【5/25】中東停戦交渉の難航・高金利長期化・選別相場へ——「強い銘柄だけが生き残る」フェーズの読み解き方
作成日:2026年5月25日
1. 中東情勢——「停戦下の交渉」が抱える致命的な乖離
世界経済全体に重い影を落とし続けているのが、米国とイランの停戦交渉である。4月8日にパキスタンの仲介で2週間の暫定停戦が成立して以降、交渉は何度も延長されながら継続しているが、本格的な合意には依然として至っていない。表面上は「停戦中」であっても、その内実は綱渡りの状態である。
トランプ氏とイラン側の発言が「真逆」になる構造
問題の核心は、米国とイランの認識が根本的に乖離していることにある。トランプ大統領は「もうすぐ合意できそう」「時間は我々の側にある」というトーンで楽観的な発信を続ける一方、イラン側は米国の提示する条件を「深く欠陥がある、一方的」と一蹴し、米国がイラン港湾に対して敷いている海上封鎖こそが問題の根源であると主張している。同じテーブルにいながら、お互いが見ている景色がまったく異なるのである。
ホルムズ海峡——世界経済の生命線をめぐる神経戦
特に重要なのが「ホルムズ海峡」である。世界の原油輸送の超重要ルートであり、もし封鎖や軍事衝突が再燃すれば原油価格は急騰し、世界経済全体に致命的なダメージが及ぶ。ルビオ国務長官は「通航料を徴収しようとするイランの試みは、世界のいかなる国も受け入れるべきではない」と強硬な姿勢を維持しており、米側のイラン港湾封鎖は既に100隻を超える商船を迂回させる事態に発展している。さらに、トランプ氏やその家族への脅迫・暗殺関連ニュースまで報じられており、もし本当に大きな事件が起きれば、株式・暗号資産・為替などすべての市場が一気に混乱に陥るリスクを抱えている。表面上は落ち着いて見えても、現在の市場は「爆弾を抱えた状態」と言える。
2. 金利がなかなか下がらない問題——「インフレが落ち着いても高金利のまま」シナリオ
普通であれば、景気悪化・戦争終結・インフレ低下などが起きると金利は下がりやすい。しかし現在の市場では、「インフレが落ち着いても金利が高いままかもしれない」という懸念が確実に強まりつつある。理由は構造的に二つある。
① AIブームによる「世界的な資金需要の膨張」
世界中の企業がAIに対して桁違いの巨大投資を行っている。データセンター、半導体、GPU、電力設備など、AIインフラの構築には莫大な資本が必要であり、世の中全体が「お金を欲しがる側」に回っている。資金需要が構造的に膨張している状態では、金利は下がりにくい。これはバブルというより、長期的なインフラ更新サイクルが始まったという見方もできる。
② 米国政府の債務問題
米国は現在、歴史的な規模の政府債務を抱えている。投資家の間では「本当に将来この水準を維持できるのか」という警戒感が高まっており、その結果として長期金利が高止まりしやすい構造が形成されつつある。財政リスクが金利のフロアを押し上げているのである。
3. なぜ暗号資産にとって危険なのか——「リスク資産離れ」のメカニズム
金利が高い状態では何が起きるのか。簡潔に言えば、「安全資産でも利回りが取れる」状況になる。
すると投資家は、ハイリスクなアルトコインやレバレッジ取引などのリスクポジションを減らし始める。これは暗号資産市場全体にとって構造的な逆風となる。特に、過剰レバレッジに依存している銘柄、ファンダメンタルズの裏付けが乏しい「草コイン」、投機資金だけで上昇してきた銘柄は崩れやすくなる。市場全体が「規律を取り戻すフェーズ」に入っていると言ってよい。
4. それでも「強い銘柄」には資金が集中している
市場全体は不安定であるが、一部の銘柄には極めて強い資金流入が観測されている。これは「弱気相場」ではなく「選別相場」と表現する方が正確である。
Hyperliquid(HYPE)——過去最高値64ドル超を更新
現在最も勢いがある銘柄の一つがHyperliquidである。分散型取引所(DEX)系で資金が集中しており、5月24日には過去最高値64.24ドルを記録、過去1週間で約46%の上昇を見せている。アーサー・ヘイズ氏が「Holy Trinity(聖三位一体)」の一つに挙げたことに加え、SpaceXのプレIPOパーペチュアル取引が膨大な出来高を引き寄せていることも追い風となっている。
AI系トークン——NEAR、TAO(Bittensor)への資金流入
「AI × Crypto」というテーマには引き続き資金が集まりやすい。NEAR Protocolは動的リシャーディングの発表で週次49%の急騰を見せ、Bittensor(TAO)にも資金流入が続いている。AIそのものが世界的なメガテーマである以上、その関連トークンへの注目は容易には冷めない。
Solana(SOL)——「ミームコインチェーン」からの脱皮
以前は「ミームコインチェーン」という印象が強かったSolanaだが、最近は機関投資家向け・本格金融向け・実需系サービスへとエコシステムを広げようとしている。この方向転換が成功すれば、SOLは中長期的にさらに高い評価を受ける可能性がある。
5. 業界全体はまだ苦しい——Robinhoodクリプト部門の象徴的な動き
一方で市場全体を俯瞰すると、取引量の低下、個人投資家の疲弊、アルトコインの低迷など、厳しい状況も継続している。
その影響は具体的な企業の数字にも現れている。Robinhoodは2026年第1四半期に暗号資産関連収益が前年同期比47%減(1億3,400万ドル)となり、5月22日にはRobinhood CryptoのCOOであるタニヤ・デニソワ氏の退任が報じられた。これは単なる人事ではなく、リテール主導の暗号資産トレーディング・ビジネスモデルそのものが構造的な転換点を迎えていることを示している。今は、本当に強い銘柄だけに資金が集中する相場になっている。
6. なぜ今、日本株が注目されているのか
海外マネーが今、日本株に対して大規模に流入している。理由は主に三つある。
① 日本株のバリュエーション魅力
海外投資家から見ると、「日本企業は技術力があるのに株価が安すぎる」という認識が広がっている。特に、半導体・宇宙・AI関連部品・精密機械などの分野が再評価されており、これらは高市政権の「17の戦略投資セクター」とも重なっている。
② 日本企業のIR改善
以前の日本企業は英語での説明不足、IR機能の弱さ、海外投資家軽視という問題を抱えていた。しかし最近はかなり改善が進んでおり、海外投資家にとって投資しやすい環境が整いつつある。コーポレートガバナンス改革の累積効果が、ようやく実を結びつつある段階と言える。
③ 米国株市場の飽和
米国市場は既に超巨大化しており、次の投資先を模索する資金フローの中で、日本市場が有力な選択肢として浮上している。高市首相就任後、海外投資家による日本株の純買い越しは加速しており、一部の予測では今後数カ月で「安倍政権期のピークを超える」可能性すら指摘されている。
