壺にパンを入れたら煙が出た〜ここは猫の街ミルミアシリーズ2-10
ここは人間は知らない猫の街ミルミア。
今日も気ままにぽってりした二本足でのんびり散歩。
朝から香ばしいパンの香りがただよい、
おっちょこちょいな店主がいる魚屋をのぞき、
荷物が忙しなく行き交う港で海を眺めたら
夜は広場に集まってみんなで歌を歌う。
そんな日常がのんびりと繰り返されています。
「ぷぎゅはすごく美味しそうにパン食べるね。」
「今日もとってもおいしい!」
トトのパン屋「ひげのオーブン」のレジ前でこんな会話をしていたのはこの店の手伝いをしている子猫のミコとぷぎゅです。
「あら、今日もぷぎゅちゃんかわいいわね。」
「ぷぎゅが食べてるパンなーに?美味しそう!それが食べたいな!」
「今日のぷぎゅのおすすめは?」
「毎日のようにお店の宣伝して偉いわね!」
ぷぎゅはすっかりお店の看板娘でした。
「この時代はとってもいい!みんな可愛いって言ってくれるし食べ物もたくさんくれる!」
「この時代って…ぷぎゅいつ生まれたの?」
「ん〜、壺に閉じ込められる前と全然まわりの様子が違うから何千年か前かもね。」
「えー!前々から気になってたけどなんで壺に閉じ込められてたの?」
「…いっぱいイタズラして毎日集落の猫を困らせてたら捕まえられて裁判にかけられて…」
「!」
「無期壺の刑」
「ええ!そんなの聞いたことない」
「今はないみたいでよかった。でももうみんなを困らせる事はしないよ。こんなに居心地がいいし、おいしいパンを食べてるだけなのにみんな褒めてくれるし!」
「ミコ!ぷぎゅ!おはよー!」
元気な声で店に入ってきたのはミコのお友達のレオでした。
「おはよ!朝ごはん?」
「うん!父さんの分も頼まれたんだ!力がでるやつください!」
「おーけー!それならこれがおすすめ!」
ミコはトトの店をお手伝いするうちにすっかりパンに詳しくなっていました。
手早くナッツと蜂蜜のパン、ツナマヨパン、大きなチーズパン…
ぽんぽんと見繕って紙袋に入れてあげました。
「ありがとうー!あ、そうだ、お昼ごろから遊ばない?さっきここに来る途中でルナに会って誘っておいてって言われたんだ!」
「やったー!もちろん遊ぶー!」
「おーけー、じゃあお昼ごろ古代の森集合ね。大壺のとこ。よかったらぷぎゅも一緒にくる?」
「行くー!」
「じゃああとでね!」
古代の森は、古代壺文明の遺物がたくさん見つかっている森です。
鬱蒼とした森、
張り付くような湿った空気、
むせかえるような植物や土の匂い。
港町ミルミアから近くて、よく子猫たちが遊びにやってきます。もちろん大人の猫も。
「ミコ!おそい!」
遅れてきたミコを見つけて仁王立ちで怒っているのは子猫のルナでした。
「ごめんごめん!りんごカスタードパン焼き上がりそうだったから待ってたんだ〜。」
「!りんごカスタードパンっ!?」
「ふふ、もちろん持たせてもらってきたよ!」
「!」
「あとでみんなで食べよう!」
「わーい!」
ぷぎゅも来たんだね!と嬉しそうにルナが笑いました。
「じゃあ、みんな揃ったし何して遊ぶ?」
「そりゃあやっぱり…」
「「かくれんぼっ!」」
息ぴったりのミコとルナ。
「おーけー、じゃあ草じゃんけんで最初の鬼決めよう。」
じゃーんけーん…
鬼を順番こしながらかくれんぼが続きました。
「ぷぎゅ隠れるのうますぎ!全然探せなーい!こうさーん!」
「まだまだかくれんぼマスターには程遠いね。」
ひょこっと木の葉っぱの間から出てきました。
「わ!今度はそんなとこだったのか!」
「かくれんぼ楽しいねぇ。」
「ねえねえ!さっきあっちにコトハさんいてまた壺探してたよ!」
「そうなんだ!なんか見つかったかな?」
「見に行ってみよ!」
「これは…ものすごい発見かもしれないわ…!」
「コトハさーん!」
「あら!君たち来てたの!」
「!それなーに?」
コトハの目の前に両手で抱えないと持てないくらいの大きさの壺がありました。
表面にはたくさんの模様…
古代文字や絵などがたくさん描かれています。
「掘り出すのに何週間もかかったのよ!こんなに大きいのに全く欠けがないなんて奇跡だわ!」
