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2026年W杯 私的まとめ(1) アルゼンチン代表に感じた「モヤモヤ」

2026年のサッカー・ワールドカップが7月19日(日本時間では20日)の決勝をもって幕を閉じました。以下は、今大会に関する私の個人的な感想をまとめたものです。サッカーの批評を専門とする解説者やスポーツライターと違い、単なるファン目線の感想であることをご理解ください。

第1回目は、決勝の(とんでもない)展開と今大会のアルゼンチン代表を巡る「モヤモヤ」について書いていきます。

メッシ=汚れた英雄

決勝は、4年前のカタール大会で優勝したアルゼンチンと、ヨーロッパの直近の大会で優勝したスペイン代表の対戦でした。FIFAランキングでいえば1位と2位の戦いで、互角になるはずでした。

ところが蓋を開けると、アルゼンチンはスペインに対し終始守勢に回る展開で、前後半の90分でシュートはゼロ。対するスペインは、前半こそ苦労したものの、後半にはシュートを何本も放ちました。アルゼンチンのゴールキーパー(GK)のマルティネスは見事なセーブで自チームを救い続けました。

内容はスペインが優勢ながら、スコアは0対0で30分の延長戦へ。延長に入り、アルゼンチンのエンソ・フェルナンデスが2枚目のイエローカードを受け、退場処分となりました。その時アルゼンチン代表の英雄、リオネル・メッシが打った「芝居」が話題になっています。

https://sports.ndtv.com/fifa-world-cup-2026/lionel-messis-attempt-to-get-spain-star-sent-off-during-world-cup-final-gets-brutal-verdict-by-wayne-rooney-sad-11796214

この英文ニュースによれば、フェルナンデスが「退場」と決まった瞬間、メッシが審判に対して「(スペインの)ククレジャが口で手を覆って自分に話しかけた」と訴えたのです。今大会から導入された新ルールで、相手選手に話す時に口を手で覆う仕草はレッドカード(退場)の対象となります。

しかし審判はククレジャが違反行為をしたとは認めませんでした。メディアやサッカー関係者によれば、メッシは、アルゼンチン代表が10人に減って劣勢になることを怖れて、フェルナンデスの退場が決まった瞬間、スペインの選手を1人退場させるために嘘をついたと考えられています。

引用した記事の写真をもとにアクリル・ガッシュで描きました。
スペインが優勝した時のアルゼンチン選手がいっせいに背を向けた行為(後述)に加え、スペイン代表のロドリが大会MVPと発表された際には、会場のアルゼンチンサポーターから「メッシ」コールが起こったそうです。何とも後味が悪いですね。自分たちが同じことをされたら?という想像力が欠如しているように思いました。

スペイン優勝→アルゼンチン選手とコーチの暴力行為

内容において上回っていたスペインは、交替で投入されたフェラン・トーレスが先制ゴールを決め、1対0でアルゼンチンに勝ち越します。アルゼンチンも必死に攻撃しますが、スペインの強固な守備を崩せませんでした。

延長も含めて120分の試合が終わり、スペインの優勝が確定した瞬間、スペインの選手たちは喜びを爆発させます。ここで、アルゼンチンのバルデス選手による暴力事件が勃発します。

「ゲキサカ」のニュースによれば、バルデスが暴力をふるう以前にきっかけがあったとのことですが、いずれにしてもスペインの選手を殴ったことは事実です。これに加えて、アルゼンチン代表のコーチ、アジャラ氏がスペインのダニ・オルモ選手を殴ったという動画も拡散されており、FIFAはおそらく一連の事象を調査していると考えられます。

仲間の暴力を傍観するメッシ

SNS上で拡散されている動画には、この暴力をじっと見ているメッシの背後からの姿があります。チームで最年長かつ他の選手から尊敬されているレジェンドが止めに入ることも「おい、止めろ」と声をかけることもしません。
私はこのメッシの背中に「上手いのはもちろんだけど・・・これで世界一のサッカー選手?」とがっかりしてしまいました。

準決勝のイングランド戦で・・・

アルゼンチン代表は準決勝のイングランド戦の後にも、サポーターから受け取った横断幕を選手がピッチ内で掲げたという事件を起こしています。この横断幕には「フォークランドはアルゼンチンの領土」と書かれていました。

政治的なメッセージを掲げることはFIFAのルールで禁止されています。横断幕を持っていた複数名の選手は「(処分を受けて)決勝に出られない?」との懸念がメディアでささやかれましたが、FIFAはすぐ「該当する選手は決勝に出場可能」と発表しました。

FIFAは出場停止ではなく「罰金などで処分を課す」とのことですが、これもなんとなくモヤっとする話です。また、この騒動で、横断幕を直接手に持っていたのは4名の選手だったと言われていますが、その横で一緒に笑っていた選手の一人にメッシがいました。
ここでもメッシは、自分より若い選手たちの「暴走」を止めることはせず、むしろ一緒に「乗って」いたような印象を受けます。

この試合の後では、イングランドのベリンガムも「平手打ち」事件を起こしています。ベリンガムにも三位決定戦への出場停止処分は課されませんでした。「喧嘩両成敗」ではなく、「喧嘩は両方とも成敗なし」にしたのでしょうか。
仮にアルゼンチン代表が4名の出場停止となれば、決勝で圧倒的な不利となったはずで、この処分は明らかにアルゼンチンに有利に働いています。

