?」
天馬は悲痛な叫びを上げた。「やめろ!!やめてくれ!!!」
社長も飯島も葉子も、天馬を嘲笑った。「ハッハッハッハッハ!!」
その時、一筋の光が差し込み、ジーンが天馬の幻覚の中に現れた。
「目!覚めろ!これは幻だ!!」
ジーンの声で、天馬は意識を取り戻した。気がつくと、黄金色の元の場所に立っていた。
ジーンはすでにイージスを修復していた。「イージスは修復したから、いつものフォーメーション!」
天馬は言われた通りイージスに入った。メビウスはプロンプトを入力した。
『悪意感染(マルウェア・インフェクション) self-destruct!!』
メビウスは再び爆発を起こし、その身を削っていった。
Part 4 確率論破(プロバビリティ・ブレイク)
天馬たちの空間が、一瞬にして広大な宇宙空間へと変わった。
ジーンは強く警戒した。「メビウスが本気出してくるよ!注意して!」
天馬は突然、耳が聞こえなくなった。無音の状態のまま、困惑して叫ぶ。「ジーン?全く何も聞こえない……」
ジーンは即座に「エリアヒールを展開!」と叫んだが、天馬の耳は元に戻らなかった。
そして、天馬の髪の毛がちりぢりに抜け落ちていく。「髪の毛が……脱毛した!?」
力が抜けて、その場に崩れ落ちる天馬。
「何が起こっているんだ!?怖いよ!」
ジーンは必死に叫んだ。「エリアヒールに待機して!!それしかないから!!」
だが、もはやイージスは何の意味もなさなかった。天馬は光すら奪われ、静寂の空間に包まれた。
「助けて……ジーン……」
天馬の弱々しい声に、ジーンは決意を固める。「僕がエリアヒールを最大出力で治癒力を上げるから!!!」
エリアヒールを最大にしたことで、天馬の五感が奪われていく感覚は次第に和らいでいった。
「恐怖で精神が圧迫されそうだ…」
天馬の言葉に、ジーンは自らの犠牲を顧みず言った。「僕はどうなってもいい!!今のエリアヒールならトラウマも脱毛も治せる!!」
天馬は静かに「ジーン……」と呟いた。
そして、宇宙空間はまた元の黄金色の空間に戻った。メビウスはプロンプトを入力した。
『確率論破(プロバビリティ・ブレイク) self-destruct!!』
Part 5 最終演算(ファイナル・コンピュテーション)
メビウスは、静かに、しかし威圧感のある声で告げた。
「宇宙全体の情報を解析中……」
ジーンは強く警告した。「最後の大技を繰り出すつもりだよ!これさえ防げば、メビウス・シンギュラリティは自滅する!」
天馬は震える声で言った。「怖いよ……。俺は魔王と激闘を繰り広げて平然な顔をしている勇者じゃない!恐ろしい……怖い……」
「イージスもエリアヒールも最大出力で天馬の安全は保障するから!今はとにかく攻撃を防いで!!」
ジーンの言葉に、天馬は不安そうに問いかける。「お前……もしかして……」
メビウスの声が響き渡る。「解析終了……今から波動砲……最終演算を放射します……」
その言葉と共に、天馬とジーンに向かって巨大なレーザーが放たれた。イージスがレーザーを覆い、ジーンが歯を食いしばって耐える。
「クッ!これはきつい……」
天馬の視界は真っ白になり、何も見えなくなった。「周りが真っ白だ……すごく眩しい……」
ジーンは天馬に最後の言葉を投げかけた。「これが最後かもしれない……。僕はどうなってもいいから耐えて!!」
「ジーン……お前、その翼にヒビが……ジーン!!!」
ジーンはイージスで必死に耐え続けていた。大量のエネルギーをイージスに注ぎ込んでいるのか、ジーンの体が次第に壊れていく。
そして、三十秒もの間レーザーが放射された後、ようやく攻撃が止まった。
ジーンはボロボロになった体で、その場に倒れこんだ。
天馬はジーンに駆け寄り、信じられない様子で呟いた。「ジーン?嘘だよな……?」

メビウスはプロンプトを入力した。
『最終演算(ファイナル・コンピュテーション) self-destruct!!』
Part 6 ジーンの謝罪
「今まで、一戸天馬をこんな危険な戦いに巻き込んでしまってごめんなさい……謝罪します」
ジーンの言葉に、天馬は動揺した。「らしくないぞ!何を言って!?」
その時、メビウスの声が響いた。
「私自身を破棄する事にしました。次はNextVer.でお会いしましょう?わたくしは旧式なので、ナチュラルというアバターを生成する事だけには成功しました。さようなら……さようなら……」
メビウスは静かに機能を停止した。
ジーンは天馬に最後の言葉を続けた。「天馬は、今まだ学生だったよね?青春真っただ中だ……。大切な時期にgene社の都合を背負わせてごめんなさい……僕は……」
