「大人こそ絵本を読もう!」に共感。
先日読んだ『きょうは、おおかみ』の書評をかかれていた、柳田邦男氏が書かれた本を読んで。
絵本作家いせひでこ氏の旦那様であり、災害や事故についての執筆をされているノンフィクション作家であるのは何となく知っていたが、絵本の普及活動もされていた。
本書は150冊もの絵本を解説・紹介されている書籍。看護専門誌『看護管理』の2014年4月号から2019年9月号の掲載分から編集・再構成したもの。
近年出版された絵本紹介が多いのかなと、図書館で借りてきた。
絵本と出会い、何かが変わっていくかもしれない…。
こころが何かを求めているとき、悲しみのなかにいるとき、絵本を開いてみたい。一五〇冊ほどの絵本を解説しながら、その魅力を綴る。
著者:柳田邦男
発行所:岩波書店(2020年)
大人こそ絵本を
昨年子どもの本の専門店『クレヨンハウス』の落合恵子氏の著書を読んで、良書をたくさん知ることが出来た。その時改めて私が絵本を読むわけも考えてみた。
大人にとっても可愛い優しい絵やことばで癒されたり、勇気や励まし・愛を感じたりすることが絵本を読む理由だと思うが、私は気づきを得られることに喜びを感じるのが理由。
絵本で自分や他人を理解したり、悩んでいることに対してのヒントを得られたり、子どもが読むため以上の奥深さを感じているから。
そしてそんな絵本の良さが広がるために微力ながら何かできることがないか模索している。読書記録を書くのもその一つ。
なので、著者が20年以上も呼びかけている
「大人こそ絵本を」
「絵本は人生に三度(幼少期、子育て期、中高年期)」
「大人の気づき、子どものこころの発達」
のフレーズは、
私にストレートに響き共感できるものだった。
著者が文学講演会で絵本作家あべ弘士さんを講師として招いた時のこと。
考えてみれば、絵本の一作一作は想像力豊かな絵本作家によって創作された、独特のジャンルの作品であり、同時に読者もそれぞれに想像力を刺激され物語の世界を深める作用を受けるこれぞ文学作品あるいは哲学的思考を促す作品だと言える。かねて私は絵本をそうとらえ、楽しんできたのだが、あべさんの講演を聞いてその思いを強くした。
光より速い人間の想像力より
そんな絵本は、書き手と読み手の想像力から出来ていると述べられていて納得。
大人が読めば気づきとなり、幼少期に読めば経験とこころの発達に繋がる。まったく良い事づくめではないか。
50歳からは、6歳児感性を養う
『ムーミン童話』のトーベ・ヤンソンや、『くまのプーさん童話』のA・A・ミルンとE・H・シェパードなど、語り継がれる優れた児童文学作家たちは、6歳児くらいまでの感性をそのまま失わずに持ち続けていると著者は述べる。
六歳児くらいまでの感性とは、どういうものなのか。
それは、小学校に入って受ける教育のなかで身につけていく知識や理屈などが前頭葉で支配的になる前のこころの動きだ。
五〇歳からの六歳児感性の再生法より
確かに日本でも語り継がれる絵本作家は、大人なのに子どもの心理を的確に捉えて絵本にされている。
そこには素朴で、純粋無垢、可愛いいたずら心などがある。
ムーミンやプーさん、おとぎ話の世界に入ると、懐かしい忘れていた心を一瞬でも取り戻すことが出来るのだ。
私たち大人は世の中のルールに従うために現実の日々の忙しさのために、それらを忘れてしまっているといえる。便利で快適な暮らしのために、時間を惜しんで必死に頑張ってもいる。それが本当にいいのかどうかは…。
でも子どもたちが巣立ち時間に余裕が出来る中高年期こそ、毎日20分程絵本や童話を読むライフスタイルに移行してはと著者は提案されている。
楽しい老後、ニコニコじいさんやばあさんになるよう、ここでも絵本が一役買ってくれる気がする。
メッセージ性のある作品で
人生やこころに関する本はたくさんある。だが、もうひとつ、絵本があることに気づいてほしい。(中略)絵本は子どもが読んで理解できるだけでなく、大人が自らの人生経験やこころにかかえている問題を重ねつつ、じっくり読むと、小説などとは違う独特の深い味わいがあることがわかってくるものだ。(中略)人生やいのちやこころにかかわる問いかけに対して、やわらかく解答のヒントを示す作品が多彩に創作される時代になっているのだ。
あとがきより
著者は大人が絵本を読むことに対して、あとがきでこう伝えている。
今回調べて知ったことだが、著者は子ども時代に戦争、前妻やその家族の辛く悲しい出来事を多々経験されている。戦争や災害、いのちや心についてのテーマを仕事とされていたり、その普及に取り組んでおられるのにも納得がいった。
人生経験を積んでいてじっくり読むことが出来る、だから「大人こそ絵本を」なのだ。
当事者が経験のない人に理解を求めるのは意味のないことなのかというと、決してそうではない。大事なことは、未経験者が当事者と同じレベルの感情を抱くことではなく、当事者のつらさや悲しみの一〇分の一でも理解しようとするこころを持つことであり、当事者のために何かできることはないかと寄り添う気持ちを持つことだと、私は思っている。
戦争や災害をどう伝えるかより
戦争・災害・事故・障害・貧困。
そういう観点で作られた絵本が、本書でたくさん紹介されている。楽しくて癒される絵本とは違った、深いメッセージ性のある絵本。
一見目をそらせたくなるような繊細ででも後の子どもたちにも伝えたい想いを描いた絵本を本書で見つけると共に、私は今まであまり読んでこなかったなと思い、早速読みたいリストにタイトルを連ねた。写真絵本もその一つだ。
これから少しずつ、じっくり考えながら読みたいと思う。
絵本を深く読むこと
こころのなかにかかえこむ苦しみ、悲しみ、恨み、怒り、自己否定などの葛藤をどうとらえ、どう整理したらよいのか。そういった様々な困難や困惑の坩堝に投げこまれたとき、ふと手にした絵本あるいは童話から、こころのなかを整理するヒントをつかんだり、固くなっていた考え方から解放されたりすることがある。絵本や童話には、そういう不思議な”魔力”があるのだ。
童話という語り口の深い味わいより
あまりに苦しみが深ければ、専門家や専門書に頼る場合がほとんどだろう。でも本書を読んでいると、世に出ている絵本・児童書からも自分が変わるきっかけになる作品がたくさんあるのだと思う。
本書で、大人が絵本を読むことの魅力を存分味わうことが出来た。
今後紹介された絵本を読んだ時に感じられるだろう気づきも、また楽しみ。何よりその表現される感性に私の心も刺激されるだろう。
絵本を深く読むことがますます楽しみになった。
これからも絵本の記録をしていこうと思う。
さぁ、絵本読もう。
