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幼稚園児が言った。「ハゲになりたい!」

「ハゲになりたい」
幼稚園から帰ってくるなり、息子は言った。

父も母も耳を疑った。

どこの「ハゲのおっさん」のことを言っているのか?
幼稚園の男性職員は全員フサフサだ。

警察官が夢の息子。
ハゲの警察官でもいたのか?

父は言った。
「フサフサのほうがいいやろ」

すると息子は即答した。
「ハゲの方がかっこいい!」
「ハゲになりたい!!」

なりたい!?

話を聞くと、
友達のエイト君もソウマ君もハゲらしい。
どうも幼稚園男児の間では、
ハゲが最先端ファッションらしい。

父も母も難色を示した。
フサフサのかわいい我が子でいて欲しい。
それが親の願望だ。

しかし、息子には伝わらない。

そのうち、
「ハゲにして」
「つるつるになりたい」
「ハゲ、ハゲ、ハゲ、ハゲ」

ハゲの連発が始まった。


母が言った。

「どうせ先生とか友達に、
かわいいって言われたいだけでしょ」

息子は即答した。
「うん、そうだよ」

どうやら本人の中では、
かわいい = ハゲ
という方程式が成立しているらしい。


母言った。
ハゲって言い方やめなさい。
坊主頭って言いなさい。

息子は聞いた。
「ぼうず、ってなに?」

「お坊さんの事だよ」

オレさー。警察官になりたいんだよねー。
お坊さんにはなりたくないんだ。

だからハゲにして

話は通じなかった。
しかし、息子の中では理屈は通っているようだ。


「ねー、だから、ハゲにしてよー」

あまりにもうるさいので、母はバリカンを取り出した。

うるさいから、その場で成敗、
いや、ハゲにする気らしい。

私は止めた。
「ちょっと待った! 素人がハゲにするのは危険だよ」

「あん!? 刈るだけでしょ。
ならあなたがやってよ。うるさいから早く!」

「いやそうじゃなくて、
素人がやるとトラ刈りになるんだよ」

目立つところの刈り上げは結構難しい。

母は納得した。


そして次の日。
息子は散髪屋でハゲになった。

満面の笑みで帰ってきた。
妻が撮影した、嬉しそうに髪を刈られる
息子の画像をお見せ出来なくて残念。)

第一印象は、
「私にそっくり」
だった。

髪がなくなった分、
顔の印象が強くなったのだ。

ちなみに私は髪はある。


次の日。
胸を張って幼稚園バスに乗り込んだ。

先生が言った。
「キャー、髪切ったん。かわいいなー」
うれしそうな息子。

バスの中でも友達からいろいろ言われて楽しそう。

幼稚園でもみんなに髪のことを言われてうれしかった様子。

どうやら息子の読みは当たったらしい。


これも自我の発達というべきか。

親は、
「髪がある方がかわいい」
と思う。

しかし本人は
「ハゲの方がかっこいい」
と思う。

当然ながら意見は一致しない。

これから先、
服も、
友達も、
趣味も、
親の思い通りにはならないのだろう。

その第一歩が、
まさか
「ハゲになりたい!」
だったとは。

(おわり)


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