『ホラーが書けない』12話 「なにか気配がする」の正体はなに?【Web小説】
第12話 気配を察知する能力はみんなもっている
東京・新宿にある居酒屋で俺――紫桃――はひそかにホラー小説のネタを集めている。ついさっき、友人・コオロギ――神路祇――から奇怪な体験談を聞いた。
コオロギは「同じ場所に長くいると周囲に妖が寄ってくる」という怪異体験を話してくれたが、その中で「霊体の気配がした」と言っていた。
コオロギは実体のないナニカを感知できる異能をもっているが、零感の俺には妖の気配がわかるという感覚が理解できない。
考えこんでいたら、スマートフォンに熱中していたコオロギが気づいた。どうやら「霊体の気配を感じるって、どうやって?」みたいな言葉もろもろが俺からもれていたらしい。
コオロギはスマートフォンを見るのをやめると、さもふつうのことのように言ってきた。
「気配を感知する能力は、みんなもっていると思う」
「いやいや、気配を感知するなんて小説とか漫画などの中だけだろう?
異能があれば別だけど、だれもがもってるわけないよ」
「そんなことない。
例えばソファに座ってテレビを見ているときに、背後で廊下を歩く気配がして父がトイレに行くんだなとか、後ろを通りすぎた気配から母がキッチンへ行ったなど、ふり向くことなくわかることはない?
それと同じことだよ」
なるほど……。
言われてみれば、零感の俺でも気配を感じるという能力に関しては、共感できる部分があるなあ。
実家にいるときは見ていなくても家族のようすがわかるときがある。足音や服のすれる音、呼吸音などを無意識のうちに感知し、一緒にすごした経験からどんな動作をしているのかわかるのだろう。
経験を思い出し、納得しているとコオロギは話し続ける。
「気配を感知したら姿を確認しなくても正体を判断できている。
その延長線上にあるのが幽霊や妖怪を感知する能力に思える。
だから千秋チャンもいつかは妖と接触するかもよ~?」
俺のことを名字の「紫桃」ではなく、「千秋」と呼んだコオロギを見れば、いたずらっぽく笑っている。頬はピンクになってて上機嫌だ。……この酔っ払いめ。
「怖いこと言うなよ。
奇譚は集めているけど怖いのはニガテなんだよ」
「紫桃は不思議な話を聞きたがるけど怖がりだよな。
さっきのは冗談だよ。心配する必要はないんじゃない?」
怖がりじゃない!
俺が怖いと思うのは身近で未知との遭遇をしているコオロギの体験談だけだ!
――と反論したいが、伝えるとコオロギが奇譚を話すのをやめそうなので黙っておく。さらに体験談を聞きだすために話を続ける。
「簡単に流すなよ」
「流していないよ。
実体のあるものは重さがあるから多少の動作音が発生する。
だから探知しやすいけど、実体のない妖を探知する能力はまれだと思う」
平然と言うが根拠はないだろう?
考えが顔にでていたのか、コオロギはからかうように笑ったあと、「子どものころの体験だけどね」と前置きをしてから語りだしたんだ――。
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