【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (32)
パリスの従者が複数の夜警を連れて急ぐ。
「パリス様が何者かと争っているんです。急いでください!」
「何度も聞いた。だから、こうして急いでいるだろう?」
「ここです。この辺りで争っていました」
「この辺りは血まみれじゃないか、墓の中も探すんだ」
墓の中に二、三人の夜警が入る。
「パリス様!だめだ、すでに機能停止している。こっちには追放人のロミオとジュリエット様が並んで機能停止している。一体何がどうなっているんだ?」
「誰か、領主様に報告を、キャピュレット卿とモンタギュー卿にも急いで知らせるのだ!」
他の夜警がバルサザーを連行する。
「追放人ロミオの従者です。墓場で見つけました」
「領主様がおいでになるまで、見張っておくように」
別の夜警がロレンスを連行する。
「バールを持った修道士が走って逃げたので、捕まえました」
「揃いも揃って怪しいな、見張っておけ」
エスカラス卿が大勢を引き連れて現れる。
「朝早くに、一体何事だ? 私の眠りを妨げるほどの内容なのだろうな?」
「申し上げます。パリス様が胸を貫かれて機能停止。追放人ロミオが傷だらけの上、服毒して機能停止。先日安置されたジュリエット様が、まるでさっきまで活動していたような状況で機能停止」
「目撃者はいるのか?」
「修道士、追放人ロミオの従者、パリス様の従者が現場にいました」
「ロレンス殿、修道士のあなたが、なぜここにいるのか説明していただけますか?」
「わかりました、全てお話ししましょう。ロミオとジュリエットは人知れず結婚していたのです。私が式に立ち会ったので間違いありません。結婚の日はティボルトの凶日、その咎によりロミオは追放となりました。
ジュリエットはロミオの追放を知り嘆き悲しみました。そうとは知らず、ティボルトのことを嘆き悲しんでいるとばかり思われて、その悲しみを取り除こうとしてパリス殿と無理強いの結婚話が進み、ジュリエットを追い詰めました。
その件を相談するために私の庵を訪れたジュリエットは、結婚を逃れる方法を教えてほしいと懇願しました。ここで自害をしてまで結婚を逃れたいと。仕方なく特別な眠り薬を授けたところ、その薬の効果により機能停止したような状態になりました。
私はロミオに薬の効果と時間を手紙で伝えようとしましたが、不運が重なり、結局手紙がロミオに届くことはありませんでした。そのため、私はジュリエットを救い出すため一人でここに来たのですが、到着する少し前、パリス殿とロミオが非業の最後を遂げていました。
薬の効果が切れたジュリエットは、ロミオの変わり果てた姿を目撃してしまいました。私が時間を稼いでいる間に、逃げるように言っても聞かず、絶望して自害したと思われます。
私が知っているのは以上です。私のしたことに関しては、いかなる厳刑も受けましょう」
「私は、あなたが常に正しくあろうとしている方だと知っています。次にロミオの従者、お前が知っていることを話せ」
「私はロミオ様にジュリエット様の永眠をお知らせました。するとロミオ様は急ぎ、マンチュアからこの場所へ、この墓所へ駆けつけました。
そこで、この手紙を父上に届けよと渡され、ここから立ち去るように命じられました」
「ふむ、その手紙を見せてもらおう。……パリスの従者、パリスはここに何をしに来たのだ?」
「ジュリエット様の墓へ花を撒きに参りました。離れていろと命じられましたので、そのようにしました。すると、誰か人が来て、墓を暴こうとしているのを見てパリス様は剣を抜きました。それを見て私は夜警を呼びに行きました」
「ロミオの手紙の内容は、ロレンス殿の証言と一致している。ロミオは、ジュリエットとともに眠る目的で墓に入ったのであって、墓を暴こうとしたわけではないことは明白。
墓を暴こうとしていると判断したパリス争いとなり、不幸にもパリスが破壊された。
みな安らかに眠った。これ以上、どうして責められようか」
エスカラス卿は天を仰いで言う。
「モンタギュー卿、娘の持参金を受け取ってください、他に望みはありません」
キャピュレット卿はロミオとジュリエットの結婚を認めた。
「私はジュリエットの像を純金で建てましょう。ヴェローナが存在する限り、美しく誠実なジュリエットが語り継がれる、そんな像を建てましょう」
モンタギュー卿はジュリエットを称えた。
「ジュリエットが寂しくならないようにロミオの像も、隣にに建てましょう。キャピュレット家とモンタギュー家の最後の犠牲となった二人を、いつまでも忘れないために」
キャピュレット卿は、ロミオとジュリエットが最後の犠牲者であると宣言した。
「ジュリエットとロミオの物語ほど、悲しく美しい物語は他にない。遠い未来に、二人の名が忘れられたとしても……」
エスカラス卿は誰にでもなく語りかける。
「ロミオとジュリエット」
原作 William Shakespeare
翻訳 坪内逍遙 , 三千白 , AI
翻案 三千白
編集 三千白
完
ヴェローナ、マンチュア全体にアナウンスが響く。
「皆様、化身式拡張現実(アバター式AR)演劇企画 「ロミオとジュリエット」のご参加、誠にありがとうございました。表示されている時間をもちまして、皆様とアバターとの接続は強制解除されます。
それまでにご自身でのアバターとの接続解除を、お願い致します。なお、この後、ささやかながら打ち上げ会を、あらかじめ、お送りした時間場所で行います。
現実での開催となりますので、お間違えの無いようお願い致します。またのご参加、お待ちしております」
「いやあ、エスカラス卿の演技凄かったですね」
「長セリフは緊張したよ、間違えてもカットなしだから」
「私は、まだ、このアバターっていうのに慣れないです。謎の技術で機械に意識を移すって、よく考えると怖くないですか?」
「確かに。でも事故はないらしいよ。俺も何度も参加してるけど、事故とか聞いたことないし」
「そういえば、本物のAIアンドロイドが一部混ざっているって噂ですよ」
「え、初耳なんだけど、誰? 何の役?」
「たぶん、死んだ役がそうなんじゃないかと、勝手に思ってるだけですけどね」
「じゃあ、ロミオとジュリエットとか?」
「さすがに主役はないと思いますよ?」
「そっか、ところで次は何がいいと思う?」
「そうですね、ハムレットとかどうですか?」
「もう何度もやったよ、人気作だからね、SFじゃなかったけど」
「なんで今回SFなんですかね?」
「さあ? 本物のAIアンドロイドが一部混ざっているって噂が関係あるのかも?」
「ええ……なんかホラーっぽくなってきましたね」
「あっ、もうそろそろ時間みたいだよ」
「あ、はい、また次も参加できたらよろしくお願いします」
「は~い、じゃあね」
「失礼します」
――???
「それで、今回はどうだったのですか?」
「それは、ロミオが目を覚ましてみないとわかりません」
「まあ、失敗しても、成功するまで何回でもやり直せばいいことです。で、今回は得るものはなかったのですか?」
「いえ、今回はSF要素を取り入れたことにより、中世の違和感を上手くごまかすことができ、より没入感をもたせることに成功しました」
「変なSF要素はそのためだったのね、流石ベンヴォーリオ」
「それはただの役名ですよ、姉上、いえ、女神にして月の女王陛下」
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