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素浪人わたり放浪奇(十) 雨葉村の妖怪寺〜役者絵と、水と油の恋心【七の巻】|リライト版

七の巻 寺子屋での稽古

 日中俺たちが泊まっている宿の雑用をすることで、日当と宿代を稼ぐことになった。そして夜になると細工箱の使い方を学びに紫陽花寺へ行く。新しい生活が始まった。

「おい、三吉!風呂場の掃除は終わったか?風呂釜に薪をくべるぞ」
 俺が風呂の格子窓越しに三吉に話しかけた。
「ああ、今終わったとこだ。風呂桶に水も張ったよ」
 俺は割った薪を隙間を作りながら釜に並べる。台所から火種をもらって、薪の間にいらなくなったザラ紙を挟み込み火をつけた。ゴウゴウと燃える火が見えると俺は風呂場の奥に向かって叫んだ。
「あとは仲居に頼んで、紫陽花寺に行こう」
「がってんだ」
三吉の元気な声が返ってきた。

 俺たちが紫陽花寺につくと、シャオがもう席についていた。シャオは昼間の稽古を受けていたが、昼は浮世絵師の修行もあり、夜の稽古のほうが好都合だということで、一緒に稽古を受けることになったのだ。シャオは日本語も習熟していないために、稽古が遅れていたらしかった。
 まずは、細工箱の硝子窓を使って、遠くの相手と話をする方法を教わった。これから文字の書き方、算術の仕方を習い、最後に絵を描く技を教わる段取りだ。
 稽古と言いつつ、俺たちはお千代の話になることが多かった。なんせ玉庵先生が古参のお千代贔屓なので、稽古は脱線してばかりだ。
 玉庵先生はいつも猫のたまを抱いて稽古をつけていた。片時も猫と離れたくない様子だった。相当可愛がっていたんだろう。
 稽古がない日には、俺と三吉、先生とシャオの四人で一緒に遊戯場に行って、お千代の舞台を見た。その帰りに居酒屋に寄って、あれやこれやとお千代の話をするのがお決まりだった。

「三吉、遅くなったけど、お千代さんの絵を描いてキタヨ。これアゲマス」稽古が終わってから、シャオは和紙に描いたお千代の墨絵を三吉に渡した。「えー、ありがとう!!シャオ、絵の修行と細工箱の稽古で忙しいのに、ありがとう!すっごく嬉しいよ。しかも、すごく似てる」
三吉はたいそう喜んで、その絵を俺にも見せた。
「ウウン、お千代さんのこと、ダイスキだから楽しかったヨ。三吉はイロイロこの国の言葉教えてクレタ。こちらこそアリガトウ」
「素敵なご縁ですね」
お糸が寺子屋に現れた。俺はお糸が来ると妙に緊張した。
「今日は先生の好きな天ぷらをあげたんですよ。よろしかったら、みなさんご一緒にいかがですか?」
「やった〜!!食べます!!」
三吉が即答すると、俺は黙って三吉の着物の裾を引っ張った。




第11話  八の巻 贔屓の妙案 へ続く



 昨年、創作大賞エンタメ原作部門に応募した作品をリライトしてお届けしています。
 別アカウントにありましたが、整理するためにこちらに引っ越しすることにしました。
※名称の一部を変更しました。

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