【風の記憶】雨の中へ
―花の匂いを連れた少女は、
雨の向こうへ駆けていった。
滴り落ちる雨の中、
紫陽花が乱舞する陰から
少女が走り出た。
水たまりに
ピンクの小さな靴を
弾ませて
飛び出した。
ぴちゃ
水が跳ねる。
雨の音が続いている。
傘をさしていても肌を打つ。
両手を振りながら
駆けていく少女。
花の匂いを連れていく。
背中が弾んでいる。
黄色いワンピース。
その背中を目で追い続ける。
やがて、
雨の中へ消えた。
雨の匂いと花の匂いが
混じり合う。
紫陽花が
小さな風に
大きく揺れている。
