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石の手紙〜ここは猫の街ミルミアシリーズ2-8〜

ここは猫の街ミルミア。
人間には内緒の街。
潮風が頬を優しく撫で、ポカポカ太陽が昼寝へ誘う。
のんびり二本足で歩いて今日も気ままな猫達は思い思いにすごしています。

仲良し子猫のミコ、ルナ、レオは古代の森でなにやら揉めているようです。

「返してこようよ!勝手に持ってくるのはやっぱりよくないよ!」
「ちょっと借りただけだし!後でちゃんと返すから!」
「ないって悲しい気持ちになってるかもしれないよ?」

ルナが手に持っているのはノワールが以前、ミルミアに住み着くようになったカワゴンドウからもらった謎の機械です。

「じゃあミコとレオは行かなきゃいいじゃん!わたしはもういくっ!」

草を揺らし、風のように駆け出していきました。

「まってよ!」

ミコとレオもそのあとを追います。

「もうっ」

ルナはニ猫の制止も全く聞かずどんどん森の中を駆けていきます。

「はぁ、はぁ…どこまで行くんだろう」
「まってってばー!」

どんっ
「うぁっ」
ルナが急に立ち止まったので、ミコはぶつかって尻餅をついてしまいました。
レオが心配そうに大丈夫?と声をかけます。

「ついた、ここだよ」
「ここ見て」

ルナの指差したところは草が生い茂った崖の岩肌でした。
この前雨が降って土が柔らかくなったときにルナが草をかきむしったせいで土ごと剥がれて石でできた扉があらわになっていました。

「石の…扉?模様、古代文字っぽいね。なんか窪みもある」 

ぐぐぐっとおしてみますがびくともしません。

「そう!ぜったいこれがぴったり!」

そういうとルナはがこっと勢いよくノワールの機械をはめました。

「…」
「…」
「…」

「ぴったりだけど…何も起きないね?」
「うむむむむむむ…絶対これなのに!」

「…これ真ん中押してみる?浮くかもしれないから、一人がこの扉をつかんで、みんなで手を繋いでやろ!」

3猫目を合わせて無言でうなずくと、ルナがスイッチをカチッ
機械が前と同じようにほわんと優しい光をたたえます。

「…浮かないね?大丈夫みたい。」
「おすっ、扉をおしてみるっ」

とても、重そうな大きな石造りの扉。
でもさっきとはうってかわって軽々と開きました。

「あいたー!」
「すごい!」
恐る恐るみんなそろって中を覗き込みます。
冷たい空気がひげをなぞります。

「…どうする?」
「そんなの」

ミコとルナは目を輝かせ、目を合わせると

「行くに決まってる!」

レオは少し不安そう。
ひんやりとした石の感触をそろりそろりと足で確かめるようにすすみます。
つるつるとしたよく研磨された石。
壁も丁寧に磨き上げられています。

「階段だ…」
「暗いね…」
「これをランタンの代わりにしようっ!」
ノワールの謎の機械。
スイッチの部分がさっきより明るく光っています。
行先を照らすには十分でした。

「ねえ…やっぱりかえr」
「なにしてるんだ」
「わ!」「きゃあっ!」「ひっ!」

びっくりして後ろを振り返ると

「「「ノワールっ!」」」

「…中々戻らないから見に来た」
「ごごご…あ、あ、あとでちゃんと…」
「こんなところがあったんだな」

ノワールは興味深そうに壁や床を見回しています。

「…なにしてる?行くんだろ?」
「え、う、うん!」
足下気をつけろよ、と言ってゆっくり先頭を歩き始めました。

「…怒ってない?」
「?なにを?」
「勝手に持ってきちゃったから…」
「ああ…持って行ったのは知ってたし返すつもりだろうとわかってた。気にしてない。」

「…だが今度からは一声かけたほうがいい」
「はあい」
ルナは耳をぺたっとさせて返事をしました。


ゆっくり階段を降りていく。
聞こえるのはコツコツと階段を慎重にたたく音だけ。

レオの手は冷たい汗でぐっしょりでした。
沈黙に耐えきれなくなったレオは震える声を振り絞って

「ねえ…この先に何が有るんだろうね?」
「なんかすごいものがあるに決まってるよ!楽しみー!」 
「お宝があったりして!」
と、元気いっぱいにルナとミコが答えました。
お宝は魚の形の王冠だとか、りんごの形のネックレスじゃない?とニ猫が想像を膨らませているのをみて、レオは思わず笑ってしまいました。

「…階段はここまでみたいだな。また扉がある。」

階段を降りきると、短い通路の先にまた石の扉があります。
入口と同じような石の扉。
やはりあの機械がすっぽりはまりそうなくぼみがあります。

「出番だね!」
入口の時と同じように機械をはめ、スイッチを入れました。 

「…いくよ、せーのっ!」
スーッと扉は開きました。

「……わあ」
思わず、ミコの口から声がこぼれました。

そこは、丸い石のお部屋でした。
天井は高く、壁には細かな古代文字がぐるりと刻まれています。
部屋の真ん中には、石でできた台座。

その上に—— ひとつの、小さな機械。
まるで眠っているみたいに、静かにそこにありました。

「……これ」

ノワールの機械が、ほわんと光ります。
すると、台座の上の機械も、同じようにやさしく光りました。

「動くのかな……?」
レオが小さくつぶやきます。

「見て!」
ルナが指さした先には、大きな石碑。

古代文字のあいだに、今の猫たちにも読める言葉が少しだけ残っていました。

この力はみんなを幸せにするためにつくられた
けれど想いはぶつかりあい
わたしたちはこの光を手放すことにした
どうか——
(ここは削れていて読めません)
……やさしい心で

しばらく、みんな黙っていました。

「……ねえ」
ミコが、小さく言います。
「これ……使っても、いいのかな」

ルナは、機械を見つめます。
「……この猫さんは、みんなけんかしちゃうから、しまっておこうって思ったのかな」

レオは、しっぽをぎゅっと丸めました。
「なんで、みんなの幸せのために作られたのにそんな事になっちゃうんだろう」

ノワールは何も言わず、
ただ、静かにその光を見つめていました。

「…このまま眠らせておこう。きっと…それがこの猫のおもいだ。」

子猫達は黙って頷きました。

「それじゃあ、かえろっか!」
「うん、そうしよ!」
「楽しかったね!」

「…トトからひげのオーブンにみんな連れてこいと言われてる。カスタードりんごパンと星めぐりパンが焼き上がるから焼き立てをご馳走すると言ってた。」

「「「やったーーー!!!」」」
嬉しそうな子猫達に思わず目を細めるノワールでした。


そのあと、ノワールに付き添われてトトのパン屋へ向かった子猫たちは、焼きたてのパンを頬ばりながら、今日の冒険の思い出に花を咲かせたのでした。
外では、やわらかな潮風が、いつものようにミルミアの街をそっと撫でていました。

ここは猫の街。


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