【海外駐在】帰国子女だから英語ペラペラでいいね!ーそんなわけないじゃん
「帰国子女は英語がペラペラでいいな」——そんなことを思っていた時期が、私にもありました。
大学でも、新卒で入社した会社でも、周りには何人もの帰国子女がいました。
受験英語を駆使してヒーヒー言いながら講義やレポートをこなし、電話やメール対応に四苦八苦する私を尻目に、彼らは軽やかに、時にはジョークさえ交えながら外国人上司とやりとりをする。
「帰国子女はいいな、羨ましい!」
彼らの高い英語力を、何度羨んだか分かりません。
私は日本生まれの日本育ち。多少英語に力を入れた学校に通わせてもらったものの、夫と結婚するまで海外生活の経験はありませんでした。だからこそ、帰国子女に対して大きな幻想と勘違いを抱いていたのです。
「子どものうちに海外(特に英語圏)に住めば、自然と英語ができるようになるものだ」と。
しかし、海外で子育てを経験している今なら、断言できます。
「そんなわけないじゃん!!!」
我が家の子どもたちも、本人の意思とは関係なく「帰国子女」という立場になってしまいました。そして直面したのは、「無理じゃない?」と絶望したくなるような現実でした。親子で何度も心が折れ、正直に言えば、今も時々折れそうになっています。
特に、英語ゼロで渡航した下の子のサポートは壮絶でした。
現地校にESL(英語を母国語としない生徒向けのクラス)がなかったため、家でフォニックスやsight wordsを教えるところから始まり、リーディングの伴走、文法やライティングの添削、週3回のオンラインレッスンの見守り……。さらに学校の先生と面談やメールを重ね、必死にサポートをお願いしました。
最初の半年は本当に辛く、親子で何度も泣きました。のほほんとした性格だった下の子が、適応ストレスで円形脱毛症になったほどです。幸い半年ほどで学校生活は軌道に乗りましたが、今もサポートは欠かせません。
苦労は英語だけではありません。
駐在員家庭である以上、いつか必ず日本に戻ります。そのため、日本語力の維持も至上命題です。
漢字ドリル、読解、作文、音読、算数、学生新聞の購読、オンライン塾のフォロー。我が家は補習校を辞めたため、国語・算数の指導はすべて私が引き受けています。
映像授業やタブレット学習だけでは不十分で、ノートの取り方から数学の式の書き方、漢字の書き順まで、つきっきりで指導する毎日。オンライン塾ではタイムリーで質問ができないため、宿題で分からないところは結局私が教えることになります。結果として、私には小学1年から中学2年までの数学・国語を教えるスキルが身についてしまいました。(本帰国したら、塾講師になろうかと真剣に考え始めるほど 笑)
さらに、上の子は思春期の反抗期真っ只中。数式の書き方や字の汚さを注意した瞬間、親子喧嘩が勃発します。
しかも、滞在先の州の公立高校には入試がないため、周囲の友だちは誰も勉強していません。「どうして自分だけこんなにやらなきゃいけないんだ」という上の子のストレスは相当なものです。
あまりの負担にオンライン塾へ相談しても、「海外での受験成功は親御さんの頑張りにかかっています!」と励まされるばかり。(もう疲れたから相談してるのになー・・・。)日本なら対面式の塾や学校に任せられることが、ここではすべて親の肩にのしかかります。正直、塾と面倒見の良い学校をフル活用できる日本の同級生家庭が羨ましい・・・!
英語と日本語の両立。
自分が「帰国子女の親」になるまで、これほど過酷な道だとは知りませんでした。
「帰国子女はチートだ」「人生イージーモードで羨ましい」
そんな風に思っていた過去の自分を、全力で殴りたい気分です。
以前、帰国生を多く受け入れる学校の校長先生が、こんな話をされていたそうです。
「帰国子女はどこかで必ず地獄を見ている。それは海外にいる時か、帰国後か。あるいは、その両方か」
下の子は渡航直後、間違いなく地獄を見ました。今でも当時を振り返り、「最初の2ヶ月は本当に辛かった」とこぼします。
そして上の子は今、地獄の真っ只中にいます。渡航後1~2年の小学5年生・6年生の時に「まずは現地に慣れることを優先しよう」と日本の勉強を後回しにしたツケが、中学生になって回ってきたのです。高校受験を日本でする予定なので、この地獄はまだしばらく続くでしょう。
数年後、本帰国した彼らを待っているのは、天国なのか、それとも新たな地獄なのか。
今なら分かります。私が出会ってきた優秀な帰国子女たちは、きっと親子でいくつもの地獄を乗り越えてきたのだと。特に日本語と英語を完璧に使いこなす彼らの努力は、並大抵のものではなかったはずです。
海外でも日本でも必死に抗い、頑張り続けてきた子どもたち。そして、それを支えてきた保護者の方々には、尊敬の念しかありません。
「帰国子女だから英語ペラペラでいいよね」
次に一時帰国した際、友人にそう言われたら、私はこう返そうと思います。
「そんなわけないじゃん」
