「一番」を選ぶと壊される世界|それでも心を守るために身につけたこと
私は、「一番」を選べない子どもだった。
欲しいものがあっても、
無意識に二番目や三番目を選ぶ。
やりたいことがあっても、
母が反対しそうなものは最初から諦める。
それは性格ではなく、
環境の中で身につけた
“生き延びるための選択” だった。
母は、なぜか私にだけ
「一番」を許さなかった。
進路も、やりたいことも、
すべて「NO」
一方で、妹や弟にはそれが許されていた。
同じ家庭にいながら、
私だけが「選んではいけない側」にいた。
そんな理不尽の中で、
私はだんだんと学習していく。
「一番を選ぶと、何か悪いことが起きる」
その感覚を決定づけた、
ある出来事がある。
お気に入りのバッグが燃やされた日
小学校4年生のある日、
祖父がバッグを買ってくれた。
一目ぼれして、何気なくねだった
黒いエナメルのトートバッグ。
当時の私にとっては、
ちょっとしたサプライズだった。
それほど裕福ではない家庭だったため、
欲しいものをなんでも買ってもらえる
環境ではありませんでした。
さらに、母親からの
「一番はダメ」の圧もあり
一番欲しいものを手に入れる経験が、
私は著しく少なかったのです。
祖父が気まぐれに買ってくれた
そのバッグを何度も手に取り、
私は喜びを噛み締めていた。
その当時、我が家では
翌日に身に着けるものを
居間のストーブの脇に
準備しておく習慣があった。
翌日遊びに行く予定があったので、
洋服とそのバッグを準備して眠った。
――そして、翌朝。
なぜか、バッグはストーブの上で、
ぐちゃぐちゃに燃えていた。
母は言った。
「あんたがそこに置いたから燃えたのよ」
そんなことはない。
私はストーブの脇のスペースに置いていた。
私はすぐに理解した。
これは事故ではない。
母がやったのだ、と。
信じられなかった。
悲しかったが、涙も出ない。
何も言えなかった。
怒りも、悲しみも、
言葉にできなかった。
むしろこう思った。
「はしゃぎすぎた自分が悪い」
その瞬間、
私の中で何かが決定的に変わった。
「一番を選ぶと、酷い目にあうんだ!」
そうやって、
私は自分を守る術を覚えていった。
感じないことで、自分を守ってきた
最初はつらかったはずなのに、
不思議なことに、
いつの間にか「つらい」
とすら感じなくなっていった。
正確には、感じる余裕がなくなった。
怒鳴る父の顔色を伺いながら、
母の愚痴を聞き続ける日々。
その中で、感情を保つことは難しかった。
だから私は、ある方法で自分を守った。
「感じないようにする」こと。
傷つかないように、
最初から期待しない。
欲しがらない。
喜びすぎない。
そうやって、
自分の心を切り離していった。
周りから見れば、
私は「問題のない良い子」だったと思う。
成績もそこそこ、
反抗もせず、手もかからない。
でも内側では、
少しずつ「自分」が削れていった。
そしてもう一つ、
驚くべきことがある。
あのバッグを焼かれた日のことを、
私は29歳まで忘れていた。
セラピーを受けて、
心が少しずつ緩んだとき、
突然その記憶が戻ってきた。
あまりに衝撃的すぎて、
心が「なかったこと」にしていたようだ。
思い出したときは、
あまりのショックに過呼吸に襲われた。
いわゆる、フラッシュバックというやつだ。
母への恨みと怒りが込み上げてきて、
どうにかなりそうだった。
その時初めて、
「私は母に怒りを感じていいんだ!」
と自分にやっと許可を出せた。
不当な扱いを受けたのだから、
相手に対して怒りを感じることは当然だ。
それが親であろうと何であろうと。
当たり前のことを、
当たり前に感じること。
それは、当時の私にとっては
とてもぜいたくなことだった。
怒りに震える自分を抱きしめながら、
自分を責めるだけでは、
自分を救えないのだと私は悟った。
それでも、生き延びたあなたへ
ここまで読んで、
もしかしたらこう思ったかもしれない。
「そんな環境で、よく普通に育ったね」と。
実際は、必死に普通を演じていた。
自分を押し殺しながら、
なんとかバランスを取っていただけ。
そして、それはあなただって同じかもしれない。
・本当は欲しかったのに、諦めてきたもの
・選びたかったのに、選べなかった人生
・感じることをやめてきた心
それは全部、弱さではなくて、
生き延びるために身につけた力。
ただ、そのままだと、
大人になってからも心をすり減らし続けてしまう。
だからこれからは、少しずつでいい。
「本当はどうしたい?」と、
自分に問いかけるところから始めてほしい。
すぐにできなくてもいい。
かつて選べなかった自分の分まで、
これから少しずつ取り戻していけばいい。
あのとき、何も言えなかったあなたは、悪くない。
ただ、その環境で生きるしかなかっただけ。
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