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インコる、グリる、シンコる、マロるとは?(続・外来語動詞化ターム20選)(面白医学用語集③)


はじめに

前回の記事において、ステる、デブる、ブラる、タキる、といった、医療現場でしばしば用いられる「外来語動詞化ターム」を20語紹介しました。

今回はその続編で、前回ほどメジャーではないですが、一部医療機関などで使用されているユニークな外来語動詞化スラングを更に20語取り上げます。
 
なお、今回も、プロンプトとして単に「「インコる、グリる、シンコる、マロるとは?」というタイトルのブログ記事に合致する画像を作成してほしい」と、詳細条件を一切付与せずに生成AI(Nano Banana2)に2回作業発注したところ、2回とも、次のようなスレチなイメージ画像を生成してくれました (~_~;) 各用語について解説情報を付加して再作成を依頼したところ、こちらの意図をくんで作成されたのが冒頭の画像です。

スレチなAI生成画像その1
スレチなAI生成画像その2

①インコる

愛嬌ある小鳥「インコ」のように、主として若い女性が可愛い仕草をとることを意味する用語、ではありません。医療の世界では、2系統のローカル用語として用いられていますが、いずれにしても、「インコ」のイメージに似つかわしくない病状です。(-_-;)
 
1つ目は、失禁(おもらし)を意味する英語「Incontinence(インコンチネンス)」に由来し、「失禁する」ことを意味します。
 
2つ目は、救急(ER)や集中治療室(ICU)の世界で用いられ、多臓器不全(腎不全や肝不全など、複数の臓器が同時に機能しなくなること)の状態になることを意味します。英語で多臓器不全を意味する「incompetence of multiple organs(インコンペテンス・オブ・マルチプル・オーガンズ)」の頭文字「INCO」に由来します。

②グリる

おいしいグリルを食べているときに、話題にするのはご法度な用語です。というのも、医療用語としては、グリセリン浣腸(グリ浣)することを意味するからです。グリ浣のことを英語で「glycerin enema(グリセリン エネマ)」ということに由来しますが、頭文字をとって「GE」、あるいは「エネマ」と称されることもあります。「Gさん、数日間便通無いので、グリッといて」なんて使い方で、医師が看護師に指示します。

③シンコる

ちょっと危ない方向に向かっていますが、チ○コをシコる(自慰行為をする)ことではありません。失神(一時的な脳血流の低下によって、一時的に意識を失う状態)を意味する英語「syncope(シンコープ)」に由来し、失神することと「シンコる」と俗称します。「最近、シンコる系のAV見てシ○る輩が多いみたいですね」なんてこと書いたら、レッドカード、一発退場ですね ( ̄。 ̄;)

④マロる

やんごとない貴族坊やが、「マロ(麻呂)はマロンケーキやマシュマロが好きじゃ」とオヤツをほおばっている様子が連想される用語です。大量飲酒後のリバースなどにより、何度も強く吐くことで、食道と胃の境目付近の粘膜が裂けて出血することを、「マロリー・ワイス症候群(Mallory-Weiss syndrome)」といいますが、この病態により吐血することを「マロる」と表現する病院があります。

⑤ ディスる

ディスるというと、「respect(尊敬する)」に「dis(否定の意味を持つ接頭語)」がついた「disrespect」由来の造語として、すっかり定着していますが、医療の世界では、『相手を侮辱する・軽蔑する・ばかにする』こととは全く別の文脈で、「ディスる」の語が用いられることがあります(実際に使用されるのは極めてまれなローカル用法ですが)。
 
機能が低下していること、機能不全のことを英語で「Dysfunction(ディスファンクション)」といいますが、実際、これに由来して医師が「ディス」とか「ディスる」といった使い方をしている例を耳にしたことがあります。
 
具体的には、ある泌尿器科医が、勃起不全(Erectile dysfunction、いわゆるインポテンツ)のことを指して用いていました。以前はEDの略称を用いていたようですが、EDの語がすっかりメジャーになったことから、代替隠語として「ディス」と表現しているとのことでした。「ご無沙汰」している夫婦のことを「レス」というのと同じ感じです。相手を侮辱するスラングであるところのディスるという用法が定着するよりも以前のことでしたが、今だっら、勃起不全患者への侮辱表現ですね。

⑥ ハイポる

日常表現としては、エネルギッシュで元気・活発なことを「ハイパー」といい、その逆に、不活発でやる気のない人物や、活力の低く淀んだ企業や組織のことを「ハイポ」と称されますね。医療関係者の間でも、勤務時間や当直が少なく、比較的ゆとりを持って働ける病院のことを「ハイポ病院」と呼んぶことがあります。
 
一方で、検査値が低下して、患者の様態が悪化することを「ハイポる」と表現する医師もいます。ただ、医療機関や医師によって、この言葉を用いる病態が微妙に異なっているので、注意を要します。
 
糖尿病専門医が「ハイポる」と言っているなら、低血糖「Hypoglycemia」のこと、循環器科医なら低血圧「Hypotension」だと分かりやすいですが、人によっては、脱水「Hypovolemia」や低酸素状態「Hypoxia」に陥ることを「ハイポる」と称することもあるので、混乱を来します。

