【“応援”が人を傷つけるとき】パンチ君から見る人間心理⑰
このシリーズは、
市川市動植物園のサル山で暮らす
パンチ君を通して、
人間心理を考察する連載です。
パンチ君、
サルたち、
飼育員さん、
スタッフさん、
見学者、
そしてSNS。
サル山には、
私たち≪人間関係の縮図≫が
そして
《生きるとは?》ということが
不思議なほど映し出されています。
愛着、安心感、承認欲求、孤独、境界線――。
長年「心」を探求してきた私の視点から、
その奥にある人間心理について綴っています。
前回はこちら
**
最近ずっと考えていることがあります。
私はパンチのことも、
飼育員さんたちのことも、
本当に応援しています。
だからこそ、
ものすごく苦しい気持ちに
なることがあります。
SNSの話ばかりになりますが、
私がこのシリーズの記事を書くきっかけは、
市川市動植物園のサル山の飼育員さんたちが、
どんどん苦しそうになっていると
勝手に感じたから。
その背景として、
見ているこちら側の
モラルや敬意が欠けているのではないかと
感じたからです。
**
毎日毎日、
あちこちの媒体で、
様々な園の様子の映像が流れてきます。
中には、
明らかにモラルに欠けるような、
飼育員さんの仕事中の携帯のパスコードを
全世界に流している動画だったり、
飼育員さんの私物を
わざわざ特定して回っていたりするものも。
思い出してみて下さい。
本来はみんなが、
パンチが健やかに成長して、
群れ入りをすることを
応援していたはず
です。
なのになぜ、
こんなにも飼育員さんたちが
追いかけられるのか。
それは優しいお人柄が大きいのだと思います。
でもその素晴らしいお人柄と仕事ぶりが、
SNSの力によって失われるとしたら
どうしますか?
今日は、
SNS時代の今だからこそ起きている現象を
人間心理の視点から書いていこうと思います。
**
そもそも私たちは、
本当にパンチを見ているのでしょうか?
それとも、
パンチを通して得られる
感動や癒しなどの
“反応”を得たいのでしょうか?
そして飼育員さんたちを
1人1人の人間として見ているのでしょうか?
それとも、
何かの登場人物のように
見ているのでしょうか?
好きだから応援したい
好きだから見たい
好きだからたくさんの人に伝えたい
その気持ちが、
本来は純粋なものであったとしても
悲しいかな、
SNSを通すと大きく変わっていき、
注意が必要となります。
相手の気持ち⇨数字や反応に
すり替わりやすい
から。
仮に、
飼育員さんが疲れた表情をしていたとして、
普通なら、
「今日は大変そうだったな。お疲れ様」
で終わるところが、
SNSに投稿すると、
誰かからのいいねやコメントで反応が来る
⇓
再生数も伸びた
⇓
反応がうれしい!
⇓
もっと反応が欲しい
⇓
もっと見られる投稿は?
どうすればもっと見てもらえる?
もっともっと・・
となっていき、
いつの間にか、
「飼育員さんへの気遣い」
という視点から、
「“反応”を得るための投稿」
に変わっていく
こともある。
では、
どうしてそういうことが起きるかというと、
それは一種の
成功体験のようなものを得やすい
からだと思います。
成功体験=自分への報酬
誰かに褒められた
仲間に認められた
注目された
脳は、こういう体験が非常に嬉しいんです。
だから次もほしくなる。
今までの意図とは違い、
喜びという報酬を得ることに向けて
行動していく。
こわいのは、
ここに悪意はないということ。
むしろ、
自分は人から喜んでもらえる
よいことをしているんだ
私はパンチの応援ができてるんだ
と思ってしまうことがあるということです。
本来見るべき視点は、
飼育員さんへの
“人間としての尊厳
です。
パンチの応援に関係なく、
対象の人の“気持ち”です。
飼育員さんは、
物語の登場人物のような
架空の存在ではありません。
この世界で生きているし、
これから先も人間として生きていく人です。
傷つくこともあります。
嫌なこともあるんです。
その意思を考えてあげてください。
公式でも何度も発表しています。
(もっとしっかり職員を守ってほしいけど)
パンチが好き
パンチを応援したい
その気持ちは素晴らしいものですが、
その気持ちがあるからと言って、
飼育員さんたちが
悲しむようなことをするのは
絶対にあってはならないこと。
人としての境界線を
無視してはいけない
んです。
本来はあるはずの
遠慮や配慮、境界線が
残念ながら、
今はどんどん無くなってはいないでしょうか?
今は犯罪行為に近い気がしています。
今のようなことが続いていたら、
飼育員さんたちは
苦しくてたまらないかもしれませんよ?
万が一、
仕事ができなくなったらどうしますか?
パンチも悲しみますよ?
まだ出産も続いている中、
サル山の中も
落ち着いていない印象を受けます。
もし観客の在り方で何かがあって、
飼育員さんがサル山を
管理できなくなったとしても
今の行動が
関係ないって言えますか?
最近また、
飼育員さんにちょっかいを出そうとする
おサルさんがいるのが気になったりしてます。
一番大切にしないといけない人たちを、
悪意がないからといって
これ以上、
追い詰めるようなことは
続けて欲しくないです。
**
繰り返しますが、
人間の脳は、
誰かに認められたり、
反応をもらったり、
注目されたりすることが好き
です。
それは昔から変わらない本能です。
だから、
最初は純粋な応援だったとしても、
SNSの世界では少しずつ目的が変わってしまうことがあります。
だからこそ怖いのです。
悪意がないから。
自分では気づきにくいから。
そしていつの間にか、
目の前の人よりも、
数字や反応の方が大きく見えてしまう。
でも、
飼育員さんたちは
「今」を生きている
1人のリアルな人間
毎日悩み、
考え、
責任を背負いながら働いている
私たちと同じ1人の人間です。
今日も台風の中、
動物たちを守ってくれていると思います。
パンチはニホンザルです。
SNSは知らなくて過ごせます。
そこは明確に違うからこそ、
見る側が意識して、
好きだからこそ距離や
マナーを守る。
好きだからこそ敬意を持つ。
そんな応援の形が必要ではないか
と思うのです。
本当に大切なのは、
パンチだけでも
サル山のサルたちだけでもありません。
パンチを支え続けている人たちの存在も、
同じように大切です。
もしパンチの幸せを願うなら、
そのパンチを支えている人たちの
幸せも願いたい。
私はそんなふうに思っています。
**
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