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【優しさが壁になる時】パンチ君から見る人間心理㉗

このシリーズは、
市川市動植物園のサル山で暮らす
パンチ君を通して、
人間心理を考察する連載です。

パンチ君、
サルたち、
飼育員さん、
スタッフさん、
見学者、
そしてSNS。

サル山には、
私たち≪人間関係の縮図≫が

そして
《生きるとは?》ということが
不思議なほど映し出されています。

愛着、安心感、承認欲求、孤独、境界線――。

長年「心」を探求してきた私の視点から、
その奥にある人間心理について綴っています。

前回はこちら

**

二人の飼育員さんやスタッフさん方の
日々の努力が伝わってくる毎日ですが、

そんな状況を通して、
私にはパンチの群れ入りの難しさが
日増しにひしひしと
伝わってきている感覚です。


その根底にあるのが、
パンチが
「人間ぽい」
ということ。


それは見る側からすると
なんとも言えない愛着を感じるのですが、

パンチの目指すところは
「サル山への群れ入り」

人間ではない社会ということです。


ここが人が育てる
人工哺育の難しいところなんだと
つくづく感じています。


**

愛情があるほどに、
当たり前ですが、
情が入ってしまいます。


目を合わせたり、
笑みを向けたり、

私たち人間にはそんなことは
ごく当たり前の愛情表現。


ただそれは、
サル社会では真逆となり、
目を合わせたら喧嘩を売っているとみなされ、
パンチ自身の身の危険になる。
(だから飼育員さんたちは一生懸命目を合わさないようにしている)


かといって、
人間には感情はあるので、
自分が大好きな存在に
目を背け続けるということは苦しい。


人間が目を背ける
=関心がない、興味がない、あなたのことが好きではない
という表現にもつながるから。


パンチも人の手を介して育っているので、
そんな飼育員さんたちの様子を
以前とは何か違うと感じている様子もある。


それがますますしがみつきとなり、
また
飼育員さんにくっついていることが、
一番の安全な場所でもあるので、

そこを手放すことが
パンチ側もできない。


なにか攻撃的な個体が傍にいると、
パンチは自らしがみつきを強め、
またバックヤードに自ら戻ったりもする。

そこが一番安全だから。


ただ、
サル側からすると、

パンチだけがしがみついて
ご飯をバケツから直で食べていると、
反感ポイントにもなるのだろうし、
(あくまでパンチはあのサル山では一番下の存在だから)

それがさらなるパンチへの攻撃、
飼育員さんたちへの威嚇などにも
繋がっている感じは否めない。


パンチの安全は
飼育員さんたちといることが一番確実。

でも群れ入りはその逆で、
パンチを命の危機もある
非常に危険な
でも本来の場所に戻すということ。


**

私は、

人工哺育の難しさというのは、
「育てること」ではない

のだと思います。


命を救うことはできる。
情を注ぐこともできる。



でも、

その子が本来生きていく世界へ
送り出すということは、
また別の難しさがある。




人間で例えるなら、
大切に育てた子どもを、

まだ心配の気持ちを抱えたまま、
厳しい社会へ送り出すという
気持ちに少し似ているのかもしれませんが、、

そんなことを
喜んでできる人がいるんでしょうか。



パンチはまだ人間でも3歳くらいの年齢。


本当はずっと守っていたい。
危険な目にも遭わせたくない。
傷つく姿なんて見たくない。


でも、
その子がその子の人生を生きるためには、
今ここで手を離さなければならない。


愛情があるからこそ苦しい選択。



パンチと飼育員さんたちを見ていると、
「愛すること」と
「手放すこと」

安全な人間側から
厳しいサル社会へ戻す難しさを
つくづく感じます。


そんな現実の中にいて、

一番苦しいのは、
その状況を毎日向き合いながら

対処するしかない飼育員さんたち

です。


さらに、
毎日たくさんの人に見守られ、
たくさんの期待を向けられ、
たくさんのカメラも向けられ続け、
たくさんの意見も届く状況下。


それは応援の気持ちから出た言葉であっても、
現場に立つ人たちにとっては
非常に重く、
つらく感じることはたくさんあるでしょう。


そんな苦しさという重圧も
自分たちでコントロールしなければならない。


飼育員さんたちは感情をもつ「人間」です。

私たち見ている側は、
パンチのことが大好きだからこそ、

「もっと甘えさせてあげてほしい」
「まだ赤ちゃんなんだから」
「かわいそう」

そんな気持ちになることがあります。

私も
「かわいそうだな」って
感じた瞬間もありました。

でもその気持ち以上に、

飼育員さんたちの
葛藤や苦しさに
目が向くようになりました。



愛情があるからこそ手放さなければならない。
守りたいからこそ離さなければならない。



それは、

私たちが考えるよりも
想像以上に苦しいこと

なのだと思います。


**

パンチの群れ入りがどうなるかは、
本当に誰にもわかりません。

でも私は、
パンチも、
飼育員さんたちも、

その時その時の最善を尽くしている

ようにしか見えません。


見る側の私たちができることは、
一番苦しみながらも
逃げずに頑張り続けている
人たちを理解した上で、

結果を急がず、
自分の願いを押し付けるのではなく、
信頼しながら見守っていく

ことしかないのではないでしょうか。


パンチと飼育員さんたちの
頑張りを信じながら、
静かに応援し続ける。

今日も、
焦らず、
慌てず、

パンチの歩幅で進んでいく未来を
見守っていきたいと思います。


**
いつも読んでくださり
ありがとうございます。

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