総括
現在の市場は、地政学リスク(停戦下の本格交渉難航)・高金利長期化・世界景気不安という三重の重い問題を抱えている。表面上は静かでも、その内実は爆弾を抱えた状態であり、いつどこから火がついてもおかしくない。
しかしそのなかでも、AI・一部の強い暗号資産(HYPE、NEAR、SOL、TAO)・日本株には資金が集まり続けている。つまり今のマーケットは「何でも上がる相場」ではなく、「本当に期待されるテーマだけが生き残る相場」へと明確に変質しつつある。
選別相場における最大の武器は「乗り遅れの恐怖」を克服する規律である。地政学的なノイズに振り回されることなく、構造的に強いテーマと銘柄を見極め、テクニカル的に有利な水準を辛抱強く待つ——それがこの不安定な局面における最大の優位性となる。
参考ソース・ノート作成に用いた記事
本記事の作成に際して、以下の記事・公的情報を参照しました。直接確認されたい方はリンクからどうぞ。
【中東情勢・米イラン停戦交渉】
CBS News「Iran-U.S. negotiators have agreed to broad principles of agreement」(ルビオ国務長官の発言、ホルムズ海峡通航料、米国による海上封鎖が100隻に到達したことなど) https://www.cbsnews.com/live-updates/iran-war-trump-us-peace-talks-strait-of-hormuz-control/
UK House of Commons Library「US-Iran ceasefire and nuclear talks in 2026」(2026年4月以降の停戦交渉の経緯と現状) https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-10637/
Wikipedia「2026 Iran war ceasefire」(停戦合意の経緯・参加国・現状の包括的整理) https://en.wikipedia.org/wiki/2026_Iran_war_ceasefire
【Hyperliquid(HYPE)】
Coinbase「Hyperliquid (HYPE) Price」(5月24日の過去最高値64.24ドル、1週間で46%上昇) https://www.coinbase.com/price/hyperliquid
BanklessTimes「HYPE Price Prediction: Top DeFi Expert Explains the Hyperliquid Surge」(5月21日に50ドル突破、年初来156%上昇) https://www.banklesstimes.com/articles/2026/05/21/hype-price-prediction-top-defi-expert-explains-the-hyperliquid-surge/
【NEAR Protocol(動的リシャーディング・アーサー・ヘイズ氏発言)】
CoinDesk「Near Protocol to automate its own growth and its token is skyrocketing」(5月22日、動的リシャーディング発表とNEAR急騰) https://www.coindesk.com/markets/2026/05/22/near-protocol-to-automate-its-own-growth-and-its-token-is-skyrocketing
Decrypt「NEAR Protocol Jumps 28% on Privacy, AI, and Scaling Upgrades」(週次45%超の上昇、5月20〜22日の一連の発表) https://decrypt.co/368737/near-protocol-jumps-28-on-privacy-ai-and-scaling-upgrades
Crypto Briefing「NEAR Protocol surges 30% after Arthur Hayes calls it part of 'holy trinity'」(アーサー・ヘイズ氏の「Holy Trinity」発言、6カ月ぶり高値2.30ドル超) https://cryptobriefing.com/near-protocol-surges-arthur-hayes-holy-trinity/
【Robinhoodクリプト部門の状況】
CoinDesk「Robinhood's chief operating officer of crypto Tanya Denisova is leaving the firm」(5月22日、COO退任の報道) https://www.coindesk.com/business/2026/05/22/robinhood-crypto-coo-tanya-denisova-is-leaving-company-amid-revenue-slowdown
FinanceFeeds「Robinhood Crypto COO Exits as Revenue Falls 47%」(暗号資産部門の収益47%減・1億3,400万ドルの詳細) https://financefeeds.com/robinhood-crypto-coo-exits-as-revenue-falls-47/
【日本株への海外資金流入・高市政権の成長戦略】
Bloomberg「Japan Stocks See World-Beating Start to 2026 on Takaichi Boost」(高市政権下での日本株の急騰、半導体・防衛・エネルギー・建設セクターへの資金集中) https://finance.yahoo.com/news/japan-stocks-see-world-beating-044550974.html
The Japan Times「Takaichi may beat Abe in luring global money to Japan stocks」(向こう数カ月で10兆円の純買い越し予測、安倍政権期のピーク超え可能性) https://www.japantimes.co.jp/business/2026/02/10/economy/takaichi-global-money/
Invesco「2026 Investment Outlook – Japan Equities」(コーポレートガバナンス改革、海外投資家の回帰、賃金成長と国内消費の堅調さ) https://www.invesco.com/apac/en/institutional/insights/equity/japan-equities-outlook.html

