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【clum! '96 #16】樹の公表

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1996年、7月の湿った風が吹き抜ける昼休み。

碧翔学園の全生徒が、弁当を広げたり廊下で騒いだりしているその喧騒を、スピーカーから流れる「ザーッ」というノイズが切り裂いた。

「……あー、テス、テス。科学部の岡本おかもとたちきだ。全校生徒に告ぐ。今すぐその貧相な咀嚼の手を止め、僕の言葉をニューロンに刻み込め」

いつも穏やかな稲城の声ではなく、傲慢で冷徹な、しかしどこか切迫した樹の声が教室中に響き渡った。

「なんだ、なんだ!?」

「岡本先輩、何やってんの?」

騒然とする教室の中で、立夏りっかはガッツポーズを作った。隣では、れいが顔を真っ赤にして机に突っ伏している。

「最近、僕の周囲にいる特定の女子生徒――岡本おかもとれいに対し、非論理的な噂を流布している個体が存在するようだ。二股、乗り換え、魔性の女……フン、それらの推論はすべて、前提条件を欠いた欠陥品だ」

樹は、放送室の調整卓の前で、マイクを握りしめていた。

横では稲城いなぎ芳彦よしひこが「……樹先輩、もうちょっと柔らかい表現で……」と小声でフォローを入れているが、樹は止まらない。

「いいか、愚民ども。僕と岡本玲がなぜ常に一緒にいたか、なぜ僕が彼女の周辺から害虫を排除してきたか。その答えは、極めて単純かつ生物学的な事実に基づいている。

……僕と彼女は、15年前、同じ母親の胎内で同時期に細胞分裂を繰り返した

一卵性ではないが、二卵性の双子だ」

全校生徒が息を飲んだ。

「すなわち、僕の彼女への執着は、高潔なる兄妹愛、あるいは優秀な僕が劣等な妹を監督するという義務感に由来するものであり、そこに恋愛感情の入り込む余地は――」

そこで一瞬、樹の言葉が詰まった。

昨年の11月に玲に想いを知られてしまった「事実」が、彼の喉を焼いたのだ。

「……とにかく! 彼女の隣に折館おりたちじんがいるのは、僕という『兄』が、その個体の有用性を認めたからに他ならない。今後、玲に謂れのない中傷を行う者がいれば、僕の全知能を賭して、その者の学園生活を科学的に瓦滅させてやる。以上だ」

ブツッ、という音と共に放送が切れ、学園内には嵐の後のような静寂が訪れました。

数秒後。

「……え、双子!?」

「マジかよ、似てないけど……言われてみれば、鼻の形とか同じじゃん!」

「なんだよ、兄貴だったのかよ……怖ぇよあの兄貴……」

嘲笑や蔑みの色は消え、代わりに「最強の兄を持った美少女」という、新たな、しかし以前よりはずっと健全な空気が学園を包んだ。

教室では、玲が顔を上げた時、その瞳から涙がこぼれていた。

「……玲ちゃん。ごめん、強引に言わせちゃって」

立夏がそっと肩を抱くと、玲は首を振った。

「ううん……ありがとう、立夏ちゃん。……お兄ちゃん、あんなに恥ずかしい言い方しなくてもいいのにね」

泣き笑いの玲の背中を、窓から差し込む夏の光が照らしていた。


その日の放課後。

迅は、科学部室から出てきた樹の頭を、黙って一度だけ乱暴に撫でた。

「……やめろ。髪が乱れるだろう、迅。……これで、少しはマシになるか?」

「ああ。最高に格好悪い、最高のアピールだったぞ、お兄様」


一方、一頼かずよりは立夏の隣で、校門を出ながら呟いた。

「樹先輩、すごかったですね。……なんか、僕もあんな風に、いつか立夏を堂々と守れるようになりたいです」

「……バカ。一頼は、今のままで十分かっこいいよ」

立夏は少し顔を赤くして、先を歩き出した。


【今回のおまけ】

野瀬「いつものGeminiさんではなく、ChatGPTさんに作ってもらいましたー! って、こんだけ距離が近ければ、そりゃあ二股疑惑もかけられてしまうと僕は思いまーす」

稲城「仲良いもんなぁ」

野瀬「ぶはは、両手に花(?)じゃん。折館先輩、身動きできなさそう」

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