1/25 縄の超・交流会で見た緊縛ショーの世界(中編)
(前編 の続きです。前編では永遠さんのショーについて綴っています。)
永遠さんの表現力に衝撃を受け、まだまだ自分の脳内では情報の整理ができていなかったが、ショーは次へと進んでいく。
再び司会の鵺神さんがトークで場を繋ぐ。
鵺神さんの背後では次のショーに向けてステージの準備が進んでいた。
白いラグは片付けられ、代わりに太い竹が用意されて天井に吊るされる。
永遠さんの美しく爽やかな世界観は一掃され、和の趣に書き換えられた。
次は大阪を拠点に活動している獅子若さんのショーだ。
5分ほどで準備が完了し、再び照明が落ちた。
そして薄暗闇のステージ中央に演者が立つ。
静寂の後、音楽が始まり獅子若さんと受け手さんは赤いライトに照らされる。
受け手さんが正面を向いて立ち、その真後ろに背の高い獅子若さんが受け手さんの肩に手を置き、鋭い視線で立っている。
先ほどの永遠さんとは打って変わって、和装の二人。
獅子若さんの格好良い立ち姿に、これから何が始まるのだろうと期待感が高まる。
そして早速、怒涛の展開が始まる。
獅子若さんはやや荒く力強い所作で受け手さんに深く後手を組ませると、縄を手に取り素早い手捌きで縛っていく!
荒々しいスピード感と力強さを表現しているものの、時折スローダウンしてじっくり受け手さんと視線を合わせる。
絶対的な速さだけではなく、緩急をつけることで更に相対的な速さを表現する。
永遠さんの波は穏やかな海辺だったが、獅子若さんの波は荒れ狂う嵐のようだった。
『動』の中に潜む『静』
嵐の前の静けさにも感じられる一瞬の後、更に加速するかのような手捌きで力強い縄筋の激流に飲み込まれる。
獅子若さんはあっという間に全身を拘束し、そのまま一気に力強く受け手さんを吊り上げた。
吊りの力強さが圧倒的。
まさに自分が事前に思い描いていた緊縛ショーのパフォーマンスに近いものだった。
吊りに入った後も展開のスピードがあまりにも速く、惚れ惚れするほど無駄のない凄まじい手捌きに釘付けになった。
先ほどの永遠さんはスイベルで回転させていたが、獅子若さんは竹を使っているためそのような演出はない。
しかし、竹の端から端まで支点の位置が自由であり、次々と吊り縄を入れ替えて展開していく。
息つく暇もない展開に魅了される。
更に、吊り縄を手で押して竹の上を滑らせ、吊りの位置をずらすという技も印象に残った。
竹だからこそできる技なんだろうけど、あんなに簡単に動くのか!
竹の節を越えられるのか心配だったが、節から少し離した位置に支点を作っておき、滑らせて勢いをつけることで節を越えていた。
力任せではなく細かいところまでよく考えられているようだ。
そしてショーはクライマックスに近付き、受け手さんの姿勢もかなり苦しいものになっていく。
観衆の呼吸も浅くなるのを感じた。
会場が一体となって最後まで展開を食い入るように見守る中、受け手さんは海老反りで顔面からゆっくりと着地していった。
凄まじい激流に揉まれ、命からがらようやく生還したような感覚だった。
最後、縄の解き方もやや荒いのだが、しかしその中にも時折受け手さんへの愛が感じられた。
そして最後の縄が解かれる。
ステージの中央で二人は向かい合って立ち、獅子若さんは受け手さんの衣装の乱れを丁寧に直す。
このシーンによって激しいパフォーマンスが良い意味で中和されたというか、二人の関係性がストーリーとして完結したような感覚を覚えた。
全力疾走した後に突然立ち止まらず、ゆっくり歩いて呼吸を整えることができたような、そんな気持ちにもなった。
最後、客席に向かって礼をするお二人に拍手を送りながら、先ほどの永遠さんのショーを見た後とは全く違う感情だった。
爽快で分かりやすく格好良い。
自分がイメージしていた緊縛ショーってまさにこんなやつだよな!という演出。
しかし、その完成度は想像を超えていた。
力強さ、荒々しいスピード感、絶妙な緩急。
