도불원인 인무이국 道不遠人 人無異國:漢詩と友
日本の総理が「台湾有事は日本有事(大意)」と問題答弁をし、無責任な発言の撤回もしない中、11月18日北京で日本の外務省アジア大洋州局長が中国外交部アジア司長と協議。

協議終了時のツーショットがなかなか印象的だが、中国の人たちの書き込みなどによれば、劉勁松司長が着用しているのは五四青年装(民国学生装)といい、1919年の反帝国主義抗日運動「五・四運動」を想起させるもの、と。
人民服という解像度で見てしまうと伝わらない、ハイコンテクストなメッセージがある、と感じ入った。
1919年はパリ講和会議で「民族自決」の原則が提示され、中国側は不平等条約の撤廃、二十一カ条(対華21カ条要求)の無効、山東省の旧ドイツ権益(日本がドイツ権益継承)の返還を訴えていた。が、不当な要求を受諾しなければ軍事行動に出ると日本が脅し、結果、中国大陸における日本の権益拡大、大陸侵略の第一歩が認められてしまった。反発した北京大学の学生らが始めた運動が「五・四運動」で、革命運動の始まりでもある。
1919年!
日本に侵略され植民地化された朝鮮半島でも1919年当時命懸けで独立運動を繰り広げ、3月1日にはソウルのパゴダ公園に数千人が集まり独立宣言(己未独立宣言書)を読み上げた。
己未独立宣言書の「日本の信の無さを罪しようとするものではない...
日本の義の少なさを責めようとするものではない」はしかし、反語的に信義を問うように響いてくる。「三・一独立運動」は半島全土に拡がり、朝鮮総督府の軍隊と警察に弾圧され数千人の死者が出たが、五月ころまで断続的に続いた。1919年に世界各地で「民族自決」を訴えた市民たちがバトンを渡していくように広がりつながっていた。
中国の人がそのツーショットを
山水画風タッチのAI人工知能で描いた画に添えられた
漢詩/五言絶句
「袖中乾坤手
不斩来使头
将来言不预
今日且插兜」@ 张梓太太
も多くを語る。
(袖の中の天地の手 使者の首は斬らず
先のことはわからぬが 今日は何もせず(拙訳意訳)
「三国志」を子ども時代に読んでいた人ならわかるはず、使者は斬らないのが暗黙の了解、後年の劉備のように斬る場合はよほどのこと。好戦的妄言でまず波風立て問題を起こした日本側に対し、まだ乾坤手は押し留められ動かされていない。あるいは駐大阪総領事が妄言「台湾有事は日本有事」に反発し書いた「首を斬る(慣用表現か?) 」とリンクし、回収する文脈でもあるのかもしれない。
ちなみに百度やWikiによれば「言不预」は成語「勿谓言之不预(也)」由来。
後になってから事前に警告しなかったとは言わないで、という意味。
「言之不预」は清朝の布告や勅令において頻繁に引用され、1793年、清の乾隆帝が英マカートニー使節団の貿易要請を却下した後、イギリス国王ジョージ3世に宛てた手紙にも「言之不预也」と書かれているという。
その後、現代の中国では外交レトリック、外交用語としても使われてきたが、見たところ、清の時代と同じ、最後通牒的に添えられるもよう。
ゆえに、前述の漢詩の第三句、先のことはわからぬ、将来は予測できない、は含みがあるようにも思える。韓国でよく言われるフレーズ「역사를 잊은 민족에게 미래는 없다(歴史を忘れた民族に未来はない)」とも重なるような歴史観をも秘めているよう。
このツーショットが備えるハイコンテクストなメッセージ。私見だが、侵略虐殺蹂躙被害に戦争の痛みは忘れ得ない、そういった史実を歪曲し歴史的経緯をも無視することなど信義ない言動は許さない、と秘めた怒りはあるが、それについて力による報復はしない・しなかった(周知の通り、中国は戦犯日本に対する賠償金請求も放棄)・しないだろうという意思の、ややアンビバレントな五四青年服だがポケットに手、なのでは。五四青年服という、1919年の歴史を召喚し、過去を引き寄せるスタイルと、歴史を想起させつつ手はポケットに入れた現在、過去と現在、長いタイムスパンが共存するシーン。
さらに、その手の先には過去と現在から生まれる未来が示唆されているよう。
アジア2千万人の人々の命を残虐に奪った日本に対し、アジアの人たちが今も苦痛にPTSDや葛藤とともに抱えている「許そう、しかし忘れない」にも通じる。抑えた痛み悲しみ怒り。しかし、一線を越えられたらもはや許すこともできなくなる。数多の合意や約束(1972年中日共同声明、1978年中日平和友好条約、1998年中日共同宣言、2008年「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する中日共同声明など)や信義さえ失われたら...という未来図も言外に浮かぶ。過去と現在、歴史と現在は無縁ではない、歴史的因果があり連続性があり、結び付いているということもあらためて念押しされているよう。
9月にも書いたが、国連敵国条項が残っているにも拘らず、
中国沿岸部と北朝鮮のほぼ全域が射程に入る長射程ミサイルを今年度中に配備する日本の好戦的態度、「新しい戦前」作りは対米従属の一環か。
長射程ミサイルが日本で初めて配備される熊本県では住民説明会も開催せず。半導体受託製造大手の台湾積体電路製造TSMCも誘致した熊本に
ミサイル配備...
石破前首相が今年9月の国連総会一般討論演説で「アジアの人々は、戦後、日本を受け入れるに当たって寛容の精神を示してくださいました。そこには、計り知れないほどの葛藤があったはずであります。しかし、こうした寛容の精神に支えられて、不戦の誓いの下、我が国は、世界の恒久平和の実現のため、力を尽くしてきました」と語ったが、寛容の背後の、消えない痛みや喪失感と葛藤を浮かび上がらせるような五四青年服×ポケットに手、なのかもしれないとも考える。日本は周辺アジア各国の寛容さに甘え、踏みつけて来た他者の痛みを忘れ信義を踏み躙り続けてきたが、それに対する抑えた怒りと葛藤が混淆する歴史的文脈上の姿でもあるように思う。漢詩がそれを浮き彫りにした(もちろん、漢詩を詠んだ人の視点も含まれているだろうが)。
五四青年装とその漢詩により、時空はぐんと拡張され1919年頃の歴史ともつながり、朝鮮半島などのアジア史とも接続しつつ、「三国志演義」などの古典や漢詩という文学も包含した奥行きあるメッセージが読み取れる。
パレスチナのガザの民族自決権が17日の国連安保理(安全保障理事会 UNSC)でほとんど無視されたショッキングな事態が進行している今、その20世紀からの民族自決権の問題は今なお尾を引き、決して過去のものではないことも
同時に重くのしかかってくるが。
そして漢詩で思い出したのが2020年、新型コロナウィルスのパンデミックが世界を覆った際、韓国と中国がマスクなどを相互に送り合っていた時のこと。箱に添えられた漢詩などの往来が感慨深く、約5年前の当時ブログにも書いていた。中国から韓国へ送られたマスクの箱には「도불원인 인무이국(道不遠人 人無異國)」という漢詩などが書かれていた。

