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第9回:開業資金だけでは足りません!—自己資金と借入の考え方

CREPRO株式会社の石井義友です。

前回は、「営業利益」と、実際に手元に残る「手残り」は違う、という話をしました。今日は、その手残りを生み出すための「元手」——つまり、お金の準備について、お話しします。

加盟を考えるとき、多くの方が、ここで悩みます。「自己資金は、いくら用意すればいいのか」「借入は、どこまでしていいのか」。とても大切な、そして、つまずきやすいところです。

はじめに、ひとつ。お金の準備に、誰にでも当てはまる「たったひとつの正解」は、ありません。私自身、これまで多くの加盟検討者の事業計画書づくりや、融資のサポートをしてきましたし、弊社も何度か借入をしています。そのうえで申し上げますが、必要な額も、借り方も、人それぞれ、会社それぞれの事情で、大きく変わります。ですから今日お伝えするのは、金額そのものより「考え方」です。具体的な資金計画は、金融機関や税理士などの窓口にも、ぜひ相談してみてください。

借入は、「悪」ではありません

まず、いちばん大事な前提から。

「借金は、怖い。できれば、したくない」。そう感じる方は、多いと思います。その慎重さ自体は、とても大切です。

ただ、フランチャイズに関して言えば、借入そのものを、頭から「悪いもの、怖いもの」と決めつける必要はありません。

第2回で、フランチャイズは「強力なレバレッジ(テコ)」だ、という話をしました。借入も、同じテコです。自己資金だけでは届かない規模の事業を、借りた力で立ち上げる。うまくかみ合えば、ぐっと早く、大きく前に進めます。

そもそも、事業計画を見た金融機関が「貸してもよい」と判断してくれること自体が、その計画に一定の見込みがある、という手応えのひとつになります。逆に、融資を断られたり、希望額を大幅に減らされたりするのであれば——それは、まだ準備が足りないか、いまはタイミングではないか、という大切なサインかもしれません。金融機関の判断は、自分の計画を映す、ひとつの鏡でもあるのです。

ですから、問うべきは「借りるか、借りないか」ではありません。**「どう借りるか」、そして「どんな足場の上で借りるか」**です。

けれど、自己資金が薄いと、テコは逆に効きます

テコには、もう一つの顔がある——これも、第2回でお伝えしたとおりです。

自己資金がほとんどなく、開業資金の大半を借入でまかなった場合。事業が計画どおりに進めば、問題はありません。けれど、もし、立ち上がりが想定より遅れたら。売上が、思ったほど伸びなかったら。

そのとき、毎月の返済が、重くのしかかってきます。返済額は、売上が良かろうが悪かろうが、一定です。自己資金という「クッション」が薄いと、この重みを受け止めきれず、いちばん踏ん張りたい時期に、資金繰りが行き詰まってしまうのです。

第5回で、私が加盟をお断りしてきた例の話をしました。そのひとつが、まさにこれでした。自己資金に余裕がなく、開業してから黒字になるまでの運転資金や、その間の生活資金まで、考えが及んでいない方。「いま少し準備を整えてから」とお伝えしてきたのは、このテコの怖さを、知っていたからです。

「開業資金」だけでは、足りません

ここが、今日いちばんお伝えしたいことです。

加盟にあたって必要なお金を、多くの方は「開業資金」だけで考えてしまいます。本部が示す初期投資の表——加盟金、保証金、物件の取得費、内装、設備、最初の仕入れ。たしかに、これらは大きな金額です。

でも、必要なお金は、これだけではありません。本当は、三つの種類のお金が要ります。

ひとつ目は、開業資金。 いま挙げた、開業のために最初に出ていくお金です。

ふたつ目は、運転資金。 開業してから、事業が黒字になるまでのあいだ、毎月の不足を埋めるためのお金です。お店は、開けたその日から黒字になるわけではありません。黒字化までに、数か月、ときには年単位の時間がかかることもあります。その間の赤字や、入金より先に出ていく支払いを、この運転資金で支えます。