⑦ ボスる

白い巨塔のラスボスが院内で幅を利かすこと、ではありません。心停止状態の患者の蘇生のために、「ボスミン(Bosmin)」という商品名の医薬品(一般名はエピネフリン)を投与する場合に用いられる用語です。

⑧ ボミる

嘔吐することを英語で、「Vomiting(ヴォミッティング)」といいます。これを短縮して、嘔吐することを「ボミる」と表現する病院があります。何度もボミっていると、マロることがあります。

⑨ へマテる

吐血(胃や食道から血を吐くこと)のことを英語で「ヘマテメシス(Hematemesis)」といいます。これを短縮して、吐血することを「へマテる」と表現する病院があります。救急外来や消化器内科などで「〇〇さん、いまヘマってます!」のように緊急の報告で使われます。

⑩ ゼプる

体の中の感染症(肺炎や尿路感染など)が悪化し、細菌やウイルスが全身に悪影響を及ぼして、複数の臓器が正常に働かなくなってしまった危険な状態を「敗血症」といいますが、敗血症を発症することを「ゼプる」と言います。敗血症を意味する英語・ドイツ語での「Sepsis(セプシス / ゼプシス)」に由来します。 

⑪ ラプる

患者が大動脈瘤破裂(Aortic rupture)や心破裂、脾臓破裂など、臓器が破裂する致死的な病態に陥った緊迫した状況で「ラプる」と表現されることがあります。「破裂」を意味する英語「rupture(ラプチャー)」に由来します。
 
ちなみに、敬虔なキリスト教徒だとラプチャーと聞くと、世界の終わりに天に引き上げられる現象である「携挙(けいきょ)」を連想するかも知れませんが、こちらはruptureではなくraptureです。 

⑫ メタる

金属メタルやメタボとは全く無関係で、がん細胞が他の臓器に転移することを意味します。英語で「転移」を意味する「Metastasis(メタスターシス)」が語源です。ちなみに医療現場では、肺への転移を「肺メタ」、骨への転移を「骨メタ」と呼称しますが、がんが全身のあちこちに多数転移してしまっている深刻な状態を「メタメタ」と言うことがあります。

⑬ レチる

美容業界では、「レチノール」成分と取り入れたスキンケアのことを「レチる」と呼ばれています。また、鉄道オタク界隈では、車掌(列車長)のことをレチと呼ぶそうで、車掌さんごっこすることが「レチる」だとか。
 
 一方で、病院界隈では、いったん回復した病気が再発してしまうことを「レチる」と表現します。「再発」を意味するドイツ語「Rezidiv(レチディーフ)」に由来します。

⑭ タピる

タピオカドリンクを飲むことではありません。日本語では「叩打法(こうだほう)」とも呼ばれますが、「Tapping(タッピング)」といって、患者さんの背中や胸をトントン叩いて、気管支の奥にへばりついている粘り気のある痰を剥ぎ取る医療行為を、「タピる」と呼ぶことがあります。

⑮ タプる

お腹の脂肪がタプタプしている様子が頭に浮かびますが、体の中に溜まった水分(腹水や胸水、関節水など)を、注射針や特殊な細い管(カテーテル)で抜く(穿刺する)ことを「タプる」と表現することがあります。穿刺を意味する英語「tap(タップ)」に由来します。

⑯ ロコる

ハワイのソウルフード「ロコモコ」は、「地元の人(ロコ)が好んで食べる」ことから名付けられたと言われていますが、ロコモコを食べることではありません。加齢や運動不足などが原因で、骨、関節、筋肉などの「運動器」が衰え、立つ・歩くといった移動能力が低下した状態を整形外科領域で「Locomotive Syndrome(ロコモティブ・シンドローム)」と呼ばれます。ロコモと略称されますが、「ロコモの状態になる」あるいは「ロコモの予防・対策をする」ことの意味で「ロコる」の語が使用されています。

⑰ ギブる

「もうこの患者の治療はお手上げ、ギブアップ」という文脈で用いられる語ではありません。これも整形外科領域の用語ですが、骨折などの治療のために、ギプスを巻いて固定することを「ギブる」と呼ぶことがあります。ドイ
ツ語で「石膏」を意味する「Gips(ギプス)」に由来します。

⑱ アネる

麻酔をかけること、あるいは麻酔がかかっていることを、「アネる」と表現するがあります。麻酔を意味する英語「Anesthesia(アネステジア)」に由来します。「アネる」の反対で「麻酔から覚める」ことを、「アニる」とは言いません。(ちなみにアニサキスに感染していることを、「アニる」と呼ぶこともあるようです)

⑲ アグる

血管が破れて出血すると、血液中の「血小板」が傷口に集まり、塊をつくって傷口を塞ぎます。この一連のプロセスが血小板凝集で、英語で「Aggregation(アグリゲーション )」と言います。「アグる」とは血小板が凝集することを意味します。

⑳ コアグる

出血後に血小板が凝集し、さらにフィブリンなどの成分により強固に傷口が固まることを凝固(二次止血)といい、英語で「coagulation(コアギュレーション)」と呼ばれます。「コアグる」は血液が凝固することを意味します。


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