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【その正義、誰かを壊していませんか】パンチ君から見る人間心理 #52

このシリーズは、
市川市動植物園のサル山で暮らす
パンチ君を通して、
人間心理を考察する連載です。

パンチ君、
サルたち、
飼育員さん、
スタッフさん、
見学者、
そしてSNS。

サル山には、
私たち≪人間関係の縮図≫が

そして
《生きるとは?》ということが
不思議なほど映し出されています。

愛着、安心感、承認欲求、孤独、境界線――。

長年「心」を探求してきた私の視点から、
その奥にある人間心理について綴っています。

前回はこちら


**

本当は前回の、
「画面の向こう側へ行ってみた」の記事で
書いた程度で、
それ以上はあえて触れないつもりでした。

園の方々にも、
パンチ君を大切に思っている方々にも、
嫌な気持ちになってほしくなかったからです。



ですがここ数日、

パンチ君が他のサルから
攻撃されるように見える場面が増えたことで、


飼育員さんや園に対して、

「パンチを守っていない」
「仕事をしていない」
「説明責任を果たしていない」
「寄付金がパンチのために使われていない」
など、

びっくりするような内容も含めた
強い言葉を、
SNSで目にすることが増えました。


流れてくる投稿や
コメントの内容は
あまりにも目に余る内容が続いていて、

私が現地で感じた事実も含めて、
今日は綴っていきたいと思います。

その根底には、

パンチ君を守りたいという気持ちが、
誰かを傷つける免罪符になってはいけない。

という想いがあることを
ご承知おきの上、
読んでいただけたらと思います。


**

まず正直に書くと、
現地に行った時に
動物園のサル山に着いて、
最も感じたのが、

「動物を見たくて見ているのか。
それとも“撮る対象”として
追いかけているのか?」


という疑問でした。



とにかく、
パンチのことだけ追っている。


もっと言うと、

パンチを含む、
パンチの仲間も、

「動物として見ることよりも、
“SNSで反応される映像を撮ること”が
大きな目的になっているのではないだろうか」

という感情が私の中で強く湧きました。



**

そして、
薄々はわかっていたことですが、
現場に行ってみて、

SNSで私たちが見ているものは、
現場で起きていることの
ほんの一部分でしかない


ということを
とても強く感じました。


SNSで流れてくる情報は
ごく一部の切り取られているものもあり、

その前後の流れは
現場に行かないとわからない。



例えばの例を極端に書くと、

パンチが誰かに先に
かなりの悪さをしたとして、
それを相手がダメ!という感じで
激しく噛んだとする。


SNSに上がった動画が後半部分だけなら、
私たちが見るのは、

「何もしていないパンチ君が突然追われた」

という映像になりうるのです。


現地に行って、
その前後を自分の目で見たことで、

「あれ?SNSの内容(印象)が見たものと違うな」

と感じたことが実際にありました。



誰かが嘘をついている、
という単純な話ではありません。


映像以外の、
前後にも物語がちゃんとある。

でもそれは、
映像だけでは見えてこないことがある

ということです。



映像は事実の一部を
映すことはできても、
出来事のすべてを
映すことはできない。



ここは、
見る側の私たちは
絶対に忘れてはいけないのだと思います。



**

さらにSNSには、
もう一つ特徴があります。


穏やかな映像は、
たくさんの人にみてもらいにくいということ。



でも、
「攻撃された」
「大変なことが起きた」
「かわいそう」

という情報は、
人の感情を強く動かします。



心配だから見ます。
心配だから誰かに知らせます。

そして、
それを見た人も心配して拡散します。




こうして、
一つの短い映像から、

「パンチ君は今、ひどい目に遭っている」
「飼育員さんは何もしていない」

という、

事実として
確認できない推測まで加わり、
物語がどんどん膨らんでいく

ことがあります。


SNSでは、
驚きや怒り、
不安やかわいそうという
感情を強く動かす情報ほど反応され、
広がりやすい傾向があります。



ネガティブなものであるほど拡散され、
たくさんの人が見てしまう。


**

仮にパンチ君が
一方的に攻撃されたとして。

パンチ君を心配することと、
誰かを攻撃(非難)することは、
まったく別の話です。


疑問を持つことと、
事実を確認せずに
誰かの仕事を否定することも、
まったく別ものです。




「パンチのためだから」
という理由があれば、
何を言っても許されるわけではありません。


お世話をしている人たちは人間です。
心があります。



毎日動物の命を預かりながら仕事をして、
そのうえ自分たちの仕事の
一部分だけを見た人から、



「仕事をしていない」
「パンチを守っていない」

と繰り返し言われ続けたら…。



私だったら心がもちません。



ここまで続く
それらの言葉を
受け取る側の人の心が、
どうなっているか
少し想像しませんか?

