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今年も、憂鬱な夏休みがやってくる《シロクマ文芸部》 ショートショート | ぽてぽたのよしなしごと #35

夏休み前に、片付けておきたい仕事は山積みだった。

7月は今日で終わりだが、連日残業してもやるべきことが終わらなかったという焦りでいっぱいになる。

終電まで粘る気まんまんで、パソコンのモニターの情報と、手元にある化粧品の商品サンプル、リニューアルされたパッケージや販促のパンフレットの情報を丁寧に照合・確認した。

「おまえ、眉間の皺すごいぞ。夏休み前だからって、根詰めすぎ」

同期に声をかけられるまで、隣に座られたことも気づかなかった。

「……って今、夜の9時だぞ。そっちこそ、普通に残業じゃん」

同期の顔をチラッと見るが、作業の手は止めずに聞き返した。

「僕はそろそろ、帰るよ。データの照合なんて、リモートでやれば?」

「サンプルは持ち帰り厳禁だろ。現物と照合しなきゃいけないから、これは絶対オフィスで終わらせなきゃいけないんだよ」

「ひー。そっか。直前のパッケージ変更は、痛かったねえ。ま、やるだけやったら、あとはなるようになるよ。悪いけど、お先にー」

毒にも薬にもならないような言葉を言い残し、同期は帰って行った。


* * *


私は結局、終電ギリギリまで業務を片付けた。

最終的に「あとは、家からでもなんとかなる」と、呪文のように唱えながらオフィスを出た。

ボロ雑巾のようになりながら、一人暮らしのマンションのドアを開け、やっとの思いで中に入る。

キッチン脇の狭いダイニングスペースには、食事用のテーブル兼仕事用デスクがある。

その上に、帰り道に買ってきた唐揚げ弁当と500mlの缶ビール、業務用のノートパソコンを置く。

座り心地の悪いパイプ椅子に腰を下ろし、プシュッと缶を開け、ビールを一口飲んだ。

「ふーっ」と、思わず声が漏れる。

弁当を開け、割り箸で食べ始める。

同時に、ポケットからスマホを取り出す。

SNSのアプリを開き、大して興味もない情報を見るために、画面をスクロールする。

つい仕事が気になってしまい、スマホを置いてノートパソコンを開きそうになったが、やめた。

「どうせ明日から1ヶ月間の夏休み、この狭い部屋で過ごすんだ。仕事をする時間は、いくらでもある」

私はもう一度ため息をつき、今度はニュースアプリを開いて、動画を流した。


午前0時台のニュースを、お届けします。

日付が変わり、本日8月1日から8月31日までの「夏休み」が始まりました。

災害級の酷暑対策として、期間中は限られた電力を住居や医療・介護・物流などに集中させ、商業施設やオフィス、学校は閉鎖されます。

エッセンシャルワーカー以外は皆さん、原則的にリモート勤務が義務付けられています。

お子さんがいる家庭は、各自治体によって受けられるサービスが違いますので、画面のQRコードから最新情報をお読みください。

さて、「猛暑災害から国民の生命と社会機能を守るための夏季ロックダウン」、通称「夏休み」も、今年で3回目ですね。

昨年は夏休み離婚、夏休みうつ、夏休み明けの退職者の数が過去最多を更新しました。

本日は専門家をお呼びして、今年の政府の対応についてお話を伺いたいと思います……。

「夏休み」に関するニュース




おはようございます。

きらきらストーリーは、取り扱っておりません。
でおなじみの、ぽていとぽたあとです。

「夏休み」から始まるショートショートを2本も書いてしまいましたよ。

しかも両方、逆張りしちゃいましたよ。

以下の #シロクマ文芸部 に参加しています。

  • お題:夏休み


去年の夏に、南アジアを拠点にしている方とお仕事をする機会がありました。

どう考えても現地では深夜にあたる時間帯にミーティングをすることが何度もあり、「この人の勤務時間、どうなっちゃってる?」と不思議に思っていました。

何度目かのミーティングで、その方の通常勤務時間は深夜から早朝なのだと教えてくれました。

しかもそれは特殊な勤務体系ではなく、暑さ対策として、いわゆるオフィスワーカーを多く抱える企業では、導入が進んでいるのだといいます。

「日本の夏も暑すぎるし、将来的にはそうなるのかな」と当時ぼんやり考えていたことを思い返していたら、こんな話が出来上がりましたよ。

勤務時間をずらすだけでなく、もう少し過激に、8月1ヶ月間はロックダウンする方向に広げてみました。

「夏休み離婚」「夏休みうつ」あたりは、コロナ禍の状況を思い出して入れてみましたよ。




🥔・🥔・🥔


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ぽてぽたの「よしな、仕事!」じゃないですよ。「由無し事」です。