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【色で読む東京】浅草の二つの赤。魔除けの「朱」に守られ、粋な「韓紅」に誘われて。

「日本の色 再発見」Japanese Colors
”街歩き”×”色彩”×”歴史”を楽しもう!

こんにちは、大平雅美です。 浅草の雷門をくぐる時、皆さんの目には何色の世界が映っていますか?

ほとんどの方は「赤」と答えるでしょう。でも、私の目には、そこには性格の違う「二つの赤」が響き合っているのが見えます。

大提灯 高さ3.9m 幅3.3m重さ約700kg

ひとつは、建物を守り抜く凛とした「朱」。 もうひとつは、人を惹きつけ、街を彩る艶やかな「韓紅(からくれない)」。

私は”音声色彩研究家”として、色名に隠された歴史や文化を読み解く研究をしています。色名は、単なる名前ではなく、その土地の記憶が詰まった「小さな記憶装置」のようなもの。

「街歩きで色彩を楽しむ」
今回は、浅草の街を歩きながら、この二つの赤の正体を紐解いてみます。

手作り色見本でフィールドワーク


たとえば、神社の鳥居や寺の門が放つ生命力あふれる「朱」や、老舗の暖簾に染み込んだ静かな「藍」。あるいは、武家屋敷の奥深い空間から名付けられたという「納戸色(なんどいろ)」。

私たちは日々、こうした豊かな色彩に包まれて暮らしています。けれど、その色の名前や、そこに込められた人々の想いを知らずに通り過ぎてしまうのは、少しもったいない気がするのです。

色を知ることは、街が語りかける「声」を聴くこと。 お江戸の記憶を今も鮮やかに宿すここ東京から、色彩というレンズを通して、歴史を旅する散歩を始めてみましょう。まずは、浅草寺の前に立ってみましょう!

日本の色再発見①
浅草の赤

― 赤、祈りと祝祭の色 ―

浅草は、歩くだけで心が少し弾む街です。雷門をくぐり、仲見世を進むと、ふいに視界がひらけます。そこに広がるのは、長い時間を重ねてきた祈りの空間です。

浅草寺は7世紀に創建されたと伝えられ、江戸時代には徳川幕府の庇護を受け、多くの人々の信仰を集めました。その隣には浅草神社が並び、かつては神仏が自然に共存していました。参拝に訪れる人、商いを営む人、見世物や芝居を楽しむ人。江戸の浅草は、祈りと娯楽が同じ場所に息づく、にぎわいの中心地だったのです。

浅草寺のおみくじは「凶」が多いのは本当?

私は江戸文化を研究していますが、浅草はまさにそのエッセンスが凝縮された場所だと感じます。信仰と商い、厳かさと華やぎ。その重なりは、建物や祭りだけでなく「色」にもあらわれています。

雷門の前に立つと、まず目に飛び込んでくるのが「朱色」です。赤にやわらかな黄みを含んだ明るい色は、どこかあたたかく、それでいて凛としています。朱は古く、辰砂という鉱物に由来し、祈りや魔除けの意味を持ってきました。境界を示し、場を清める色でもあります。浅草寺の建築に施された朱色は、この場所が特別な空間であることを、視覚的に教えてくれます

柱の色は「朱色」です

一方で、印象的なのが雷門の象徴でもある提灯に使われいる深い紅。赤字に黒く染め抜かれた「雷門」は浅草の象徴でもあります。この赤は「韓紅(からくれない)」と呼ばれる紅花染めの色です。「韓」という言葉には、かつて異国風や洗練への憧れが込められていました。光を受けると、紅はやわらかく透け、人の気配や祭りの高揚を映し出します。同じ赤でも、その役割は少しずつ違います。建築の朱が場を支え、提灯の紅がにぎわいを添えているのです。

2つの「赤」を比較できます!

浅草を歩くとき、ぜひ少しだけ立ち止まり、色を見比べてみてください。建物や柱の赤と、提灯の紅。その違いに気づくと、街の風景が奥行きを持ちはじめます。色はただ美しいだけではなく、その土地の歴史や人々の思いを宿しています。

建築の「朱」は保存性や魔除けという「公」の役割が強いのに対し、提灯の「韓紅」はより鮮やかで、江戸の庶民が愛した粋な「華」を感じさせます。

日本の伝統色は、自然や祈り、そして庶民の暮らしの中から生まれました。色名を知ることは、文化を知ることでもあります。浅草は、その入口としてとても魅力的な場所。次に訪れるときには、ぜひ「色」を手がかりに歩いてみてください。きっと、いつもとは少し違う浅草に出会えるはずです。
今回は赤の伝統色、2色を紹介しました。

浅草寺の隣「浅草神社」朱色の色味が違います


浅草編②次回は、2つの「緑」についてです!

🎨「色彩の標本箱 」#1
色を深める『美学』のひと匙

テーマ:朱色と韓紅(からくれない)

同じ「赤」でも、日本の伝統色には素材による大きな違いがあります。それは、日本の色が「顔料文化」と「染色文化」という二つの流れの中で育まれてきたからです。

■ 朱色(しゅいろ)

・鉱物(辰砂など)を原料とする顔料の赤
・やや黄みを帯びた、あたたかみのある色味
・塗ることで発色する

主に建築や仏像、器物など「かたちあるもの」を彩る色として用いられてきました。耐久性が高く、魔除けや防腐の意味も込められています。これは日本の「顔料文化」を代表する赤です。

■ 韓紅(からくれない)

・紅花など植物染料による紅
・青みを含んだ、澄んだ鮮やかな色味
・染めることで発色する

衣服だけでなく、和紙なども染める「染色の紅」として広く使われました。光を受けるとやわらかく揺らぎ、人の気配や祝祭の空気を映し出します。こちらは日本の「染色文化」を象徴する紅です。

■ ポイント

朱色は「鉱物の赤」
韓紅は「染色の紅」

建築を彩る顔料文化と、布や紙を染める染色文化。
素材の違いが、そのまま日本の美意識の違いを生み出してきました。江戸の町では、建築の赤と染色の紅は、役割を分けながら共存していたのです。

  • 朱色(しゅいろ) 【特徴】水銀と硫黄の化合物で、力強く普遍的な赤。 【物語】神社仏閣を腐食から守り、災厄を払う「公(おおやけ)」の願い。

  • 韓紅(からくれない) 【特徴】紅花で染め上げた、鮮やかで深みのある赤。 【物語】江戸の町衆が愛した「粋」の象徴。人を招き、心躍らせる「私(わたくし)」の喜び。


【ひとこと】 同じ「赤」でも、その生まれ(原料)と役割が違えば、街に放つエネルギーも変わります。浅草はこの二つの赤が混ざり合うからこそ、力強く、それでいてどこか懐かしいのです。

毎年行われている節分の行事

日本の伝統色をいっしょに見つけましょう!こんな場所、こんな色があるよ!などぜひ教えてください。まずは100色を目指しています。
「街歩きで色彩を楽しもう🚶🚶‍♂️🚶‍♀️

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