『ホラーが書けない』27話 気づかないだけ? 人はいろんな能力をもっている【Web小説】
第27話 「共感覚」もすごい能力のひとつ
酒の席でホラーやオカルト系の話をすると、たいていは敬遠されるから話題にするときは慎重にしたほうがいい。でも歓迎する席もある。
以前なら「コンピューターに科学、医療が発展したこの時代に、幽霊はいるとかUMAは存在してるって思っているのかよ?」と超常現象的なことには否定的で、ホラーやオカルトに興味がなかった俺――紫桃――だが、現在はどっぷり怪奇の沼に浸かっている。
未知のことを知るのは楽しい。たぶん俺は好奇心が強いんだろう。友人に霊感があるやつがいて、零感の俺では知ることができない世界を視て、奇妙な体験をしてきている。
その友人・コオロギ――神路祇――とさっきまで幽霊のことを議論していた。今度は「異能」について聞いてみることにした。
「妖が視えるのはやっぱり不思議だ。そんな異能は珍しいよな?」
「う―――ん……。
妖が視えることはそんなに珍しいとは思わないかな」
「珍しく歯切れが悪い言い方だな」
「もともと同じモノを見ているとは限らないからね」
「意味がわからないぞ。わかるように教えてくれ」
「紫桃は『共感覚』って知ってる?」
「いや、初めて聞いた。なんだそれ」
「ふつうだと人は刺激に対して1対1で感覚が呼び起こされる。でもまれに複数の感覚が呼び起こされる場合があり、それを共感覚というんだ。
黒インクで書かれた数字を見ると、黒で書かれた数字にしか見えない。でも共感覚をもっている人の中には、黒インクで書かれた数字なのに、黒ではない色付きの数字に見えることがあるんだって。ほかに音を聞いたときに、音に色を感じる共感覚もあるらしい。
この共感覚のことを知ってからは、自分と他人が同じモノを見ているとは限らないと理解したし、妖とかが視える感覚も存在していそうと思った。だから妖だけでなく、不思議なモノが視えるという能力は特殊なものだと思わないんだ」
俺は初めて聞いた「共感覚」という存在にぽかんとなっていた。でもコオロギが言いたいことはちゃんと伝わった。
零感の俺からすると、妖が視える「霊感がある」人は珍しい。また数字に色が付いて見える「共感覚をもつ」人も珍しい。でもその能力は特別なものではなく、人にもともと備わっている感覚が通常の人よりも鋭くなっているのかもしれない……。
新しい情報が追加されて混乱しているのを察してか、コオロギが補足するように話してきた。
「ヒトが同じモノを見ているとは限らないのは珍しいことじゃないよ。
『主観』で見ているものは変化するから」
「コオロギ~、今の俺は情報過多であっぷあっぷの状態だ。
わかりやすく言ってくれ~」
忘れていた。コオロギは言葉足らずになることが多い。
俺のほうでカバーしていかないと。
コオロギはしばらくうなっていたけど考えが整理できたようで、例えをだして説明を始めた。
「紫桃も知ってのとおり、自分はカエルが好きだ。
愛くるしい瞳に、体のフォルムは完璧。存在自体が超キュート!
自分にとってカエルは好きな生き物トップ3に入る存在だ。
だがっ、残念なことに一般的には気持ち悪いと敬遠されているようだ……。
これは主観の違いからきていて、自分はカエルが好きだから愛らしく見える。でもカエルがニガテな人から見れば、ふてぶてしく映っていたり、気味悪く映っていたりするのだろう。
カエルって、かわいいのに……。
アマガエルの中には色彩変異で体色が青になったり黄色だったりと珍しいコがいたり、アルビノという美しいコもいる。アメフクラガエルは子猫のようなかわいい声で鳴くし、ボディーはまんまるで、めちゃくちゃかわいいのに――」
途中まではよかったけど、カエル愛が上昇してコオロギの思考が迷走し始めた。
要するに、コオロギは同じモノを見ていても「好き」「嫌い」など、当人がもつ価値観でとらえかたが違ってくると言いたいのだろう。それはわかるなあ。
友人から「オレの彼女、すげー美人だから!」と自慢話を聞かされたあと、実際に会ってみたら友人が言うほど美人ではなかった。後日、二人は別れたけど、別れたあとの友人は「なんですげー美人と思ったんだろう?」と言っていた……。コオロギが伝えたいのは、この「恋は盲目」のような状態のことだろうな。
俺なりに納得する答えがでたところで、ラストオーダーしたドリンクを互いに飲み終えていたことに気づいた。ほかに注文する料理がないから、これ以上はお店の売り上げに貢献できない。
俺たちは飲食を楽しんだ店をあとにした。
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【参考】
✎ 書籍より
共感覚:
『プロが教える脳のすべてがわかる本』(ナツメ社)
✎ ネットより
ニホンアマガエル:
単にアマガエル(雨蛙)とも。緑色または黄緑色、灰褐色をしており、成長したサイズは2.5~4.5センチほど。
主に樹上で生活し、産卵時に水辺ですごす。乾燥に比較的強くて森や林以外の場所でも生息している。
カエルは身を守るために毒をもっている個体がおり、アマガエルの皮膚にも毒がある。ふれるとすぐに被害がでるわけではないが、傷のある手でふれたりすると毒が入る恐れがある。またカエルにふれたあとは、目や口にはふれないよう注意が必要で、手洗いは必須。
アメフクラガエル:
国外(アフリカなど)に生息するカエル。主に地下で生活しているらしい。
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