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【clum! '95 #22】ビーチバレーと観察者

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「やったー! 海だー!! 自由だー!!」

佐野さの立夏りっか先輩がパーカーを脱ぎ捨て、Tシャツ短パン姿で砂浜へ飛び出した。

その背後から、日焼け止めを塗りたくられた早坂はやさか一頼かずよりがよろよろとついていく。

「さ、佐野先輩、待ってください……! 砂が熱いです……!」

「何言ってんの早坂くん! さあ、ビーチバレーやるわよ! ペア組みましょ!」

そこへ、オレ、野瀬のせ隆文たかふみはふらりと現れた。

「へえ。面白そうっすね。混ぜてくださいよ」

「お、野瀬くん! あんたやる気あるじゃない! じゃあチーム分けね」

「俺、折館おりたち先輩と組んでいいっすか? 強そうなんで」

「……は? 俺は寝てたいんだが」

パラソルの下でタオルを被って寝ようとしていた折館おりたちじん先輩を、オレは腕を引いて強制連行した。

• チームカップル(?): 立夏 & 一頼
• チーム先輩後輩: 迅 & 野瀬

「行くわよ! サーブ!!」

佐野先輩の強烈なサーブが唸りを上げて飛んでくる。

折館先輩はあくびを噛み殺しながら、それを片手で軽くレシーブした。ボールは綺麗な放物線を描いてオレの方へ。

「ナイスっす先輩。……そーれ」

オレはトスを上げるフリをして、絶妙なコースにフェイントで落とした。

狙うは、運動神経の鈍い早坂の足元だ。

「わわっ!? と、届かない!」

早坂が砂に足を取られてヘッドスライディングする。ボールは無情にも砂に落ちた。

「あはは、早坂、動きがハムスターみたい」

「野瀬くん! 手加減してよ!」

「勝負に手加減はないっしょ。ほら、彼女(仮)の前でいいとこ見せないと」

オレのからかいに、早坂が顔を真っ赤にする。
すると、佐野先輩が仁王立ちで叫んだ。

「ちょっと野瀬くん! あたしの早坂くんをいじめないで! ……早坂くん、次はあたしが拾うから、ネット際で跳んで!」

「は、はいっ!」

「……へえ。愛されてんねぇ」

オレは面白がりつつ、隣の折館先輩を見上げた。

「先輩、俺らも本気出します?」

「……めんどくさ。お前が走れ」

「うわ、理不尽」

みんなから少し離れた波打ち際。

「……ふむ。水温26度、塩分濃度3.4%。プランクトンの量は許容範囲内か」

怪しい格好をした人が、試験管を持って海水を採取していた。

全身を黒いラッシュガードで覆い、サングラスに帽子、首にはタオル。岡本おかもとたちき、わたしのお兄ちゃんだ。

完全紫外線防護(UVカット)スタイルだと言ってはいるけど……。

「樹、怪しすぎるよ……」

その近くで、わたしは苦笑いしながら貝殻を拾っていた。

わたしは麦わら帽子に白のワンピース姿で、足だけ海に浸けて涼んでいた。

「何を言うんだ玲。紫外線は皮膚の敵だ。玲もあまり肌を露出してはいけないよ」

「はいはい。……あ、綺麗な桜貝」

わたしがピンク色の貝殻を拾い上げた時、ビーチバレーを終えた折館くんが、汗を拭きながら歩いてきた。野瀬くんにこき使われて、少し疲れているみたい。

「……おう、岡本(玲)」

「あ、折館くん。お疲れ様」

わたしは、自分の水筒を差し出した。

「飲む? まだ口つけてないから」

「……サンキュ」

折館くんがそれを受け取り、ゴクゴクと喉を鳴らして飲む。

その喉仏の動きを、わたしは少しドキドキしながら見つめていた。

「……折館いぃ!!」

そこへ、試験管を持った樹が砂を巻き上げてダッシュしてきた。

「何をしている! 玲の水分補給用ボトルの間接キス(未遂)だと!? 返せ! それは僕が成分調整した特製ドリンクだ!」

「うるさいな樹。減るもんじゃねえだろ」

「減る! 玲への愛とミネラルが減る!」

樹が折館くんに掴みかかろうとしたけど、折館くんは片手で樹の頭を押さえて封じている。

腕の長さの差で樹の手が届かない。

「くそっ、このリーチ差は……! 成長期のカルシウム摂取量の差か!?」

「ふふ、樹、落ち着いて。そして、いい加減にして」

そんな3人の様子を、遠くからオレと早坂と一緒に眺めていた。

「……なあ早坂」

オレは、ブルーハワイのかき氷をスプーンで突きながら訊いた。

「なに、野瀬くん」

「あの折館先輩ってさ、怖えと思ってたけど……」

オレの視線の先には、樹先輩とギャーギャー言い合いながらも、玲先輩が転びそうになるとスッと手を差し伸べて支えている折館先輩の姿があった。

そして、その時の先輩の顔は、普段の「殺し屋」のような目つきではなく、どこか穏やかだ。

「……意外と、優しい顔すんだな」

「え?」

「いや、なんでもない。……へへ、面白くなってきた」

オレは楽しくなってきて、かき氷を口に放り込んだ。

この合宿、バスケ以外にもいろいろと収穫がありそうだ。

「おーい早坂くーん! こっち来て。泳ぐわよ!」

波打ち際から、全身びしょ濡れの佐野先輩が手招きしている。

「あ、はい! 今行きます!」

早坂が慌てて走っていく。

「……ま、俺は高みの見物といきますか」

オレは砂浜に寝転がり、青い空を見上げた。

この合宿。

バスケの練習より、そっちの方が面白い写真が撮れそうだ。

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