私は心を扱う人として、
そこを考えずにはいられません。


**

そしてもっと考えたいことがあります。

仮に、
パンチ君を守ろうとするあまり、
飼育員さんたちが精神的に追い詰められ、
仕事を続けることが難しくなったとしたら。



それは本当に、
パンチ君のためになるのでしょうか。


パンチ君がここまで育ってきた時間の中には、
今年の2月、3月くらいからしか見ていない
私たちには見えない
膨大な時間があるのは事実です。


今もそうだと思いますが、
夜も、
休園日も、
体調が悪い日も、
私たちがSNSを見ていない時間も。



私たちは、
そのすべてを知っている
わけではありません。



なのに、

知らない部分を想像で埋めて、
誰かを悪者にすることは
これ以上やめてほしい。



**

もちろん、

園の対応について
疑問を持ってはいけないという
話ではないです。

意見はあっていいと私は思います。


動物福祉について考えることも、
より良い環境を望むことも、
必要なことだと思います。



もしかしたら、
あの園ができたときは、
時代的にも
動物福祉的な視点で
つくられていなかったかもしれません。

それを変えたくても変えられない
財政上、人事上の問題も
あったのかもしれません。



だからと言って、

今の飼育員さんたちに
施設に付随することからの
どうしようもないことを責めるのは
あまりに酷だと感じます。



仮に、
サルたちを引き離したくても
少なくとももう一つサル山がないと
一時的には良くても解決にはならないし、
何十年という生活を続けるのは
物理的に厳しいでしょう。



そのために
サル山の改善のための
寄附を募っていましたよね。

施設は今すぐにできるものではありません。



問題提起と誹謗は違います。

質問と断罪も違います。

心配と攻撃も違います。


ここには、
大きな境界線があります。




これは、
サル山だけの話でもありません。



SNSでは毎日のように、
短い動画、
一枚の写真、
誰かの一言で、
一人の人間が
「悪者」にされることがあります。



「正義感」は、
とても大切な感情。
誰かを守ろうとする気持ちも尊いものです。




でもその、

《正義感は、
自分が誰かを傷つけていることに
気づきにくい感情でもある》

と、私は思っています。


**

パンチ君が大切なら、
パンチ君を
支えている人たちのことも
一緒に大切にしませんか?


サルたちが大切なら、

その命を
毎日預かっている人たちが、
安心して仕事のできる環境も
大切にしませんか?


私は今回現地へ行って、
そこがあのサル山には
今欠けているのではないかと感じました。



パンチ君を守ることと、
飼育員さんを守ることは、
本来、
対立することではないはずです。


どちらか一方を守るために、
もう一方を傷つけなければならない
理由なんてありません。



もしあなたが、
何か強い言葉を書き込みたくなったとき。



投稿ボタンを押す前に、
少しだけ考えてみてほしいです。

その言葉は、
本当にパンチ君の未来を
良くする言葉なのか。




そして、

その正義は、
誰かを壊すことに
繋がっていないだろうかと。



もし、
収益メインの考え方で
投稿されている方がいるのなら。


なおさら、

「その発信によって、
誰かが傷つくことはないか」

という視点を、
発信する側の責任として
持っていてほしいです。





応援するなら、

その応援によって
誰かが安心して
仕事ができるような、
そんな応援であってほしい。



パンチ君を大切に思う気持ちが、
パンチ君を大切にしてきた誰かを
傷つけるものになってしまったら、
あまりにも悲しいから。


パンチ君だけが幸せ、
私はそれを
本当の幸せだとは思いません。



パンチ君も。
他のサルたちも。
そこで働く人たちも。

みんなが安心して過ごせる
サル山であってほしい。



私が願っているのは、それだけです。


**

いつも読んでくださり
ありがとうございます。

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