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【連載小説】save the gene | 第27話 進路相談

―――天馬の進路相談の話です。内容は進学とメビウスクリエイションです―――


Part 1 ジーンとベタ子 二人は兄妹

真夏の7月末、うだるような暑さの中、一戸天馬桜木葉子はそれぞれの部屋で聖修院から与えられた夏休みの課題に取り組んでいた。葉子が時折分からない箇所を天馬に聞きに来ることもあったが、二人はどうにか課題をこなしているようだった。

天馬はふと、自身の進捗状況に満足げな笑みを浮かべた。

「学験会の講習に行ったからか、簡単に感じるな。さっさと今日の分をこなして、大規模FPSのオンライン対戦を葉子と國男と康之で遊ぼうかな?」

そう心の中でつぶやきながら、天馬は一層集中して勉強に励んだ。しかし、その静寂を破るかのように、1階から聞き覚えのある声が響いてきた。

「久しぶり!天馬のお母さん!」

続いて、可愛らしい声が聞こえる。

「またお邪魔します。」

天馬の母、一戸香澄も明るく応じた。

「あら!ジーン!こんにちは!そこのお嬢さんはお友達?」

すると、女性の声がはっきりと聞こえてきた。

「私は以前いらっしゃったベータです。色々ありまして変身したまま来ました。今日は葉子さんも交えて進路相談をするつもりなので、ダイニングをお貸しいただけますでしょうか?」

香澄は嬉しそうに声を弾ませた。

Gene社の社長さんが直々に相談してもらえるなんて光栄だわ!是非よろしくお願いね!」

そのやり取りが終わると、2階に上がる階段からドカドカと、まるで土足で踏み入るかのような音が響いた。ノックもせずに天馬の部屋に図々しく入ってきたのは、可愛らしいぬいぐるみと、その横に立つ15歳くらいのあどけなさを残す女の子だった。

その女の子――ベタ子は、朗らかな声で言った。

「よう!天馬君!今日はメンテナンスが終わったジーンもいるから安心して。」

ジーンもそれに続いて言った。

「ちょい久しぶり!僕がいなくて寂しかった?」

机から振り返った天馬は、そこに黒タイツの大男ではなく、女の子姿のベタ子ジーンがいることに安堵した。

「はぁ、今日も心臓が止まるかと思った……ベタ子も気が利くじゃん、変身してから来てくれるなんて。それにジーン!しばらくぶり!」

ベタ子はくすりと笑いながら言った。

黒タイツの大男が元の姿なんだけどね。」

ジーンが真剣な声で続けた。

「ちょっとお伝えしたいこともあって……総理大臣獅子堂剛との面会は8月上旬に繰り上げで日程がうまく調整できたから、もう早い内にナチュラルγ戦やるから準備しといてね。」

ベタ子とジーン

ベタ子ジーンに声をかけた。

アルファ?葉子さんも声かけてきて。」

そう言われたジーンは、葉子を呼びに行った。

天馬は顔をしかめた。

「もう来月早くナチュラルγとの対決か……すごく緊張してきたな……」

ベタ子は楽しそうに笑った。

「それは一つの手段でしょ?天馬君、今やってる勉強も上部署内定の突破口になるから……気負うと何事もうまくいかないよ?」

ベタ子はさらに笑顔を深めた。天馬は疑問を投げかけた。

「今日の用事はなんだ?ベタ子ジーンが同時にいるって珍しいな?」

ベタ子はにこやかに答えた。

「私とジーンと天馬君と葉子さんで進路相談!やっぱ社会的な知識も考慮してやった方が、明確なビジョンも持ちやすいでしょ?」

天馬は腑に落ちないといった表情で言った。

「なぜGene社CEOが僕みたいな大したことない人間に沢山関わってくるんだ?僕は大した人間じゃないんだろ?」

ベタ子は、まるで拗ねた子供をあやすかのように言った。

「やだなぁ……一応ディザスター討伐済っていう功績だけは残してあるから、ちょっと過小評価されたからってめげないめげない!

