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マタギと大国主命


HUNTER X HUNTER という文字列から言葉として思い浮かぶのは「ハンター」という言葉そのもので、最近は頻繁に人里に出没するクマ対策の最前線で名前を見るハンターがなじみ深い存在になっています。

このハンターは専門職業ではなく、猟銃の使用資格を持つボランティアとも言えますが、日本には古くから山野のシカやクマなどを狩猟するマタギと呼ばれる人々がいました。その数は年々減少していると言いますが、そのような狩猟を生活とする人々のルーツは、平安時代にまでさかのぼるというのが通説です。

日本は古代から、それも人類がアフリカを起点として世界中に移動を始めた5万年前から、現在の日本列島に移住した人々によって人種構成されてきました。磨製石器という、それまでの石の単純な道具としての使用から画期的に狩猟などの生活のために工夫変形された道具として、人々が利用し始めたのは日本に住む人々が世界で最初で、同時にこの磨製石器の時代が土器の使用時期に継続したのもまた日本独自の古代文化の時期でした。それが1万5千年ほども前の縄文時代の草創期だったのです。

そのような古い時代からも、ひっきりなしにさまざまな種族が渡来する中で、大きな混乱もなく人々は住みわけを行い、穏やかな混血が継続したようですが、マタギと呼ばれる人々がいつ日本にやってきたのかは、現代の進んだ遺伝子学によって判断できるすべもなく、ただ想像によるしかありません。ルーツとされる平安時代に大陸から移住してきたのか、それまでのいつかの時代に、居住範囲とされる東北地方を中心とする日本の北東部に流入したのか、確固たる資料があるはずもないのです。

海音寺潮五郎は、平将門の時代に、日本の山岳地帯を中心に独自の芸能を披露した漂流の民と考えられる、傀儡(くぐつ)と呼ばれる民族集団の存在したことをその著の中で記していますが、かれら傀儡がどこからやってきたかはわかっておらず、海音寺自身はインドなどにルーツを持つ種族ではないかと想像したようです。

平安時代にそのような、普通の日本人とは異なる生活習慣を持つ集団が存在し、今に知られていることは、山岳地域での種族の住みわけが時代を通じて行われ、その過程の顕著な時代が平安時代、つまりは武士の台頭期であったのは偶然性以外の何かがあったのかもしれません。

大阪の山岳地帯ともいえる南東部の河内地方は、土豪の楠木氏の本拠地でもありましたが、かれらもまた山岳地域の特別の種族であったかもしれない可能性を、独自の歴史認識を持つ海音寺が記していたのも、考えさせられることがらであるように思えます。それは忍者にもつながるかもしれないことを、やはり海音寺は述べているのですが、日本の民族多様性の謎を記しているとも言えるのでしょう。

民俗学者の柳田國男が、自身の近い先祖から聞いた話として、その居住場所も定かではない、山に住む特別な集団のことを著に記していますが、サンカと呼ばれるこの謎の民もまた、中世の、いや近代にも時期的に及ぶ異民族かもしれませんが、日本人はもともと長い時間の中で大陸や南方の島々から移動してきた人種の集合体で、互いに異民族として渡来し、37万平方キロメートルの列島の中で住みわけを行い今に至っている民族集団ですから、まさにJFケネディがアメリカ合衆国を「移民の国」と称したと同じような、移民国家でもあるわけです。

そのため例えば、沖縄に住む人々と、アイヌ人と、それらの中間地帯でもある本州をはじめとする列島内の島々に住む本州人とが、遺伝学的にも類似性があるのは当然のことと言えるでしょう。このような、大別して三種類の人種を考えるだけでも、その歴史的経緯は古代からの人々の移住の流れで形成されるものですから、さらに細かな種族分類を行うのは、科学的にも困難な分析を要することでもあり、遺伝子解析以外の学問的考察、あるいはそれ以上の仮定的推察が必要なことは言うまでもありません。

ともかくも、野生生物の狩猟を生業とするマタギが、日本人の一つの構成種族として、現代では周囲の人々と何ら変わりのない日本国民としての基本的な生活を営んでもいるということに、不思議は感じられないのです。

ところでかれらの生活を紹介する動画を見て、私が最も惹かれたのは、熊を仕留めるのは神から与えられたことがらだとしている点で、家の中の神棚に祈る姿のシーンで、書き記された神の名が大国主命(おおくにぬしのみこと)であったことでした。国津神(くにつがみ)の名をそこに見て、マタギは平安時代に突然移住してきた種族ではなく、古代から長い時間を経て日本に溶け込んできた人々であることを思い描いたのでした。

出雲に向かう特急「やくも」からの車窓風景

さて彼らのことがらを記すのに、ずいぶん長い内容を示してきましたが、このような文章を書こうとした最初のひらめきは、文頭にも書いたHUNTER X HUNTER という冨樫義博によるマンガ作品によるものです。この作品は狩猟ハンターをテーマにしたものではありませんが、特殊超能力を身につけた架空の人々の代表としての主人公ゴン・フリークスやその友人たち、そしてゴンの父親であるジン・フリークスの冒険譚でもあります。彼らの総称がハンターであり、ジンは古代遺跡の発掘と保存を専門とするハンターであるということもまた、私がこの作品を愛読する理由でもあります。

きょうはこのハンターという言葉を基軸として、日本の古代の歴史と種族のことがらを、概論の一部として書いたわけですが、日本人の歴史そのものだけでなく、古代遺跡のことや、神々と人々というテーマの記述もまた、何かのきっかけをもとにして、書きたいと考えています。

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