素浪人わたり放浪奇(六) 雨葉村の妖怪寺〜役者絵と、水と油の恋心【三の巻】|リライト版
三の巻 梟森雨葉村へ
雨葉村へは、頼めば駄賃なしで荷物を運んでくれるらしかったが、俺も三吉も背負い籠と刀しか持ち物はねぇ。明朝、俺たちは身一つで雨葉村に向かった。
俺と三吉は梟森の薄暗い山道を歩いていた。山道といっても狭い獣道。初夏の生い茂る草をかき分けて俺たちは前に進んだ。
「梟森からは、いつも変な鳴き声が聞こえるっていう噂だよ」
後ろを歩いていた三吉が鬱蒼とした木々を見上げた。俺は歩調を変えずに、
「森の中には魑魅魍魎がいるからな。獣やら虫やら、妖怪ももちろんいるだろうよ」
「怖い。怖い。怖い」
三吉は怖がって早足で俺を追い越した。
「早足で歩くなよ。疲れちまうぜ」
「大丈夫だよ。少し開けたところまで行って野宿しよう。わたり」
「それに越したことはねぇ」
森の奥からは鳥の声とも何とも言えない鳴き声が聞こえていた。
雨葉村の宿についたのは、日も暮れた頃だった。宿の手配をするやいなや、三吉は遊戯場に行こうと言い出した。
「なぁ、三吉よ。ここに来るまで三日間歩き詰めて、ずっと野宿だったじゃねぇか。今晩は風呂に入って一晩休んでから、明日遊戯場に行こうぜ」
「わたりは休んでてくれ。俺だけで行ってくる」
三吉は宿の玄関で草履の鼻緒の締まりを直した。草履は真っ黒に汚れてちまってる。一度言い出したらきかないやつだ。
「わかった、三吉。俺も行く。ちょっくら雪隠に行って来るから待っとけよ」
「うん!わかった!」
三吉は満面の笑みで答えた。
雪隠は暗い土間を抜けたところにあった。
「まったく、わらしか。あいつは」
用を足していると若い男が二人入ってきた。この宿に長く滞在しているようだった。
「昨日村の西のほうで若い男の死体が転がっていたらしい。最近やたら若い男ばかりが狙われる沙汰が続くよな」
「顔は真っ青なのに恍惚としてるって聞いたぜ。しかも何で死んだのかわからないとか」
そのときはよくある話だと思い、雪隠を出て三吉のもとへ向かった。
昨年、創作大賞エンタメ原作部門に応募した作品をリライトしてお届けしています。
別アカウントにありましたが、整理するためにこちらに引っ越しすることにしました。
※名称を一部変更しました(2026年7月9日)