ベータはさらに笑顔で笑った。


Part 2 進路相談

桜木葉子も加わり、ダイニングテーブルには天馬と葉子、そしてベタ子ジーンの四人が向かい合って座った。

まず口火を切ったのはジーンだった。

「まず、最初の間口の学力の話なんだけど?ちょっとあらかじめ用意してって伝えておいた全国模試の結果見せてくれる?」

天馬と葉子は、言われるがままに全国模試の結果をベタ子ジーンに見せた。ベタ子天馬の成績票に目を落とし、ふむ、と頷いた。

「ふーん、天馬君はK大がB判定でT大がC判定なんだ……現役で確実にT大いけるとは言い難い結果ね……」

ジーンベタ子に同意するように言った。

「おそらく、だから天馬国立に行きたいという曖昧な言い方をしてるんだよ。自分のことを過大評価している割には、自分に遠慮してるんだ。

天馬自然と敬語になり、小さく頷いた。

「はい、そうです……一番てっぺんはなんとなく怪しいと感じていたんで、『国立』に行きたいという表現を使っていました。

ベタ子は次に葉子の模試の結果を見た。

葉子さんの結果天馬君より下K大がC判定……T大がD判定ね……葉子さんって別にそこまでトップクラスを目指してるわけではない感じ?」

葉子は少し不満げに言った。

「私……別にT大行きたいだなんて一言も言った覚えはないんですけど……」

ジーンは二人の様子をじっと見つめ、諭すように言った。

そこそこでいいという感覚でいると、天馬と葉子の世代じゃこの先通用しない可能性も示唆されているんだ!だって君達はAIとタメ張るんだよ?

天馬は思わず反論した。

「僕達はそもそもAIエンジニアを目指しているんだ?Gene社も入りたいと思うけど、別に頂点の大学群を特別目指してるわけじゃないのに、なぜT大のことにこだわるんだ?」

天馬の言葉に、ベタ子は優しく諭すような口調で答えた。

「一昔前……と言っても平成をまたいだその前の昭和であれば、まだ技術の発展の余地やマンパワーもたくさんあったから、『でもいい』でなんとかいける時代だったかもしれない。でも君らの時代は『でもいい』で通用するほど生易しくないんだよ。」

葉子は戸惑いを隠せない様子で反論した。

「私は少なくともベタ子に認められるほどすごい人材じゃありません……なんでそこまで努力を要求してくるんですか?そこそこのAIエンジニアでいいじゃないですか?」

ジーンは葉子の言葉を受けて、天馬と葉子に問いかけた。

「葉子の考えていることは、大体みんな同じ考え方してる……AIがこれから発展するからじゃあAIエンジニアだけは炙れないと短絡的に考えている……つまり……どういうことかわかるね?」

天馬はその言葉に込められた真意に気づいた。

理系の競争力が必然的に増加すると……T大行くつもりで努力を続けないと僕らは炙れてしまう、と言いたいのですね?」

ベタ子天馬の言葉に頷いた。

「そういう懸念材料が強い……別に君達が本当にそこそこの給料とUBIユニバーサルベーシックインカム)『でもいい』ならそれでいいけど、それだと少なくとも将来の持ち家と結婚は諦めた方がいいね。

天馬と葉子はその言葉に衝撃を受けた。まるで社会からこれでもかとばかりに重荷を背負わされている気分だった。

そしてジーンが畳みかけるように言った。

「まず葉子は、なるべくいい工学部に行けるようにちゃんと勉強すること……天馬は出来ればT大……そしてメビウスクリエイション討伐にも心血を注ぐこと?いい?」

天馬ベータと知り合ってから、ジーンの性格が厳しくなっているように感じた。だが、流石はCEOを務めるAIと、その兄弟であるジーンだ。世の中の仕組みを鑑みて、天馬と葉子に進路相談をしているのだと天馬は改めて認識した。

進路相談

Part 3 メビウスクリエイション対策

ベタ子は優雅に手を差し伸べ、「葉子さんはもう席を外していいわよ」と告げた。葉子は深々と頭を下げ、「ありがとうございました」と礼を述べると、自分の部屋へと戻っていった。

葉子がいなくなり、ジーンが口を開いた。「天馬は8月上旬から僕とメビウスクリエイションの一人、ナチュラルγに会いに行く。そのために総理大臣獅子堂剛という大物と面会するんだけど、いい?」

天馬は力強く頷いた。「おう!そのメビウスクリエイション、一体でも討伐できれば、後はドミノ式に倒していけるだろ?そう思いたい……」

ベタ子は小さくため息をついて言った。「アルファもそろそろ本当のこと言ったらどうなの?一応お互いwin-winのビジネスみたいにはなっているけれどね」

ジーンはむっとしたように応じた。「ベータうるさいぞ!Gene社のコネ入社と引き換えなんだから、真っ当なビジネスだろ?」

「そんなにアルファは自分のことにコンプレックスを持ってるの?別にAIなんて適材適所なんだから、アルファはマスコットキャラクターとして機能していればそれでいいと思うけれどね」ベタ子は涼しい顔で言い放った。

