『ホラーが書けない』35.5話 四方山話(8)【Web小説】
第35.5話 先祖はお盆がくるのを楽しみにしている
年中行事のひとつに「お盆」がある。お盆は日本各地で行われているけど、期間は統一ではないことを知ってるかな?
お盆は新暦で行ったり旧暦に従ったりと地域によって期間が異なっている。でも共通点があって「お盆には先祖の霊が帰ってくる」と信じられている。親世代、祖父母世代、その前の世代からずっと伝わってきていることだ。
俺は零感なのでなにも感じられないけど、異能がある友人はお盆になると、ふだんと違うとわかるようだ。こんな話を聞いた。
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衰退が見える駅前の商店街の歩道をやや左側に寄って歩き、右側は自転車や人が通れる空間をつくっておく。そうしてお店を見ながらゆっくりと歩いて帰るのが好きだ。
いつものように帰路についていたら、鼻の前をヒトが通っていった。ありえないことだったので驚いて足が止まった。
歩道の左側に寄って歩いてるから建物との間隔は1メートルも空いていない。そんな狭い隙間を三人のニンゲンが横に並んだ状態で通り過ぎて行ったのだ。
縦に一列の状態なら通行できたかもしれないが横並びは不可能だ。しかもヒトの姿は見えず、すれ違ったという感覚を受けて、体臭がしただけだった。
相手が妖とわかっていたけどふり返ってみた。やっぱり歩道の先には該当するようなヒトたちは見えなかった――。
友人は体験を話し終えると幽霊のことを怖がるようすもなく、こう続けたんだ。
「すれ違った際、三人からは楽しげな雰囲気がしていた。今から向かう所へ到着するのがうれしいという気持ちがあふれていて、話しこんでいるふうだった。
幽霊がどうして楽しそうにしてるんだろうと気になった。そこへ家の窓からもれてきた線香の香りを嗅いで、そういやお盆だと気づいた。それでわかったんだ。
さっきの三人は家へ向かってる途中で、家族に会えるのがうれしくて、あんなに楽しげだったんだ、と。気づいてほっこりしたよ」
友人が語る体験は奇妙なものが多く、幽霊や妖怪などの妖が登場して、ぞわりとするものが多い。今回の体験も、幽霊とすれ違うという不気味なものだったけど、同時にほんわかとなった。
先祖の霊がお盆を楽しみにしているのなら、俺たちも楽しく迎えたい。短い期間だけど現世をゆっくり楽しんでくれよな。
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