⑱忘れられない双極性障害の患者さんの話|猫好き精神科ナースcocomi
今回も訪問ありがとうございます😊
猫大好き精神科ナースcocomiです。
精神科病棟で働いていると、何年経っても心に残る患者さんがいます。今回は、そのお一人である50代の男性、野澤さん(仮名)のことを書きます。
野澤さんは、地元の企業で役職を任され、真面目にコツコツ働く会社員でした。
面倒見がよく、元気で優しい性格。
誰からも頼りにされる人柄で、奥さまからも「仕事に誇りを持っていた」とよく伺っていました。
しかし、高卒で入社した彼の周りに、次第に大学卒の後輩が増えていく中で、少しずつ肩身の狭さを感じるようになっていったそうです。
若い頃はきっと、出張に行ったり、他の会社の方と交渉したりと多忙な日々の中で頑張って働き続けていたのだと想像できます。
そんな野澤さんが50代で発症したのが双極性障害(躁うつ病)でした。
躁状態の時は、普段以上におしゃべりで明るく、テンションが上がりっぱなしになります。

けれど一転、うつ状態になると、まるで別人のように布団をかぶって食事にも出てこられず、声をかけても反応がないのです。

その幅の大きさに究極ってこういうことなんだと精神科看護に戸惑いの連続でした。
それでも野澤さんは“いい人”でした。
調子のいいときには冗談を交えながら色々な話をしてくれて、私もたくさん楽しませてもらいました。
奥さまもよく面会に来られ、私ともよく話してくださり、看護師として信頼していただいていることを感じていました。
しかし、病状は次第に躁状態が消え、抑うつ状態の期間が長くなり、だんだん起き上がれなくなり身体も衰弱していきました。
そして59歳という年齢で、病棟で生涯を終えられました。
亡くなられた当日、奥さまが私を見るなり駆けつけてくださり「cocomiさん、本当にお世話になりました」と声をかけてくださったとき、胸が締め付けられる思いでした。
受け持ち患者さんではなかった私にも温かい言葉をかけてくださったことが、今も忘れられません。
看護師として、その言葉は有難いものでしたが、同時に「もっと元気にして退院させてあげたかった」という悔しさや無力感もありました。
病気にならなかったら今ごろ、会社で頑張った証の年金を受け取りながら奥さまと穏やかな暮らしをされていたかもしれません。
頑張りすぎてストレスが掛かり、心が疲れてしまった野澤さんのことを思うと、人生ってなんだろう考えさせられます。
この経験は、私に“心の病気”の重さと、患者さん一人ひとりの人生の背景を見つめる大切さを教えてくれました。
精神科で働くということは、診断名や症状だけを見るのではなく、その人がどんな人生を歩んできたのか、どんな価値観や思いを持っているのかを知ることです。
その先にこそ、支援のヒントがあるのだと実感しました。
そして家族の存在や言葉が、どれほど患者さん本人や看護師に力を与えてくれるかも改めて知ることができました。
野澤さんのことは、これからも忘れられません。
あの日感じた複雑な気持ちも、看護師として私の糧になっています。
精神科に限らず、心の病に向き合う方々に、少しでも寄り添える看護師でありたいと思っています☺️
双極性障害(躁うつ病)とは?
双極性障害は、かつて「躁うつ病」と呼ばれていた心の病気で、ハイテンションで活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込み意欲が低下する「うつ状態」が周期的に現れることが特徴です。
躁状態では睡眠が減っても平気だったり、気分が高揚し過ぎて浪費やトラブルにつながることもあります。
一方、うつ状態ではエネルギーが枯渇したように何もできなくなり、食欲や睡眠が乱れ、最悪の場合は命の危険に及ぶこともあります。
発症の原因はひとつではなく、遺伝的要素やストレス、生活リズムの乱れなど複数の要因が関わっていると考えられています。治療には薬物療法と生活リズムの安定が重要で、長期的な視点でのサポートが必要です。
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家族・周囲ができるサポートの例
• 病気について知ること
病気の特性や症状を理解することが、まず第一歩です。正しい知識があるだけで対応が落ち着きます。
• 生活リズムを一緒に整える
睡眠・食事・活動のリズムが整うように、無理のない支援をすることが再発予防につながります。
• 躁・うつのサインに早く気づく
話し方や行動の変化、睡眠や食欲の変化に敏感になり、主治医や看護師と連携して早めに対応することが大切です。
• 無理な励ましを避ける
「頑張って」「気合で乗り切って」などの言葉は逆効果になることがあります。寄り添う姿勢が重要です。
• 家族自身のサポートも確保する
長期にわたる介護や支援は家族の心身に負担をかけます。相談窓口や家族会、カウンセリングなどを活用しましょう。
野澤さんの最後を看取り、ご遺体の部屋に入って私は言いました。
「次に生まれ変わった時は病とは無縁な人生を送れるといいですね」と。
そこに野澤さんの魂がいたならきっとニコッと笑ってうなづいてくれているかなと思いました。
今日もここまで読んでくれてありがとうございました。
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