第二話『試練のラリー ~天才が初めて壁にぶつかった日~』
第2話
カコは本来、なんでもできる女性だ。
歌を歌わせればプロ顔負け、ピアノも弾けるし、生け花も見ただけで再現してしまう。「感覚の天才」。それが彼女だった。
しかし、卓球の神様は、そんな彼女に初めて「敗北」の味を教えた。
「違う! 跳ねるな! 無駄に動くな!」
スクールの先生の怒号が飛ぶ。
カコの体には、学生時代に打ち込んだ「バレーボール」の癖が染み付いていた。ボールが来ると、つい体が反応してジャンプしてしまう。卓球に必要な「低い重心」とは真逆の動きだ。
頭ではわかっているのに、体が言うことを聞かない。
さらに追い打ちをかけるように、ある有段者からの心ない言葉や、冷ややかな視線によるイジメも受けた。
ストレスは限界を超え、ある日、彼女の体には帯状疱疹が現れた。心も体もボロボロだった。
「……もう、辞めようか?」
私がそう尋ねると、彼女は痛む体を起こして言った。
「絶対に嫌。見返してやるんだから」
彼女は、とてつもない負けず嫌いだった。
そこから、私たち夫婦の「反撃」が始まった。
私は家に卓球台を買った。
素人の私に技術は教えられない。だから私は毎晩YouTubeで世界のトップ選手の動画を研究し、それを彼女に伝えた。
「カコ、今の動き! バレーが出てる。もっと膝を柔らかく!」
「こう? これならどう!」
狭い部屋に、ピンポンの音が響き続ける。
天才がプライドを捨て、泥臭く汗を流す姿。それは何よりも美しかった。
そして1年後。
4回目となる試合、Bクラスのトーナメント。
そこにいたのは、無駄な動きを削ぎ落とし、鋭いドライブを放つカコの姿だった。
結果は――準優勝。
表彰状を手にした彼女の笑顔は、帯状疱疹の痛みも、イジメの辛さも、全てを過去のものにしていた。
「次はAクラスね」
彼女はもう、その先を見ている。
私たちのラリーは、まだ終わらない。
(つづく)
魂のラリー〜主題歌決定
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