【色で読む東京】浅草は「赤」だけじゃない。活気の「若竹色」と、熟成の「緑青」
「日本の色 再発見」
”街歩き”×”色彩”×”歴史”を楽しもう!
こんにちは、大平雅美です。
街を歩くとき、皆さんはどこに目を向けますか?
今年の私のテーマは「日本の色 再発見」
日本の美しい伝統色を求めて街歩きをします。
キーワードは【街歩き × 色彩 × 歴史】
まずはお江戸・東京の各地に眠る日本の色彩を採取していきます。
その第一歩として訪れたのは、浅草。
色を知ることは、街が語りかける「声」を聴くこと。 お江戸の記憶を今も鮮やかに宿すここ東京から、色彩というレンズを通して歴史を旅する散歩を始めてみましょう。

日本の色再発見②
浅草の2つの緑
ー“芽吹きの緑”と“熟成の緑”ー
浅草の街を象徴する色といえば、誰もが真っ先に「雷門」の鮮やかな赤を思い浮かべるでしょう。

前回の歩きでは、その二面的な「赤」に焦点を当て、魔よけの願いや江戸の粋について触れました。しかし、その朱色の柱や門をじっと見つめていると、背景や細部に潜む「緑」が、いかに主役を引き立て、空間に奥行きを与えているかに気づかされます。

今回は、浅草の風景にリズムを作る二つの「緑」
生命力を象徴する「若竹色(わかたけいろ)」と、歳月の重みを湛えた「緑青(ろくしょう)」を探してみましょう。
意識しなければ通り過ぎてしまう、けれど一度見つけると浅草の景色が全く違って見えてくる。そんな色の発見へ一緒に出かけてみましょう。
■生命力の「若竹色」:朱色を輝かせる名脇役
浅草のシンボル、大きな赤い雷門の提灯が下がった朱塗りの門(正式名称:「風神雷神門」には、建物を囲む連子窓(れんじまど)があります。あまりに自然に調和しているので意識しないことが多いですが、そこに目を向けると、ハッとするほど瑞々しい「若竹色」が配されています。この色は、春先に真っ直ぐ天へと伸びゆく竹のような、青竹よりも若々しく強い生命力を感じさせる緑色です。

ここで注目したいのは、色彩の魔法です。実は、赤の反対側に位置する「補色」に近い緑を添えることで、朱色の鮮やかさは何倍にも強調されます。神社や寺にはこの対比が多く見られますが、朱色に緑の「若竹色」を配することで、安定感がある力強い色彩美が完成しました。スッと垂直に並ぶ連子窓の若竹色を目にしていると、こちらの背筋まで自然と伸びるような、清々しい心地よさに包まれます。

■重厚な「緑青」:歳月が醸す、空の境界線
視線をぐっと上に向け、お堂の屋根を仰ぎ見てください。そこには、若竹色の鮮烈さとは対照的な、落ち着き払った「緑青(ろくしょう)」の世界が広がっています。この色は、銅が空気に触れ、長い年月をかけて酸化することで生まれる「錆(さび)」の色です。

しかし、この錆は決して劣化ではありません。自らを酸化させることで内部の腐食を防ぐ、建物を守るための「鎧」でもあります。生まれたての銅の輝きが、雨風にさらされてこの深い青緑色に変化したとき、それは建物がこの地に根付いた証となります。広大な屋根が描く緑青のカーブは、晴れた日には青空に溶け込み、雨の日にはしっとりと周囲の景観に馴染みます。数百年という浅草の時間を、静かに、そして重厚に物語るこの色は、まさに浅草の「空の主役」と言えるでしょう。

街歩きで色彩を楽しもう!
こんなところにも緑が!

若く生命力の「若竹色」と、歴史を背負い空を仰ぐ「緑青」。この二つの緑を意識するだけで、浅草の歩き方はもっと深くなります。

鮮やかな赤に心躍らせ、その影で支える緑に知性を刺激される。そんな贅沢な色の対話を楽しみながら、仲見世通りを歩いてみましょう。そこにはまた新しい色の物語との出会いがあるはす。色見本を片手に街歩き。新しい発見が待っています!

浅草①「赤を巡る街歩き」はこちら💁♀️
🎨色彩の標本箱 #2
色を深める『美学』のひと匙
テーマ:若竹色と緑青(ろくしょう)
同じ「緑」でも、日本の伝統色には成り立ちの違いがあります。
それは、日本の色が「植物から染める文化」と「金属が変化して生まれる文化」という、異なる時間軸の中で育まれてきたからです。
■ 若竹色(わかたけいろ)
・植物(竹)を想起させる若々しい緑
・やや黄みを帯びた明るく清涼感のある色
・染色や彩色として表現される
芽吹いたばかりの竹の色の若竹色は「成長」「しなやかさ」「未来」を象徴します。
建築の装飾や衣装、文様などに用いられ、力強い色を和らげ、空間に軽やかさを添える役割を担ってきました。
植物を源とするこの緑は、瞬間の生命力を映す色。これは日本の「染色文化」に連なる、みずみずしい緑です。

■ 緑青(ろくしょう)
・銅が酸化して生まれる鉱物由来の青緑
・くすみを含んだ、深みのある色味
・時間の経過によって自然に発色する
社寺建築の屋根や装飾に見られるこの色は、
金属が空気や雨に触れ、長い年月をかけて変化した姿です。
単なる錆ではなく、内部を守る保護膜としての役割も持ちます。
若竹色が「今」の生命なら、緑青は「時間」の記憶。
これは日本の「顔料文化」とも関わる、金属が育てる成熟の緑です。

■ 美学のひと匙
若竹色は「芽吹き」
緑青は「熟成」
同じ緑でも、
ひとつは“これから伸びる色”、
ひとつは“守りながら深まる色”。
日本の伝統色は、
色そのものだけでなく、「素材」と「時間」までを内包しています。
■ ポイント
若竹色は「染色の緑」
緑青は「鉱物の緑」
建築や芸術を支える不変の緑と、暮らしの中で更新される鮮やかな緑。素材の違いは、そのまま「時を止める美」と「今を生きる美」の違いとして使い分けられてきました。
・若竹色(わかたけいろ)
【特徴】突き抜けるような清涼感を持つ、鮮明な緑。
【物語】新しい始まりや健やかな成長を願い、日常に呼吸を届ける「私(わたくし)」の悦び。
・緑青(ろくしょう)
【特徴】銅の酸化物から生まれる、深みのある上品な緑。
【物語】永劫の時間を象徴し、格式高い空間を静かに守り続ける「公(おおやけ)」の彩り。
【ひとこと】 重厚な顔料の緑と軽やかな染色の緑。この二つが街の景色に混ざり合うことで、日本の風景には落ち着きと躍動感が同居します。

「街歩きで色彩を楽しもう!」
日本の伝統色をいっしょにみつけましょう!こんな場所、こんな色があるよ!などぜひ教えてください。まずは100色を目指しています。
