【ファンタジー小説】大魔法使いユウロは大魔法しか使えない (22) 完
――スピルードの街の外の開けた場所。
「私は、ネルギアスに近づく人がいないか監視すればいいのね?」
「そして、俺は昼までに人を集めると」
「うん。僕は残って準備するから、二人は手はず通りにお願い」
ユウロは複数の魔法陣をネルギアスの周りに描く。
――翌日の昼。
「おい、なんで集まっているんだ?」
「さあ?なんか巨像がどうとか言っているらしいぞ」
街の門の辺りで群衆が騒いでいる。
「一体何の騒ぎだ?」
複数の役人が出てきて騒ぎの原因を尋ねる。
「は~い、みなさ~ん注目!」
アネモネが、外壁の上に立ち大声で群衆に呼びかける。
その手にはユウロから渡された声を拡大する魔道具があった。
「昨日、街が滅茶苦茶に破壊されてしまいました~」
アネモネの声が街に響き渡る。
「誰がやったのかな~?」
アネモネがわざとらしく問いかける。
「あの巨像が建物を壊すのを見たぞ!」
ガストが大声で言うと群衆も、そうだそうだと続く。
「そ~だね~巨像だね~。巨像は、今どこにいるのかな~?」
「街の外で見たぞ!」
群衆がネルギアスの方向に一斉に向く。
「そ~だね~あっちのほうにいるね~。巨像をどうしたい~?」
「ぶっ壊せ!」
群衆が壊せ!壊せ!と腕を振り上げて叫ぶ。
「でも~丈夫そうだよ~? どうやって~壊そうか~?」
巨像の破壊方法について群衆が悩んでいる。
「そういえば伝説の大魔法使いが来てるらしいぞ!」
ガストが叫ぶ。
「そ~だね~、あの伝説の大魔法使いが大魔法で、跡形もなくぶっ壊してくれるって~」
「壊せ! 壊せ! 壊せ!」
ガストが叫ぶと、群衆が、壊せ!壊せ!と腕を振り上げて叫ぶ。
「そんなんじゃ伝説の大魔法使いに、想いが届かないよ~、もっと、もっと大きな声で応援できるかな~」
「壊せ! 壊せ! 壊せ!」
群衆の声が一つとなって街中に響く。
「みんな、ありがと~、みんなの応援が伝説の大魔法使いに届いたよ~」
アネモネは鏑矢をつがえる。
鏑矢は空を切り裂き高い音を放つ。
――詠唱
幻影なる閃光で空を満たせ
尋常ならざる音で空を切り裂け
幽玄なる炎と灰、砂塵を巻き上げ天を焦がせ
六つの印に封じられし、その咆哮を解放するは今
永遠なる常世よ、我の心を見よ
鏡たる現世よ、我の心を映せ
顕現せよ!
ホークス エクスプロージョン!
ネルギアスの周りに配置された魔法陣が閃光を放つ。
辺り一帯が光に包まれる。遅れて耳をつんざく爆音が発生し、天まで届く爆炎と煙が発生する。その火柱は街のどこにいても見ることができた。
一部始終を見ていた群衆は、みな、耳を塞いで呆然としていた。
しばらくして煙が散ると、ネルギアスのあった場所には、塵一つ残っていなかった。
「……は、は~い、伝説の大魔法使いが、巨像を跡形もなくぶっ壊してくれました~。ありがとう、伝説の大魔法使い~」
アネモネは、いくらなんでも、やりすぎじゃないかと思った。
「あ、ありがとう伝説の大魔法使い」
ガストが叫ぶと皆も、ありがとう、と続く。
「いやあ、すごい爆発魔法だったな!」
「あんな爆発見たことないぜ!」
群衆たちは初めて見る大爆発に興奮していた。
「ところで、伝説の大魔法使いの名前はなんて言うんだ?」
「……あれ、あの女はどこ行った?」
アネモネは既に立ち去った後だった。
これ以降、スピルードでは精霊祭りを大爆発で締める習わしになったという。
――スピルードから離れた場所。
「おう、上手くいったようだな」
ルドウィンとエルディがユウロ達を見送りに来ていた。
「ユウロさん! 大爆発の大魔法、すごかったです!」
エルディが感動している。
「でも、ちょっとやりすぎじゃない?」
アネモネはかなり引いている。
「ネルギアスも塵一つ残らない威力だったな……」
ガストは見たものを未だに信じられなかった。
「……はい、ネルギアスは残念でした」
「終わったことは、しょうがねぇだろう、なあユウロよ」
ルドウィンは力なくユウロに話しかける。
おもむろに、ユウロは魔法の鞄を開く。
「ネ、ネルギアス? なんで?」
鞄からネルギアスが飛び出した。その姿は見る限り無傷だった。
「え、え、あの爆発に耐えたというの?」
ユウロ以外は全員驚いている。
「あの爆発は、見た目と音だけ派手な大魔法で威力はほとんどない。爆風は出なかったはず。 後は、煙に紛れてネルギアスを鞄にいれて、ネルギアス消滅っていうことさ」
「はぁ~、さっすがユウロ」
「すごいです、ユウロさん!」
「ただものじゃねぇとは思ったが、ほんとにすごいやつだなお前さんは」
「ユウロ、そういうことは、あらかじめ言っておけよな」
「あらかじめ言っていたら、演技が不自然になるんじゃないかと思ってね」
ユウロは冷静に答える。
「私は大丈夫だけど、あんたはね~」
アネモネはガストを見る。
「どう考えても、お前も入ってんだよ」
アネモネを見るガスト。
「そんなことないよね~ユウロ?あれ、ユウロは?」
「置いていくよ?」
ユウロは既に離れた場所にいた。
「ちょっと、ユウロ待ってよ~」
追いかけるアネモネ。
「ユウロ、この大剣も鞄に入らないか?」
追いかけるガスト。
手を振るルドウィンとエルディ。
「で、金もあるし、行くか?」
「うんうん、行っちゃう?」
「メーティル、温泉に案内して」
「リョーカイ モヨリノ オンセンニ アンナイスル」
一同は温泉に向かう。
――遠くからユウロたちを監視する影。
「なんとしても、ネルギアスを奪取せねば、ゴブレット商会の名折れよ。ぐわっ、傷が開いた!」
ユウロの温泉旅行、じゃなくて修行の旅は、まだまだ続く。
しかし、それはまた別のお話。
完
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