「私を知ろうとしてくれたことが、たまらなくうれしいのです」|葬送のフリーレン
『葬送のフリーレン』の世界におけるキャラクター同士の相互理解について、引き続き書いていきたいと思う。
フリーレンの生活面における「だらしのなさ」は、フリーレンとフェルンの間で相互理解を築く際に一役買っている、と前回の記事に書いた。
(「すごく、だらしがない人なのでしょうか」)
さらに言えば、2人の信頼関係や相互理解が深まる過程で重要なのは、エルフであるフリーレンの「人間の気持ちがわからない、という設定そのもの」ではないだろうか。
物語を通して、一貫してフリーレンは「人間のことがわからない」からこそ、知ろうとする。
このフリーレンの姿勢と、それによって深まるフェルンとの相互理解をよく描き出しているのがS1E3『人を殺す魔法』に出てくるエピソードだ。
物語の前半でフリーレンは、フェルンの誕生日プレゼントとして悩みに悩んで蝶のデザインの髪飾りを買い、フェルンの好きなスイーツが食べられるカフェを見つけ、彼女と一緒にその店に行く。
フェルンはそのカフェで、フリーレンが食べたいものは「メルクーアプリン」だと言い当てる。
フリーレンは驚き、そしてフェルンに謝る。
フェルン、ごめん。
私はフェルンのこと、何もわからない。
だから、どんなものが好きなのかわからなくて。
そう言いながら、自信なさげに、フェルンにプレゼントの髪飾りをわたす。
髪飾りを見て、「とてもうれしいです」と言うフェルンに、フリーレンは「本当に?」と信じられない様子で返す。
フェルンは、以下のように続ける。
フリーレン様は、どうしようもないほどに鈍い方のようなのではっきりと伝えます。
あなたが私を知ろうとしてくれたことが、
たまらなくうれしいのです。
このフェルンの言葉には、他者との相互理解の本質が詰まっている、と私は思う。
わからないから、知ろうとしない、知りたくない、ではなく。
わからないからこそ、知ろうとする。
自他共に認める「人の気持ちがわからない」フリーレンの言動だからこそ、この本質が明確に浮き彫りになる。
相互理解において必要な姿勢を、フリーレンとフェルンが教えてくれているように思うのだ。
現実社会に生きる私たちは、ときに他者のことを
「自分とは違うから」
「よくわからないから」
という理由だけで、知ろうとする前に切り捨てたり、対立してしまうこともある。
個人同士の相互理解はもちろん、多くの場合、他国間・異文化間における相互理解の難しさも、ここにあるのではないか。
本来、すでにわかっていることしか知ろうとしないのは、「知ろうとする」とは呼べないはずだ。
わからないことだからこそ、「知ろうとする」姿勢が成立する。
だからこそ、思うのだ。
フェルンが言ったように、「私を知ろうとしてくれたことが、うれしい」と、誰かに言ってもらえたなら。
それは、相互理解の扉が開いたことを意味するのではないだろうか。
この時のフリーレンとフェルンが、そうであったように。
前回の記事でも紹介したが、ファンタジーを想起させるようなケルトっぽい楽曲を16曲収録した『Tokyo Fantasy Soundscape』というアルバムを作り、Spotify、Apple Music、Amazon Musicといったところで配信している。
東京の街を舞台に冒険を—といった空想の世界をイメージしている。
自分の作業用BGMとして作ったけれど、聴いてみていただけたら、嬉しいです。
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