【せりふ三題噺】昼下がりのパン屋
お世話になっております。
こちらの企画に参加させていただきます。
アレ…2週分…?
良く言えばミックス。真実は…周回遅れですすみません…!(結局)
お題は以下になります。
■セリフ
「調べないほうがいいよ」
「喉乾いてたんだよね」
■三題
・火山
・シマウマ
・風鈴
周回遅れ分
■三題
・合皮
・シーグラス
・将棋
(本編約1670字)
「調べないほうがいいよ。」
高校の近くのパン屋にて。
ふっくらしたマシュマロみたいな唇をキュッと引き結び、いつになく真剣な声で彼女が言う。
僕は、新商品のメロンパンの
「キャメロンパン」
という独特なネーミングのポップを見やった。
調べるまでもなく想像がつく。
定番商品・カメロンパンの亀の甲羅…格子部分をパリッとキャラメリゼしてあるから、ってとこじゃない?
彼女は唇の端を上げてにやりと笑うと、トングを片手に惣菜パンのコーナーへ行ってしまう。
あれは遠からずもハズレてる時の顔だ。
そして当たり前のように、正解は教えてくれない。
「シーグラス集めてるんだけど…」
イートインスペースで、期間限定のブラック牛すじカレーパンをもぐもぐしながら彼女が言う。
「しーぐらす?」
連日の暑さですっかり食欲が失せていた僕は、長椅子の隅に置いてあったミニ将棋セットの駒で、将棋崩しでもしようと山をこさえながら聞き返した。
知らない単語だ。ほぼ無意識にスマホを取り出すと、検索画面が彼女の二つ折りの財布で遮られた。黒い合皮製で、小さな雑貨屋で見つけた手作り品らしい。
「調べないほうがいいよ〜」と、含み笑いの彼女。
「知らないままは気持ち悪いよ。」
「うん…最後は知りたいから調べるけど、その前に想像したら面白くない?」
楽しそうな顔で言われると、僕は弱い。
彼女と将棋崩しをしながら、シーグラスが何か予想する。
シーは海で、グラスは…ガラスのコップとか、メガネ?
「サングラスみたいな…海専用メガネ。」
「海専用?」
「潮風から目を守る、とか。」
「火山灰とか、黄砂からも守ってくれたらいいねぇ。」
「海も活火山も近くには無いけどね。あと、これは絶対違うと思うけど…シーグラ酢っていう調味料。」
ふくっと彼女が吹き出す。
「シーグラ酢?」
「バルサミコ酢みたいな。」
「採用〜。」
「いや、何の?w」
将棋崩しは僕が勝った。
彼女は香車や桂馬、歩兵ばかり狙うから、点数が伸びなかったのだ。
「だってこっちの駒の方がカワイイもん。」と彼女。
駒に刻まれた太い筆文字と“カワイイ”を上手く結び付けられないでいると、「ゆうしょーしょーひん♪」と、パンをひとつ差し出される。
有償商品?
あ、優勝賞品か。
ブリオッシュ生地の間にたっぷりのクリームが挟まれているこれは…
「マリトッツォ?」
「…じゃなくて〜?」
見るとクリームがホイップとチョコソースの白黒マーブル模様になっている。
これはまさか…また、カメロンパン系?
「し…シマウマリトッツォ…?」
彼女は可笑しそうに、ふくく、と笑った。
甘いシマウマをありがたく受け取り、ドアベル代わりの陶器製の風鈴をチリンと鳴らして店を出る。店内の冷房が僕には少し涼し過ぎたので、夏の外気が心地よかった。けど数分もすればまた汗だくだろうな。
近くの大学に通う留学生の女性店員が、店先で打ち水代わりにホースで水を撒いていた。店員さんは僕らに気がつくと、
「2人とも制服?夏休みじゃないの?」と、流暢な日本語。
「部活です。」と答えると、店員さんは辺りをキョロキョロ見回し「ちょっと待っててね。」と店内へ。
戻ってくると、ビニールの小袋に包まれた何かを彼女と僕に持たせた。
手作り感のある小さなキーホルダーで、十字型の透明な樹脂の中に淡い色の不揃いなガラス片みたいな粒が入っている。
「ホントはレジの所で売らせてもらってるんだけど…部活頑張ってるからあげるね。」と、さりげなくウインク。
「あ、ありがとうございま…」そこでふと、店員さんの名札に目がいった。
【M・キャメロン】
あっ…!?
「あのパン…」僕が言い終わる前に、「コレクション増えた♡」と彼女は店員さんにお礼を言って、さっさと歩き出す。
僕は少し迷って、彼女の後を追いかけた。
角の自販機の所で追いつくと、笑いを堪えきれなくなったのは僕の方が先だった。
彼女は「喉渇いてたんだよねぇ」と、綺麗な顔を汗と笑顔でくしゃくしゃにする。
「ジュース買おうか。何にする?」と、僕。
「ここまできたらもう一択だよねぇ。」
「あ、やっぱり一択?」
「うん。ふふ…せーので言う?」
「いいよ。せーの」
メロンソーダ。
※キャメロンパンとブラック牛スジカレーは、ドライブイン ニューアジトさんの素敵な作品からオマージュさせていただきました(勝手にすみません💦)
(反省会のようなもの)
私はシーグラスを知りませんでした。
検索する前に予想したのは、水中メガネです(ジーパンをデニムって言うみたいな、イマドキのオシャレ(?)な言い方かと…)
素敵なお題を使わせていただき、ありがとうございました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
彼女と僕はこちらの話の二人です↓