「これから持ち帰って解読するんだけど…」
熱弁を始めたコトハでしたが、
「私にもわかるのあるよ!これは、りんごの絵でしょ、魚の絵でしょ、…んー、これは子猫かな?」
「ほんとだ、僕もそう思う。壺に入れろってことかな?魚…おやつに持ってきた煮干しあるよ?」
「いいね!入れてみよ!りんごはないけどりんごカスタードパンあるからちぎってちょっとだけいれよ」
そういうと、煮干しとりんごカスタードパンをぽいぽいっと勝手に入れてしまいました。
「勝手に入れては…!」
「!」
ぼわぼわぽぽん…
煙のようなものがたくさん壺から出てきました。
みるみるうちにその煙がまとまって…
「なんか変なのでた!?」
煙は、頭にカゴを乗せた大きな生き物のようなものを形作りました。
「わー、懐かしい!」
「え!ぷぎゅ知ってるの?なにこれ!?」
「名前は知らん。集めて配るやつだよ。」
「ん??」
「うわー!なにすんだよー!」
「レオ!」
壺から出てきた煙の生き物はレオから煮干しを全部取り上げていました。
「ちょっとまって…という事はこれって…」
煙の生き物はミコの方へ向き直りました。
「やばい、絶対こっち来るやつじゃん!」
そう言ってミコは走って逃げ始めました。
すると、煙の生き物はミコめがけて走り始めました。
「ミコ待ってー!」
ルナとレオも後を追いました。
煙の生き物はあまり速くはありませんでしたが、ずっとミコをおっていました。
走って逃げて、街まで戻ってきてしまいました。
「うわーん!トト助けてー!」
パン屋ヒゲのオーブンに駆け込んだミコでしたが、
「え!なにそれ!」
店の中に一緒に入ってきてしまいました。
すると棚に並んでいるりんごカスタードパンをひょいひょいとカゴに放り込んでいきます。
あっという間にかごはいっぱいになりました。
「わわわ、全部なくなっちゃった!」
「ミコ、大丈夫?え?これなに?りんごカスタードパンが…」
残されたのは空っぽのトレー。
煙の生き物はドアから出て行きました。
「えー!行っちゃった…」
「ミコ!大丈夫!?」
遅れてやってきたルナとレオ。
「あいつ、噴水広場の方へ向かって行ったかも。」
「追いかけよう!」
「あれなんなの!」
「トトごめんね!あとで説明する!」
「はあ、はあ…どこまで行ったんだろ…」
「とりあえず噴水広場まで行ってみよ」
噴水広場の近くまでくると、楽しそうな子猫達の声が聞こえてきました。
「わーい!ありがとうー!」
「ママー!これなんだろうー!」
「トトのパンだ!やったー!」
「え!これってどういう…」
さっきの煙の生き物は、今度はカゴからりんごカスタードパンを取り出しては噴水広場にいた子猫達に配っていたのです。
「配ってるね?」
「わ、こっちくるよ!」
ここまでずっと走りっぱなしだった3匹は、もう走り逃げる体力がありません。
煙の生き物はミコ達に近づいてきて…
「…え?くれるの?」
ミコ達にもりんごカスタードパンを順番に配ってくれました。
「ぷぎゅが言った通りだね、集めて、配る」
カゴの中のりんごカスタードパンを配り終えると、今度は煮干しを小さい子猫に配り始めました。
やがて、全て配り終わると
ぽんっ
と跡形もなく消えてしまいました。
「集めて、、、配る、、、」
古代の森ではぷぎゅがコトハの質問責めにあっていました。
「…なるほどなるほど、つまり古代壺文明では壺はただの貯蔵用の入れ物ではなく道具だったわけね?」
「…暮らしを効率よくするためのものと、娯楽用のものなど色々な用途のものが…」
「…それは誰が最初つくったの?誰でもつくることができたの?」
「もう飽きたー!!帰るっ」
「あ!待って!まだ聞きたいことがいっぱいあるのよ!」
「昔のことなんか思い出したって面白くない!今を楽しく生きたいのっ」
そう言ってぷぎゅは飛んで逃げてしまいました。
今日の夜はとても心地よい風が吹いています。
こころなしか、夜の演奏会に集まった猫達はいつもより多いようでした。
ここは猫の街。
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