みっつ目は、生活防衛資金。 あなたと、ご家族の、生活費です。事業から十分な手残りが出るようになるまで、あなたの暮らしは、事業とは別に、この蓄えで支える必要があります。

開業資金しか見ていないと、開店はできても、その後の「いちばん苦しい時期」を越えられません。第4回でお話しした「モデル収支に載っていない費用」、第8回でお話しした「手残り」——これらを踏まえると、運転資金と生活防衛資金が、いかに大切かが、見えてくるはずです。

いくら準備し、いくらまで借りるか

では、具体的に、いくら準備し、いくらまで借りればいいのか。

正直に申し上げると、ここに、誰にでも当てはまる「正解の数字」は、ありません。業態によっても、事業の規模によっても、変わります。ですから、金額そのものより、「考え方の順番」を、お伝えします。

まず、運転資金と生活防衛資金という「クッション」を、自己資金で確保すること。ここを借入に頼ると、足場のないままテコをきかせることになります。土台は、自分の資金で固める。これが基本です。

そのうえで、開業資金の一部を、借入でまかなう。このとき大切なのが、返済を「手残り」で考えることです。第8回でお話ししたとおり、返済は、税金を払ったあとの手残りから出していきます。しかも、返済額は毎月一定です。ですから、返済額は、調子のいい月ではなく、「売上が落ち込んだ、苦しい月でも、無理なく払える水準か」で考えてください。

自己資金がまったくないまま、全額を借入でまかなう——これは、クッションのない状態で逆レバレッジを正面から受けることになり、できれば避けたいところです。借入は、前向きに活用していい。ただし、足場を固めたうえで、手残りで無理なく返せる範囲に。ここが、勘どころです。

お金の「色」を、分けておく

最後に、もうひとつ。

事業のお金、生活のお金、そして「いざというとき」のお金。この三つを、最初から、はっきり分けておいてください。できれば、口座も分けておくとよいと思います。

なぜか。事業のお金と生活のお金が混ざっていると、事業が苦しくなったとき、気づかないうちに、生活費まで事業に注ぎ込んでしまうからです。そして、いちばん守るべき家族の暮らしと、再び立ち上がるための余力まで、削ってしまう。

これは、第5回でお話しした「やめる」という選択とも、つながっています。生活と再起の余力——いわば「退路」——を、最初に確保しておく。退路があるからこそ、いざというとき、冷静に「ここで一度退こう」と判断できます。退路がないと、引くに引けず、傷を深めてしまうのです。

お金を分けておくことは、最良のときのためではなく、最悪のときのための備えです。そして、その備えがある人ほど、かえって落ち着いて、前に進めるものなのです。

足場を固めてから、テコをきかせる

今日の話を、ひと言でまとめます。

借入は、強力なテコです。怖がって、頭から避ける必要はありません。けれど、テコをきかせる前に、足場を固めること。開業資金だけでなく、運転資金と、生活防衛資金。この三つを見据えて、自分の資金で土台をつくったうえで、無理のない借入を重ねる。

足場を固めてから、テコをきかせる。その順番を守れる人が、いちばん長く、戦えます。

次回は、いよいよ、この連載で伝えてきたことを、最後に束ねたいと思います。本部を見極め、数字を読み、契約を理解し、お金を備える——そのすべてを踏まえて、加盟を決める前の最後に、自分自身へ問いかけてほしいことを、お話しします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この連載では、フランチャイズ加盟を検討する方に向けて、本部の見極め方や、契約・数字の読み方など、「加盟する前に知っておいてほしいこと」を、一つずつお伝えしています。私の自己紹介と、発信を始めた理由は、こちらの記事に書いています。

より詳しく学びたい方は、このnoteの元となっている「フランチャイズ加盟の羅針盤」もご一読頂けると幸いです。

加盟を検討しているけれど、誰にも相談できずに迷っている。そうした方は、コメントやお問い合わせから、お気軽にご連絡ください。

CREPRO株式会社は、フランチャイズ本部の構築支援と、加盟検討者に向けた情報発信を行っています。社名のCREPROは「Create Prosperity(繁栄をもたらす)」に由来します。

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