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太極剣は身体の延長になるのか— 太極剣は部屋の中では完成できなかった

太陽の下で、太極剣を舞う。

以前から、
やってみたかったことを試すことにした。

太極剣を始めて、
一か月ほどが経っていた。

少しずつ技もつながり始め、
自分なりに「流れ」が出てきた気がしていた。


私はその頃、ドイツにいた。

田舎のホテルの横には、
大きな公園のような場所が広がっていた。

いや、
公園というより、
芝生の丘に近い。

私はその中腹にある、
大きな木の下を選んだ。

晴れ時々曇り。
風は僅か。

高い空が気持ちよかった。

演武を始めた。
すると、
すぐに違和感があった。

ほんの僅かな傾斜で、
姿勢が崩れる。

わずかな風が吹くだけで、
身体が、
ゆっくり傾き始める。

私は、こんなに微妙なバランスで、
舞っていたのか!?

目からウロコだった。


そして、
もう一つ驚いたことがあった。

広さである。

ホテルの部屋は広かった。
4メートル四方ほどの空間は確保できる。

しかし、
提膝棒剣から跳歩平刺、
左虚歩撩、
右虚歩撩へと動こうとすると、
どうしても狭い。

腕を伸ばさず、
歩幅を小さくする。

それでも、
壁に剣が当たる。

そして、
動きがどん詰まりになる。

知らないうちに、
私は身体を縮めていたのである。

しかし、
ここには壁がない。

空がある。
どこまでも動ける。

私は、広さを楽しんだ。


今まで私は、
平らな床、
風のない空間、
変化のない環境でしか、
太極剣をしていなかったのである。

つまり、
条件を固定した世界の中で、
「できている」と思っていた。

しかし、
外には、
傾斜があり、
風があり、
空気の流れがあった。

身体は、
それに合わせ続けなければならない。

太極剣は、
形だけを覚えればよいものではなかった。

しかし、楽しかった。

空は広く、
緑は美しかった。

演武の小さなミスなど、
気にならない。

気を感じるとか、
そういうことも、
どうでもよくなっていた。

水を得た魚。
いや、
ようやく外へ出られた子供だったのかもしれない。


(つづく)


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