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【物語】ここは猫の街ミルミア2-3〜カワゴンドウの贈り物

猫達の街、港町ミルミア。
人間には内緒の猫のまち。
ぽってりとしたフォルムの2本の足でのそのそのんびり歩く。

今回も
のんびりした街の
せわしない港の
静かなノワールの
賑やかなお話。


港の朝
木箱を運ぶ音。
縄の擦れる音。
波は、やわらかく寄せては返します。

ーちゃぷん

「……来たな」
ノワールは、小さくつぶやきました。

灰色の体が、水面からゆっくり現れます。
あのカワゴンドウです。

最近は、こうして顔を出すようになっていました。

最初はただ見ているだけでしたが、
ノワールが魚を分けるようになってからは、
少しずつ距離が近くなっていました。

「……食うか」
魚を、ぽちゃんと海へ投げます。

カワゴンドウは静かに受け取りました。

ぐぅん……
低く、やわらかな音。

魚を一飲みすると
カワゴンドウは、波間へ姿を消しました。

「……」

ざーっざーっ
しばらくの間、波をただ見つめていました。

ちゃぽんっ
再び姿を現した時
口に何かをくわえていました。

桟橋から手を伸ばし、
それを受け取ります。

手のひらに収まる、
円形の何か。

金属のようにも、石のようにも見えます。

中央には、透き通った宝石のようなものが埋め込まれていました。

「……くれるのか?」

ぐぅん……
波が、やさしく揺れます。

「……ありがとう」


太陽がすっかり真上に上がった頃、
ノワールは古道具屋にきていました。

「あ!ノワール!」
ミコが、ぱたぱたと駆け寄ってきます。
古道具屋がすっかり気に入ったミコは
最近よく来ているようです。

「それなに!?きれい!」

「……海のやつにもらった」

「えー!見せて見せて!」

トトも、静かに近づいてきました。

「……不思議な形だね」

机の上に置くと、宝石のような中央に埋め込まれたものがほのかに光をたたえます。

ミコは身を乗り出しました。

「ねえ、これ押せそうじゃない?」
中央の部分に、指を近づけます。

「やめとkー」
——カチ
小さな音。

一瞬の静けさ。
凍りつく表情。
トトとノワールのひげがぴんっと張りました。

次の瞬間——

ぽわん

光が、やわらかく部屋全体に広がりました。

「……あ」

ふわり
棚の上の瓶が、
ゆっくり浮き上がります。

「えっ!?」
靴が。
箱が。
古い時計が。

店の中のものが、
ひとつ、
またひとつと宙に浮かびました。

「うわあああ!?」
ミコの声。

ふわり、ふわり。
その効果は店内のものだけじゃなく
ミコ達にも。

「うわわっ
どうしたんだ!?」
エイベルが店の奥から慌てて出てきました。

「…ミコがスイッチをおした」
ふわふわと空中をただようノワール。 

「テーブルの上にあるそれ!ミコがおしたんだ!」
トトがエイベルの頭上を通過。
エイベルがすんでのところでトトを回避すると
テーブルまで滑り込むと
そのままの勢いで
謎の装置をばん!とたたきました。

ーすーっ
すべてのものが、ゆっくりと元の場所へ戻っていきました。

靴が床へ。瓶が棚へ。
光も、静かに消えていきます。

しん、とした店内。

「……」

「……」

「……なに今の」

ミコが、ぽつり。

トトは、部品をじっと見つめています。
「……」

ノワールは腕を組みました。
「……とんでもないもん、もらったな」
少しの沈黙。

そして——
ミコが、にやっと笑います。

「もう一回やる?」

「やめろ」「やめて!」「だめっ!」


それぞれが家路につき、
ドアを開ける頃には
星々がきらめいていました。

ノワールは
ベッドに横になりながら
カワゴンドウからの贈り物を
眺めていました。

「なんなんだろうな」

ふっと笑うと
そっとサイトテーブルにおきました。

瞼を閉じると
ふわふわ浮いた時に見た店の様子が
鮮明に映し出されました。

一緒に浮いた
焦った顔のトト
楽しそうなミコ

そして最後にー
カワゴンドウの魚を一飲みする様子。

意図せず
口元がゆるむノワールでした。

ここは猫の街。


前回のお話はこちら↓

マガジンにまとめました!
シリーズ2はこちら↓

ここは猫の街シリーズ1-1はこちら↓


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