「フリーレンはあなたのために、思い悩んでくれる」|葬送のフリーレン
エルフであるフリーレンには、人間の気持ちがわからない。
アニメ『葬送のフリーレン』では、このような設定で物語が展開していく。
しかし、この「人間の気持ちがわからない」という設定こそが、「人間同士の相互理解とは何か」というテーマの輪郭を浮かび上がらせている、と私は捉えている。
フリーレンは「人間の気持ちがわからない」ことを自覚しているからこそ、人間を深く知ろうとする。
そして、弟子のフェルンや仲間たちとの相互理解を深めていくことにつながっていくと思うのだ。
わからないからこそ、わかろうとする。
これこそが人間同士が相互理解するうえで、もっとも大切な姿勢ではないのか。
このフリーレンの姿勢について、繰り返し言及されているのがS1E27『人間の時代』だ。
一級魔法使いになるための二次試験でフリーレンの複製体と戦った際に、フェルンの杖は壊れてしまった。
育ての親であるハイターにもらい、小さな頃からずっと、大切に使ってきた杖だ。
その杖を直したいと言うフェルンに対し、フリーレンは
「古い杖は捨てて、新しい杖を買った方がいい」
と言ってしまう。
その言葉はフェルンを傷つけ、そして怒らせてしまう。
フェルンはシュタルクと話しながら、フリーレンは自分のことをまったくわかっていない、という不満を吐露する。
この時、シュタルクがこう言うのだ。
そんなの、俺だってわかんねえよ。
だからさ、わかろうとするのが大事だと思うんだよ。
フリーレンは、頑張っていると思うぜ。
わかろうとすることが、大事。
これは、S1E3『人を殺す魔法』で、フェルン自身が言うセリフとよく似ている。
(「私を知ろうとしてくれたことが、たまらなくうれしいのです」)
シュタルクとフェルンが上記のような会話を交わしている頃、フリーレンは、フェルンを傷つけてしまったことを反省していた。
一級魔法使いの選抜試験で知り合ったリヒターのもとを訪れ、フェルンの杖の修理を依頼した。
フェルンは夜に宿の部屋に戻ってから、修理された杖が自分のベッドの上に
置かれているのを見つける。
ここで、ハイターが生きていた頃の回想シーンが流れる。
毎回、回想シーンが挟み込まれるタイミングが絶妙だ。
ハイターは幼いフェルンに対して、こう語りかけている。
フリーレンは、感情や感性に乏しい。
それが原因で、困難や行き違いが起こることも、あるでしょう。
でも一つだけ、いいこともあります。
その分だけ、きっとフリーレンはあなたのために、思い悩んでくれる。
彼女以上の師は、なかなかいませんよ。
この時のハイターは、「人間の気持ちがわからない」というフリーレンについて、「感情や感性に乏しい」という言葉で言及している。
私はここで、一度止まって考えてしまう。
たしかにフリーレンは、登場する他の人間たちと比べて、感情や感性の表現は乏しいように見える。
しかし「自分以外の人の気持ちがわからない」のは、本来、すべての人間がそうなのではないか。
そして私たちは、人の気持ちがわからないからこそ、時間をかけて知ろうとし、わかろうとして悩むことが大切なのではないか。
エルフと人間を描き分け、その違いを明確にした物語の中だからこそ、この構造が際立つだけなのではないか。
そう思ってもう一度ハイターの言葉を読み直すと、その言葉はより重く、味わい深く感じられる。
感情や感性に乏しいからこそ、困難や行き違いが起こるだろう。
だからこそ、「その分だけ、あなたのために悩んでくれる」とハイターは言ったのだ。
そんなふうに誰かのために、一生懸命に思い悩めることは当たり前のことではない。
ハイターが言うように、フェルンにとって、フリーレン以上の師はいないのだと思う。
以前の記事でも紹介したが、ファンタジーを想起させるようなケルトっぽい楽曲を16曲収録した『Tokyo Fantasy Soundscape』というアルバムを作り、Spotify、Apple Music、Amazon Musicといったところで配信している。
アニメ『葬送のフリーレン』を見はじめてから、こういったケルトっぽい音楽を聴くと「癒される」と感じるようになったためだ。
東京の街を舞台に冒険を—といった空想の世界をイメージし、自分の作業用BGMとして作った。
よければ聴いてみていただけると、嬉しいです。
🪄
本コラムをおもしろいと思っていただけた方には、以下もオススメです。