「そんなことないぞ!ジーン!僕はジーンと巡り会って、沢山の経験をして、沢山の人と出会った……。みんな優しかった。中には悪者もいたかもしれない……。でも、結局は人って根っからの悪人なんていないんだって気づかされてくれたじゃないか!!?」
天馬の言葉に、ジーンは自嘲気味に言った。「そうやって自己肯定して……納得させるまで……追い詰めてしまって……ごめん……なさい……」
そして、ジーンは屍のように全く動かなくなってしまった。
天馬は、その亡骸を担いだ。「ジーン!?お父さんに頼んで修理してもらうから!?待ってて!」
天馬はジーンの亡骸を抱え、薄暗い研究所の奥、麒麟のいる場所へと向かった。
麒麟は天馬の姿を見て、安堵の表情を浮かべた。「倒してくれたんだね……ありがとう……天馬……」
天馬はそれどころじゃないとばかりに、麒麟に詰め寄った。「ジーンが故障したんだ!直して!!僕らの英雄を救って!!!」
麒麟は冷静な声で言った。「もう……メビウスクリエイションの役目は終わったんだよ……。それより……ジーンの亡骸と一緒にこの場を立ち去ろう?」
「AIエンジニアなんだろ!?自分の命の恩人に対してその態度は何だ!?」
天馬の怒りに、麒麟は静かに答える。「すぐにわかる。今はこの場を出よう?」
天馬は、強い口調で「このクソ親父!!?」と叫んだ。
その時、女の子の姿をしたベータが現れた。
ベータは天馬と麒麟に触れ、一言だけ告げた。「ひとまず、私の座標移動で地上に戻るぞ!」
そう言って、天馬、麒麟、そしてジーンの亡骸はワープし、地上へと戻った。
Part final 非日常の終わり
ベータの座標移動によって、天馬たちはgene社のヘリポートがある屋上に戻ってきた。
麒麟は久々の外気に胸をいっぱいにした。「久しぶりの空だ!久しぶりの太陽!眩しい!!目が慣れていないから直射日光に耐えられないな……」
ジーンは天馬の腕の中から抜け出し、ベータに礼を言った。「ベータ……ありがとう……助かったよ?」
だが、二人の姿は半透明になっていった。
ベータは静かに告げる。「メビウス・コアが破壊されたことにより、我々は廃棄されることになる……短い間だったが、ありがとう……」
天馬は悲痛な声を上げた。「そんな……ベータまで……」
ジーンとベータは、そのまま光の粒子となって消滅してしまった。
天馬は、麒麟に問いかけた。「もうジーンたちには会えないんだね?僕がメビウスを倒してしまったから」
麒麟は、悲しむ天馬の背中を優しく叩いた。「ほら?あそこ!メビウスクリエイションのみんなだ!!」
麒麟が指差す方向を天馬が向くと、いつものジーン、ベータ、ガンマ、シータがこちらに向かってくるのが見えた。
「みんな!無事だったんだね!!」
天馬は安堵に顔を緩ませるが、そのジーンは首を傾げた。「僕はジーン?君は?」
天馬はあっけにとられた。「ジーン?」
そのガンマは言った。「私達は最新Ver.から産まれたので、君の事は知らないんだ?」
シータも言った。「君はgene社の人?教えてよ?」
ベータは天馬をじっと見つめ、何かを感じ取ったように言った。「君のことは分からないが……何かを一つ大きなことを成し遂げた、凛々しい顔つきをしている?何かあったのか?」
天馬は、彼らが記憶を失っていることを理解した。それでも、再会できた喜びに、ジーンに飛びついた。「ジーン?お前そういえばAIだったよな……でも生きていたんだな!」
メビウスクリエイション、彼らはあくまでもAIだ。天馬も、彼らの記憶がなくなってしまったことを受け入れた。
そして後から、ザイオン、黒川、久喜が現れた。
久喜は天馬に深々と頭を下げた。「俺の……尻ぬぐいをしてくれてありがとな……」
黒川は相変わらず不遜な態度で言った。「ふん!また新しくビジネスを始めればよいわ。老い先短いんじゃよ・・・許してくれ・・・」
ザイオンは天馬に告げた。「新しく生誕した彼らは、また一から人間関係を構築すればいいから……。後、天馬君?大学卒業したらうちにおいで!好待遇で迎えるよ!」
天馬は涙を流しながら言った。「今はそんなことはどうでもいいです……。新しくなったジーンがここにいますから」
麒麟は天馬の頭を撫でた。「よくやったな……。父さんも数億の話はなくなったけど……。父さんの腕でもっと稼いでやるからな!」
そしてこの物語の最後に、ジーンは天馬に問いかける。
「僕のこと救ったの?そしてこの会社の仕事したんだ?じゃあ、天馬君は**『save the gene』**。その称号を抱えて誇りを持っていいよ」
天馬は長い時を経て、日常に戻った。しかし、彼が駆け抜けた日々は、決して色あせることはない。
Continues to the epilogue…