同じ頃、日本と中国も送り合うマスク等に漢詩などを互いに添えていた。
中国語検定試験HSK日本事務局からは約1300年前に長屋王から鑑真に贈られた袈裟にあった「山川異域 風月同天 山河違えど異国に住めど、
ひとつの天の下風月は同じ(拙訳意訳)」。
NPO法人「仁心会」から中国に送った防護服の箱には秦の時代に詠まれたという「豈曰無衣 与子同裳 服がないなら同じ服を着よう(拙訳意訳)」が。
舞鶴市から友好都市大連には王昌齢が詠んだ
「青山一道同雲雨 明月何曾是両郷
青山も雷雨もそれぞれの場所にあって同じに見え
離れていても、月も分かれて見えはしない(拙訳意訳)」
遠くにいても友を思う心。漢詩と友。
参考:AFP BB News

21世紀になっても漢詩と漢字で伝わる・伝えられる友好、いにしえから続く長い交流の記憶を呼び覚ます言葉たち。特に、「도불원인 인무이국 道不遠人 人無異國」「道は人を遠ざけるものではなく、国が違っても人に違いはない(拙訳意訳)」が心に沁みた。
一衣帯水の、近い隣国でお互い助け合っていた。そこには漢詩があり、漢字で思いを伝え疎通していた。今こそ、古から続く交流、長い友好の歴史と、
5年前パンデミック下で励まし合い連帯し漢字を共通言語のようにつかって
漢詩を送り合っていたことを思い出す時ではないだろうか。

最後に、きれいごとばかりでなく、それでもやはり日本による侵略虐殺蹂躙などの戦争犯罪の歴史隠蔽歪曲は目に余る。今年公開された中国映画『南京照相馆/南京写真館 Dead To Rights』を観たが、映画で描写された南京大虐殺の描写はおそらく現実の何百万分の一、何千万分の一にすぎないだろう。
残酷過ぎて描けない、作る方のトラウマになる気もする。フレームの外、映さないもの、抑えた表現から言外から伝わるものもたくさんあった。
この機会に日本でこの映画を公開し多くの人に観てほしい。
韓国ドラマや韓国映画もここ何年かは日本軍「731」部隊の悍ましい人体実験をモチーフにしたものが作られ続けている。一衣帯水、史実に真摯に向き合ってこその戦後80年の節目ではないだろうか。
*余談1
듀스 DEUX 이현도が룰라 Roolaに作った曲「우리에겐」も、漢詩に通じる情緒が。「~우린 멀어졌지만
같은 하늘 아래 있어
하늘을 쳐다보며 서로를 생각해~」は「山川異域 風月同天」や
「青山一道同雲雨 明月何曾是両郷」に通じる、普遍的な思いが表されている。K-Popに流れる詩心と漢詩の共通点が興味深い。

*余談2
先日G-Dragonが韓国の放送局で対談していたが、論語由来の慣用句がふつうに会話に出てきていた。日本ではあまりないこと。
2009年にヒットした韓国ドラマ「華麗なる遺産」は、セリフにもあった通り、孟子のいう「惻隠の情」もテーマ。傍観者になれない、深い同情心を持つことが惻隠の情。
韓国映画などを観ると漢籍の素養が必要と感じることも。
たとえば約10年前に観たヒョンビン主演『王の涙 -イ・サンの決断- 역린(逆鱗)』を観た際は四書の「中庸」も読んで考えさせられていた。
ちなみにG-Dragonは昨年カムバ曲「Power」をパレスチナ系インディレーベルから出し世界中から称賛されていた。パレスチナ人GhaziがCEOのレーベルEMPIRE。これも惻隠の情かもしれない。
*余談3
約10年前「アラブ月間」に参加し以下のような感慨を書いていた。
再掲する。
<現実はネットの上やTVで視るより長い歴史に培われたつながり、文化的風土的つながりが深く、それぞれの文化や時間に溶けこんでいる、細胞にも沁み込んでいる...彼らの生の言葉、声の方が響く。彼らの顔を見ながら声を言葉を聴く方が伝わる>
*余談4
BTS RMが韓国「ㄱ의 순간」展を訪れた時、漢詩(唐詩)風、五言絶句のようなメッセージを、ハングル創製した世宗大王に宛てて書いていたことも思い出す。青年の意で記した清年から、中国語でかつて青年を清年と記していたことも知った。
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