『ホラーが書けない』24話 怪異が起きてるときの状況を説明【Web小説】
第24話 幽霊や妖怪が視える様子をスマホアプリに例えてきた
「……い、おーい、紫桃。
さっきから無言のままぼうっとしているけど酔ったのか?」
「酔ってないよ」
いかん、いかん。
回想モードに入っていた。
俺――紫桃――は友人・コオロギ――神路祇――と新宿の店で飲んでいる。ひさしぶりに会ったので互いの近況を聞いたりなんかして、会話を楽しんでいたところ、珍しくコオロギが視えた。
「珍しく視えた」と変な言い回しになっているのには理由がある。コオロギは霊感があり、幽霊や妖怪の類いと遭遇してる特異なやつだ。ただ能力は少し変わっていて、妖に腕をつかまれるような体験は多いが、姿が視えるということは少ない。
ところが今は視える異能が珍しく働いているようで、居酒屋のスタッフを視て、よどみのないクリアな姿に視えたことをうれしそうに話していた。
コオロギはお酒を飲んで機嫌がよくなるとおしゃべりになる。ふだんは話したがらない不思議な体験や、異能者にしかわからないような独特な考えを話すことがある。それを知っているから飲みに誘った。
また奇譚を語ってくれないかなと密かに期待していたら、にこにこと楽しげに話してきた。
「最近はARやMRなどのXR技術が伸びてきていて、ARを使ったスマートフォンのアプリが増えてきてる。
先端技術を知ると、妖が視える仕組みはXR技術みたいと思えてくるよ」
「コオロギ、俺はパソコンとかデジタルにうといんだ。
コンピューターを使った技術を異能に例えているようだけど、わかりやすく説明してくれないか?」
「ごめん、ごめん。仕事で使うからつい。
そうだなあ、ブームになったスマートフォンゲームの『ポ☆G☆』がわかりやすいかな?
ポ☆G☆のようなARゲームは、スマートフォンの画面上に映っている風景にゲームのキャラクターが登場する。そのキャラは現実には存在していないけど、スマートフォン上に映る現実風景では存在するモノ扱いになっている」
「ポ☆G☆か。やったことがある。おもしろいよな。
ゲームを始めたらスマートフォンのカメラを通して映る風景にキャラが現れて、現実に存在してるような感覚になるからなあ」
「その仕組みがね、妖を視ることとなんだか似てる気がするんだ。
妖はふつうの人は見えないだろう?
ARゲームと一緒でさ、特別なモノを視るためには、特殊な能力が必要になるんだ」
「特殊な……。それが異能か」
「そう、『妖を視る』ための機能。
霊感があって視える人は、AR技術のような機能を標準装備してて、スマートフォンに映るARのように、現実世界に妖がプラスされたカタチが標準となって視えている。
先端技術を知ると妖が視える能力はそんなふうに思えた。だから映画の『マ〇リックス』の世界観も現実であり得そう(笑)」
「コオロギ~、言いたいことはわかったけど、ヒトをスマートフォンとかに例えるなよ。
機能や装備とか……。機械っぽくてちょっと怖いぞ」
ほろ酔いのコオロギは気をつけるよとご機嫌で返した。
やっぱり零感の俺と異能があるコオロギとでは視点が違う。コオロギは常に妖が視える異能者ではないが、視える状況をARで表現したということは、コオロギが妖を視ている状態は、現実にバーチャル映像が突然現れるようなイメージで妖が映るのだろう。
この流れだと体験談も話してくれそうな気がしたので俺は聞いてみた。
「コオロギは今話したARみたいな霊体を視たことがあるのか?」
「ARっぽいやつ?
さっきまで現実にはいなかったけど、突然現れたやつねえ……。
う―――ん……。あ、あるなあ。聞きたい?」
「ぜひ!」
こんなにスムーズに事が進むとは!
今日は本当にコオロギの機嫌がいい。奇妙な体験を快く話してくれるぞ!
これは酔っぱらったおっさんからコオロギを助けてくれた店員、あの好青年のおかげか!? 感謝に尽きるぜ!
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【参考】
✎ ネットより
AR(Augmented Reality:拡張現実)
現実世界に仮想世界を重ねる技術。
MR(Mixed Reality:複合現実)
現実世界にCG技術を用いた仮想世界を取りこみ、現実世界と仮想世界を融合させた、複合世界をつくる技術。
XR(Extended Reality)
AR、MR、VRなどの技術の総称。
VR(Virtual Reality:仮想現実)
仮想世界を現実世界のように体感できる技術。
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