その中でも受け手さんとの絆、愛はしっかりと感じられる。
そんなギリギリのバランス感があった。
イベント全体の構成的な観点で言うなら、おそらく事前にそれぞれの演者がどのような性格のショーを行うか確認した上で出演順を決めているのだろう。
永遠さんの優しく綺麗な縄を見た後だったからこそ、より獅子若さんの荒々しい力強さ、格好良さが際立った。
勿論、逆に言えば後から思い返して永遠さんの『温かく優しい綺麗な縄』という思い出も強化される。
お互いをお互いが引き立てるような美しい並びになっていた。
起承転結という観衆を引き込む典型的な構成手法があるが、これに当てはめると
『起』と『承』は完璧だった。
すると、次は『転』
何が起こるのだろうか……。
そんなことを考えているうちにステージの準備が終わり、3組目、椿さんのショーが始まる……のかと思いきや、唐突に『転』が訪れた。
椿さんはショーの前にマイクを握り、ステージで話し始めた。
まずそれだけで意外性があった。
何故なら、直前に本人が話すというのは、表現者としての世界観にズレが生じる気がしたからだ。
そのために鵺神さんがいて、演者の紹介をしてくれているんだろうと思っていた。
「縄っていうのはとにかく時間がかかる」
「私はなかなか思いつかないから、皆さん(他の演者)の縄を見ながら、勉強して色々取り入れてやってきた」
「SMと縄は切り離さずに考えている」
「だから縄は相手との関係性を重視している」
「技術的には物足りないと思うかもしれないけれど、想いを見てほしい」
というような内容だった。
そして、喋りが関西訛りというところも東海圏の自分からすると強烈な『転』になった。
今までの演者2組は
「雲の上の人だ」
という畏怖もあったけれど、今回3組目にして突然親近感のようなものを与えられてしまった。
椿さんのトークが終わり、会場が暗くなる。
受け手さんが袖から出てきて最初のポーズを取ろうとするのだが、ここでまた一波乱あった。
受け手さんが「寒い」と言って上着を床に敷いて、その上でポーズを取ろうとした。
しかしそれを見た椿さんが「ダメ!」と言って上着を奪い取り、袖に投げ捨ててしまう。
笑って崩れ落ちる受け手さん。
関西特有のコントを見ているかのようで、この瞬間、決定的に場が緩んだのを感じた。
その直後、音楽が始まり、突然キリッとしたショーの世界に早変わりする。
そこで、自身の心境の変化に驚く。
あれ?さっきまでこんなにリラックスして見ていたっけ?
「雲の上の存在なんだ!」
と思っていると、やはり構えて見てしまうのだろう。
あのトークとコントを見せられた後だと壁が取り払われ、肩の力が抜けた状態で見れている気がした。
演者への感情移入もしやすいというか、温かい気持ちで見ることができた。
縄の優しさ、激しさに関しては永遠さんと獅子若さんの中間くらいだったと思う。
方向性としては、芸術的というよりもSM的な要素が強かったように感じた。
椿さんのショーに関しては
この吊り方がすごかった!
この表現が面白かった!
というよりも、受け手さんの表情を見ながらプレイしているかのような、二人の関係性が感じられて前半の2組とは全く違う方向性で楽しめた。
終わった後、受け手さんの「楽しかった!」という感情が伝わってくる笑顔が印象的で、すごく幸せな気持ちになれたショーだった。
椿さんについては、敢えて縄そのものに関して触れないでおこうと思う。
それくらい、自分にとって精神的な部分の衝撃が大きかった。
そんな完璧な『転』を終えた後の4組目、本日最後のショーが始まる。
悟空さんのショーはどんな『結』になるのだろうか?
もう十分すぎるほど縄の世界を味わったはずなのに、まだもう1組残っている。
陰鬱とした気持ちで会場に来た自分は、気付けば緊縛ショーの不思議な世界に魅了されていた。
(後編へ続く。後編では悟空さんのショーと、その後の自身の心境変化について綴ります。)