「うるさいな!僕は何も任されてはいないんだから!」ジーンは反論した。

天馬は兄弟喧嘩に割り込むように言った。「何喧嘩してるんだよ!?俺にやらせてる真の目的とかあるのか?これまで幾多のC級ナチュラルやディザスターを討伐してきて、ようやくナチュラルクリエイションを討伐したら年収1400万円まで到達するって段階まできたんだ……」

天馬が話を続けようとすると、ベタ子が遮った。「そこまで私達兄弟を相手するのに自信があるのであれば、せめて浅草に行ったときの予習はこなしてきたの?天馬君のやろうとしていることはとどのつまり、どういうことかしらね?」

ジーンが慌てて止めようとした。「おい!変な事言うんじゃないだろうな!?やめろ!」

しかしベタ子は構わず続けた。「例えば、世界を救うために魔王を倒そうとしているんでしょう?ゲームではレベルや装備を揃えれば魔王を倒せるけれど、天馬君は何かレベルが上がったの?プロンプトの訓練をしただけじゃないかしら?

ベタ子の言葉がゲームに例えられていたため、天馬は少し理解しやすかったようだった。そしてこう答えた。「勇者だって最初は魔王の力に圧倒されるじゃないか!でも仲間との出会いや成長を遂げて最終的に魔王を倒すんだろ?俺だってできないことはない!」

そう豪語する天馬に、ベタ子は少し納得したようだった。「そうね。私達AIだから『無限の可能性』って聞くと否定的になりがちですけれどね。もしかしたらその『無限の可能性』っていうのがあるのかもしれないわね……やってごらんなさい……そしてもしガンマを倒せたら私のプロンプトもヒントを出してあげるから」

そしてジーンはこう言った。「最初は下見という形でガンマに会いに行くんだよ!初手で倒せるとは思ってないから」

ベタ子はジーンに冷たく言い放った。「そういう考え方をしている時点で倒せる確証は持っていないんじゃないの?しかも天馬君みたいな子供にやらせて

「ぐっ!」ジーンは言葉に詰まった。

天馬はジーンを擁護するように言った。「僕は『才能や遺伝子』だけですべてが決まるとは思えない。やってみないとわからないだろ?もしかしたら人の努力がAIを超えることもあるかもしれない」

ベタ子は呆れ返ったように言った。「わかったわよ!挑戦してみなさい!少なくとも結果が出るまで諦めないことね」

この天馬とベタ子とジーンの面談は、ヒートアップして討論へと発展していった。


Part 4 天馬の信念

天馬の話が終わり、ジーンは余談として葉子の部屋へと相談に向かった。ベタ子は、自分が天馬の担当であるとでも言うかのように、天馬と二人で彼の部屋へ移動した。

部屋に入ると、ベタ子が口を開いた。「へぇ、天馬君って、言う時は言うのね?そういう人間くさいところ、嫌いじゃないわ」

天馬は少しばかり興奮した様子で応じた。「AIがどこまで発展するのか僕には分からないけど、ベタ子は決めつけが多すぎるよ。やってみないと分からないじゃないか?僕だって今までの積み重ねを無駄みたいにされたくないんだ。もしかしたらT大だって受かるかもしれないじゃないか?」

ベタ子は、天馬の言葉に少し考え込んだようだった。やがて、納得したように頷きながら言った。「私、あくまでも機械だから、データや学習に基づいたことしか言わないのよ。でも、天馬君の言う通り、人の可能性っていうものがあるのかもしれないわね」

そう言うと、ベタ子は楽しそうに大声で笑った。それは、データと論理に支配されたAIからは想像できないほど、人間らしい笑い声だった。その笑いは、天馬の心に確かに響いた。

この奇妙な会話は、天馬とベータ、そしてジーンとの間に、これまでとは違う絆を確かに結びつけたようだった。彼らの未来に何が待ち受けているのか、今はまだ誰も知らない。しかし、それぞれの胸には、新たな可能性への希望が確かに芽生えていた。

少し天馬を認めたベタ子


To be continued!!


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