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島ひばりのゆる~い日常⑤ お花見日和


「は、は、は、はーくしょん」 
 いやー風邪を引いてしまった。まいったなあ。
 鼻水が止まらず朝から一箱消費してしまったじゃないか。
 今日は休みだけど明日は仕事だしなー。

 私、島ひばりは人付き合いが苦手なのでノーテック社という派遣会社に入って近場の工場へ通ってもくもくと流れ作業で部品を組み立てたりしてる。 おもえばこの数ヶ月会社の往復で、スーパーとドラッグストアとコンビニ以外どこにも行ってなかった。
 今日も寒いので部屋のベッドでゴロゴロしながら寝たり起きたりスマホをいじってる。だいたい私の休日は録画したアニメを見たり漫画を読んだり、スマホいじりで終わってしまう。部屋の片付けもやろうとおもってるけどできてない。そろそろちゃんとしないとだめだな。掃除も人生も……。
 そんなことを考えていたらスマホのLINEに着信が来た。


「ひばりーん、(*´ω`)人´ω`*オヒサー♪今何してる?」
 高校のころからのたったひとりの友達、桜子からだ。

「別にゴロゴロしてただけだけど。なんで?」

「なんかね、桜が咲いてきたからね、ひばりんのアパートの近くの公園で花見をしようと思ったんだ。それでひばりんを誘おうとおもって」

 ちょっと考えてから返信した。

「ふーん、暇だから別にいいけど」

「やったー( ≧∀≦)ノじゃあ1時間後ぐらいに公園ねー(^o^)」

 それから桜子はスタンプを送ってきた。よつばちゃんが「ぐー」をしているやつだ。




 私はスマホをベッドの上に置いて天井を見た。
「花見かあ……」
 正直、人が多いところは苦手だ。でも桜子とふたりならまあいいか。そもそも、私を外に引っ張り出してくれるのは桜子ぐらいしかいないし、たまにはいいか。
 それにしても、鼻がむずむずする。
「くしゅん」
 ティッシュを取ったらもう箱の中は半分ぐらいしか残っていない。
「花見なのに風邪とか最悪だなー」
 のそのそとベッドから起き上がった。部屋はワンルームで狭いけど、まあ一人暮らしには十分だ。床には昨日脱いだパーカーが落ちている。
 私はそれを拾い上げて匂いを嗅いだ。
「……まあ、いけるか」
 寒いからセーフということにする。
 顔を洗って鏡を見ると鼻が少し赤い。
「完全に風邪の人じゃん」
 でもまあせっかくだから行くか。
 それから顔を洗って、化粧して日焼け止めを塗ってパーカーを着てアパートを出た。
 外に出ると空気はまだ冷たい。でもどこか春の匂いがした。
 アパートから15分ぐらい歩くと大きな公園がある。滑り台とブランコがあって、桜並木がずっと続いている。
 遠くからでも、もう薄いピンク色が見えた。
「お、ほんとに咲いてる」
 うれしくてつい早足になってしまった。
 近付くと桜の木の下で、手を振っている人がいた。
「ひばりーん!」
 桜子だ。
 青いレジャーシートを広げて、スーパーの袋を2、3個並らべている。
「早いね」
「ふふふ、花見は準備が命なのです」
 私は桜子の隣に座った。
 袋の中をのぞくと、おにぎり、コーラ、唐揚げ、ポテチ、みたらし団子、それからさくらもちまで入っている。
「買いすぎじゃない?」
「お花見って食べるのがメインだから」
「まさに花より団子だね」
「ふふふ」
 そのとき。
「は、は、は……」
「来るね」
「はーくしょん!!」
 桜の花びらが、ぱらぱらと落ちてきた。
「いやー、誰か噂してるのかなー」
 ポケットティッシュを取り出しながら言った。
「噂してるのは高杉くんと杉本くんだよ」
「なんでやねん! あっ!」
「それ花粉症だと思う」
「やっぱり? 風邪じゃなくて」
「うん」
 私は鼻をすすりながら桜を見上げた。
 本当にいつの間に咲いていたんだろう。毎日通勤で公園の横通るけど全然気づかなかった。
 それからしばらくおやつを食べながら桜を眺めた。さくらもちは桜の葉っぱのしょっぱさとあんこの甘さが絶妙だ。
「桜見ながら食べるのおいしいね」
「うん、なんか優雅だね」
「花粉症でなければ最高なのにな……」
「昔の人が杉を植えたのが悪いんだね。戦後すぐのことらしいけど」
「なんで杉なんか植えたんだろ?」
「そのころは杉が高いと思ったんだって。今は誰も使わないのに」
「あほか! いったい日本の山にどれぐらい植えたんだろ?」
「今調べるね」
 桜子はスマホをポチポチしてから言った。
「日本の山の約2割はスギの植林なんだって。昔はブナとかケヤキが多かったのに、今は鼻で悩むスギばかり……」
「あの広大な山にそんなに植えたのか。花粉症になるとも知らず」
「そうそう、何十年も恨まれるよ。ひばりんの鼻に」
「……花粉のないとこに引っ越そうかな。沖縄とか」
「お、それいいね」
 桜子は笑いながら、手提げポーチの中を探った。
「ほい」
 差し出されたのは、小さな青い箱。
「なにこれ?」
「花粉のお薬。ひばりん、絶対花粉症だと思って持ってきた」
 思わず桜子の顔を見てしまった。
「……用意よすぎない?」
「友達だからね」
 桜の花びらが1枚、目の前に落ちた。
 春はいつの間にか来ていた。






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島風ひゅーが 素晴らしい記事ですね♪