背伸びしたモンブランが相棒だった
先日の記事で、「私には相棒と呼べるものがない」みたいなことを書いてしまった。
今日、バッグの中をガサゴソかきまわしていて、指と目が思い出した。「あ。いたわ、相棒」。
私にはもう10年以上使っているボールペンがある。約10年のあいだ、ほぼ毎日使っていたら、それは相棒と呼んで差し支えないだろう。出先でメモを書くなら、絶対これ。

友人に「ボールペンがかわいそう」と言われました。
心を入れ替えてペンポーチに入れています。
モンブランのボールペン。マイスターシュテュック ソリテールという、すごく長い商品名だった。
ボディが白で、メタル部分がピンクゴールドになっている。当時の私がモンブランというブランドに抱いていたイメージを覆す、優しい雰囲気に惹かれた。写っていないほうのサイドには、ネームを刻印してもらった。ちょっと短いので、人によっては書きにくいかもしれないけれど、私は慣れているので平気だ。
このボールペンを買ったのは、会社員の頃。その企業ではじめての昇格を果たしたときだった。「昇進」ではなく、昇格。会社員時代、私はずっと平社員だったので、肩書が変わった経験はない。社内での職級がひそかに上がっていっていただけ。
それでも、自分に課せられたことは着実にやっていこうと心がけていた。管理部門の一角で、地味だと言われることもある仕事をしていた。「あの部署って、楽でいいよな」と言われながらも、毎日やることはたくさんあってそれなりにストレスは抱えていた。
昇格の記念になにか買うなら、その地道な心がけを維持するよすがにしようと思った。かたちに残り、それでいて毎日使える素敵なものが欲しかった。
アラサーには分不相応な、背伸びした文房具だったかもしれない。でも、こっそりこれを使っていると、働くなかで悩みや心のざわめきが生まれたとき、初心に帰れる気がしていた。
今でも毎日このボールペンを使って文字を書いている。すると、これに心を寄せながら、なかば意固地になって働いていた自分を思い出す。「地味だとバカにされたって気にするもんか」。
もっと肩の力を抜いてもよかったのにね。あの頃の自分にそう言いたくなる。けれど、地道さを忘れないための道具として、これほど最適な筆記具は私にはない。
