【せりふ三題噺*観覧車靴下マシュマロ】放課後のパン屋
新参者が突然すみません。
こちらの企画に参加させていただきたく、筆を取りスマホを握りました。
お題は以下になります。
■セリフ
「あれ?亀?」
■三題
・観覧車
・靴下
・マシュマロ
「あれ?亀?」
彼女が、いつも通りのぽやんとした声音で言う。
放課後、高校の近くのパン屋にて。
店内は香ばしくて甘い匂いに満ちている。
僕は小学生の時に飼っていたミドリガメの、仄かに生臭い水槽を思い出して、両者を上手く結び付けられなかった。
「亀?」
時間稼ぎのつもりで言葉を繰り返す。
彼女は、ふっくらしたマシュマロみたいな唇の端を上げてにやりとする。
…うーん、試されてるやつかな。
「あ、もしかしてメロンパン?亀の甲羅に似てるから?」
彼女は口元に同じ笑みを含ませたまま、
「さぁ、早く買って食べよ〜」
トングを手に取ってパンを選び始める。
むむ?ハズレか?
彼女は不思議な雰囲気の子だ。
マイペースで、ふんわり。
浮世離れした綺麗な顔をしてるのに、親指に穴の空いてる靴下をうっかり履いてきたりする。
帰り際、靴を履き替える時に僕が気付くと、
「えへ、バレちゃったねぇ」
と、唇の端を上げて笑った。
穴からチラリと覗いた白くて小さな親指。
亀が首を出すみたいな…
もしかして…
チラッと、イートインスペースでとなりに座る彼女の足元を見る。ローファーに隠されたその下には…
いや、そんなわけあるかい。
「春休み、遊園地行こうよ。」
カレーパンを小動物みたいにもぐもぐしながら彼女が言う。
「ディズニー?」
「う〜ん、観覧車のある所がいいなぁ。」
「ああ…ごめん。僕、高い所ダメなんだ。」
言ってなかったっけ?と、ヘラっと笑う。
「…うん、知ってるよ。
逃げ場の無いところでキミが怖がるの、見たいなぁ…って」
どこかうっとりした微笑みに、手の中のパンからカスタードクリームがこぼれそうになる。
「ふふっ、冗談だよ〜!ビックリした?」
僕の肩をポンポン叩いて、いつものぽやぽやした笑顔。
やめろよ、もー(笑)とか、ベタなリアクションをしておくけど、本当は心臓がバクバク鳴ってる。
「ねぇ、キミって甘いの好きだけど…メロンパンは選んだ事無いよね。」
そういう彼女はしょっぱい惣菜系パンを好んでる。
ついでに僕よりたくさん食べる……これは言わないでおこう。
「もしかしてメロン嫌い?あのね、メロンパンは、メロンの味しないんだよ。」
知ってるけど、ここは「そうなの?」って知らないふりして合わせてみる。
「そういうのもあるかもだけど…ここのお店のは絶対大丈夫だよ。」
はんぶんこしようよ、の提案に乗っかって店内へ舞い戻る。
メロンパンは残り1個だった。この店のやつは普通より大きくて、食べ切る自信がなかったから選ばないだけだったりする。
くっきりした格子模様はマスクメロンを模しているんだろうけど、亀の甲羅にも見えた。
さっきの不思議な問い掛けは…やっぱりそれで正解だったんじゃないか?
トングでメロンパンを取る。
手書きのポップで値段を見た。学生を意識して頑張ってくれてるんだろうな、という価格設定。
「あ…」と、僕。
隣で彼女が、ふくく…と笑う気配がした。
本日のおすすめ カメロンパン
ええ…本当に亀だったね。
だからってこのネーミングは…誰が決めたんだよ。
彼女はそういうの好きそうだけど、僕はちょっと引いて薄ら笑いを浮かべてしまう。
そんな反応を、彼女はまた面白がったりするんだ。
いつも通りのその笑顔に、僕は少し…本当に少しだけ体温の上がった胸の内側で、コッソリほくそ笑んだ。
(反省会のようなもの)
メロンパンですが、一部地域や製品によっては格子模様ではない物も多々あるようなので、伝わりにくかったかもしれません。
お題を使わせていただきありがとうございました。
また、ここまでお読みいただきありがとうございます。
最後に…私はパンよりご飯派です(小声で)
※4月1日編集:見出し画像を付けてみました(フォトギャラリーより美味しそ…素敵なイラストをお借りしました)
続き(こっそり置いておきます)↓
