『ホラーが書けない』13話 霊体などに気づく能力は鍛えれば身につくのか!?【Web小説】
第13話 霊感は防衛機能の一種のように思えてきた
俺――紫桃――の地道な準備が実を結んだ!
ふだんは体験を語るのをしぶるコオロギ――神路祇――だが、機嫌が良くていろいろ話してくれる。
俺が疑問をもった「妖などを探知する能力」に対しても回答しようとしていて、幼いときにコオロギが体験したという話を始めてくれた!
「祖父母の家があるところは田舎でね、むかしは小規模な家畜小屋もあったというから敷地がわりと広い。自分が生まれたころには、すでに家畜小屋はなく、家庭菜園レベルの畑と倉庫に変わっていて広めの庭もあった。そんな屋敷の庭にニワトリが放し飼いされていたんだ。
5羽以上のニワトリがいつもいて、その中の雄の白色レグホンは、野良猫を見つけたら突進して追っ払うくらい気性があらかった。番犬みたいな役割をしてるのはいいけど、かなり凶暴で厄介だったんだ。
ボス的な位置にいたレグホンは猫だけでなく、子どもを見つけると飛びかかって蹴りを入れてくる。小柄なチャボと比べてレグホンはデカくて重さがあるから蹴りは強力で痛かった。だから祖父母の所へ行くと、家に入るまで危険地帯になってて、怪我したくないから必死でニワトリをさがしたよ。
祖父母の家に着いたら、まず門に隠れてニワトリの位置を確認する。門から家までの間にニワトリがいなければダッシュで玄関に逃げこむんだ。訪れるたびにレグホンをさがすことをくり返していたら、いつの間にか姿を見なくても位置がわかるようになっていた。
門の前で目をつぶり、庭の構造を思い浮かべてニワトリの姿を考える。するとニワトリと周囲の風景映像が一枚の写真を見るように頭の中に浮かぶんだ。
『軽トラの横で地面をつついてエサをさがしている』
視えた映像の場所を確認すると、実際にニワトリは軽トラの脇にいてエサさがしをしている。位置を把握できたら距離を測り、家へ駆けていく方法で回避していたよ――」
子どものときの体験を語り終えたコオロギは、俺に視線を移してきた。
「紫桃は妖を探知するのを怖がっているけど心配することはないと思う。
存在を感知する能力は身を守る生存本能の一種で、視覚や聴覚などを使って入手した情報に、これまでの経験をプラスして敵の状況を想像していく。そして最終的に行動の予測を立てているんじゃないかな?
そんなふうに考えると、妖の場合は「敵」認定しなければいい。
感知しようと思わず、存在しないモノとしてスルーすれば探知能力は働かないよ」
ひさしぶりにコオロギのぶっ飛んだ話を聞くと、慣れているはずの俺でも、にわかには信じがたい話だ。胸の内で一人突っこみが始まる。
おいおい、『敵』ってなんだ?
言うなら『他者』とか『相手』だろ?
平和な日本でコオロギはどんな子ども時代をすごしてきたんだ……?
コオロギの異能の根源が見えてきたのはいいが、それ以上に気になったのはコオロギの祖父母の家のことだ。心配になり、つい言ってしまう。
「子どもを襲うニワトリを放し飼いなんて危ないじゃないか」
「危ないけど、田舎だと庭でニワトリを放し飼いしてることはあるし、大人もそんなに気にしてなかったんじゃない?
それに対処法も身につけたから問題じゃなくなったよ」
まてまて! 大人たち、そこは気にしろよ!
子どもを襲って怪我させるなんて、ちょっとした事件だぞ……。
のんきを通りすぎて危険な香りがする田舎だな。
デンジャラスな田舎を想像しながら、またコオロギに疑問をぶつけた。
「対処法があったんなら、最初からやっておけばよかったんじゃないか?
どんな方法だったんだ?」
「単純だよ。戦闘に勝つ」
「……はい?」
「だ・か・ら、闘いに勝利する!」
ふんぞり返るような姿勢をとったコオロギを見て、これまでの経験から暗雲の気配を感じ、奇想天外なストーリーが飛び出す予感がしてきた。
「あのレグホン、いつまで経っても襲ってくるから、ある日、逃げずに対峙した。
あいつが飛びかかってきたところに、ボディーに蹴りを一発!
吹っ飛んだニワトリは退散したよ。この闘い方を知ってからは逃げるのはやめて闘うことにした。
一度勝ってからは毎回自分が勝利するけど、ニワトリは何度も挑戦してきた。あいつもちゃんと学習している。自分を見つけると間合いをとって用心しつつ、エリマキトカゲのように首周辺を逆立てて向かってくるんだ。
威勢は認めるけどニワトリの攻撃パターンは把握していて無駄な挑戦だ。いくら狂暴でも何度も蹴りを入れるのは、かわいそうだから手段を変えて捕獲することにしたよ。
捕獲するのは簡単だ。飛びかかってくる前に足の裏を顔の前に出す。ニワトリの意識が足へ向いたところで、すばやく体を捕まえて鶏小屋に閉じこめるんだ。この戦術で襲撃の対処はできたんだけど、小屋へ行くまでが大変だった。
動けないように胴体部分をがっちりおさえたら観念しそうじゃん?
ところがニワトリは捕まった状態でも腕をくちばしで突いてきたり、はさんでつねるんだ。
小屋に隔離するまでくちばし攻撃はやまないから、小脇に抱える感じでニワトリを持ち、もう片方の手で顔を軽くおさえるようにして攻撃を防いでいたよ。
まったく、どんだけ負けず嫌いなんだか」
「…………」
俺は放し飼いのニワトリなんて見たことがないし、ましてや格闘なんてしたことがない。それでも鮮やかに浮かぶのは王者の貫禄でのっしのっしと鶏小屋へ向かうコオロギの後ろ姿だ。
コオロギが豪快なわけがわかった気がする……。
俺と目が合うとコオロギは、にっと笑って最後に言った。
「探知能力はけっこう役に立ったよ。
叱られる前にいや~な気配を感知して、うまく回避できたことがいっぱいあったからね」
なにをしたんだよっ!
悪童記がちらちらと見えて変な汗がにじむ。
こいつの周囲にいた人たちは振り回されただろうなあ……。
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【参考】
✎ ネットより
白色レグホン:
レグホンはニワトリの品種。白い色の羽根のニワトリで、成長すると50センチ以上になる。
※本小説に登場した個体は凶暴ですが、すべてのレグホンが凶暴ではなく個体差があります
エリマキトカゲ:
国外(オーストラリアなど)に生息するトカゲ。成長すると頭から尾までの全長は70センチ以上になる。襟巻状のひだがあり、興奮すると傘のように開く。
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