なお、もう一方の準決勝、スペイン対フランスでは、試合後のこうした問題は起こりませんでした。また決勝の前日に行われた三位決定戦の後では、フランスとイングランドの選手が複数、円陣を組んで互いの健闘を称える、心温まるシーンが見られたほどでした。
そのため「準決勝や決勝という重要な試合なので荒れるのは仕方ない」とは言えないように思います。

スペインを称えず背を向けたアルゼンチン代表

決勝後に、準備時間をある程度置いて行われた表彰式では、優勝したスペインがワールドカップを授与される際に、アルゼンチン代表の選手が揃って背を向けた態度も、メディアから批判を受けました。

試合終了直後は、頭に血が上ってバルデスが暴行に及び、敗北に失望したメッシにはそれを見ても制する気力がなかったと仮定しましょう。「仕方ないね、ショックだったから」とメッシやアルゼンチン代表に同情するファンもいたはずです。

しかし表彰式までの間には少なくとも10分以上の間が開いていおり、その間、頭を冷やすことは可能だったはずです。表彰式でのむすっとした態度は、子供のようでした。そして全員が同じく背を向けた事実が、メッシを含む年長者や監督にそれを制する意志がなかったことを暗に示しています。

移動距離などの格差問題:スペイン代表は圧倒的不利だった

アメリカという広大な国に加え、カナダ・メキシコという隣国にまたがった今大会では、「移動距離格差」の問題が大会前から指摘されていました。下記は大会前にある方がまとめた「グループリーグ1位通過の場合の決勝までの移動距離ランキング」の表です。

これを見ると明らですが、6,870キロのアルゼンチン代表に対し、スペイン代表の総移動距離は12,637キロと、ほぼ倍となっています。
移動距離だけをとってみれば、アルゼンチンよりも準決勝でスペインに敗れたフランスが6,137キロとやや少なく、他にも総移動距離が5,000キロ台の国はありましたが、スペインとの格差は歴然としています。

移動距離が長いと蓄積される疲労には大きな差が出ます。それ以外にも国をまたぐ場合、入国審査や気候の変化など、心身ともにストレスが蓄積されます。開催国以外の代表選手にとってW杯は「アウェイ」の環境で1か月を過ごすわけですから、こうした追加的なストレスは、試合への影響という意味で、無視できないはずです。アルゼンチンはすべて米国内の移動であり、移動距離以外の追加的ストレスも少なかったと考えられます。

プレー環境の格差問題(冷房OR暑いスタジアム)

決勝を放映するDAZNの実況が淡々と告げた事実として、アルゼンチン代表は準決勝までの試合を、すべて米国内の「涼しいスタジアム」で行ってきました。日本でのサッカー観戦に慣れている人からすれば驚きですが、米国のスタジアムには「冷房完備」のところがあります。アルゼンチンはすべて米国内で、決勝のニューヨークを除けばすべて冷房が効いた、または日よけの屋根のある、あるいは涼しくなった夜間に試合を行ってきたわけです。

対するスペインは、メキシコのグアダラハラでの試合を経験しています。またアルゼンチンと準決勝で当たったイングランドは、決勝リーグラウンド16において、標高の高いメキシコシティで、酸素の薄い過酷な環境の中、開催国のひとつであるメキシコと延長までを戦っています。

このように、移動距離だけでなく、プレー環境においても、前回のカタール大会で優勝したアルゼンチン代表はかなり有利な状況にあったのです。

VAR介入はアルゼンチン有利に

近年のサッカーにおいて、VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)は重要な役割を果たしています。今大会では「アルゼンチンに不利な場合はVARが適用されず、アルゼンチンの相手にはVARが大活躍」と揶揄される事態となりました。

まずは決勝トーナメント、ラウンド16のエジプト戦でのVAR判定が大きく結果に影響した、と批判の対象になりました。しかしこれは専門家の間では大きな議論を呼んでいません。
次の準々決勝ではスイスと当たりましたが、スイスのエンボロが退場となるに至る過程について疑問を呈する識者が数人いたようです。

メッシを優遇する経済的メリット?FIFA陰謀論

メッシが今日のサッカー界において最も有名な選手であり、世界で尊敬されている人物であることには、誰も異論を唱えないでしょう。

選手としての最盛期をヨーロッパのクラブで戦ったあと、「サッカー不毛の国」アメリカのクラブ(マイアミ)でプレーし、商業的な盛り上げに貢献しているのも、メッシの重要な功績だと思います。

普段サッカーを観ない人も、メッシの名前なら知っており、そのプレーを見てみたいと思うほど、メッシのブランド力は高いのです。今回の北中米大会では、チケット販売も好調で、特にアルゼンチン代表の試合では売り切れが相次いだそうです。今大会をビジネス的な成功に導いた立役者の一人がメッシ、と言っても過言ではないでしょう。

これまでの事実を積み重ねれば、FIFAがアルゼンチン代表をできるだけ「決勝にスムーズに行けるように」環境を整えた、と疑われるものやむなしと思われます。通常なら、そうした疑いは「陰謀論」の域を出ないものですし、まともなジャーナリズムなら否定して叱るべきでしょう。

しかし今大会においては、そんな「FIFA陰謀論」に説得力を持たせるような、重要な事案が起こりました。それは、アメリカ代表バログン選手の次節出場停止を「1年間の執行猶予とする」FIFAの決定です。トランプ大統領が「FIFAに電話して説得した」と自慢げに言ったことが報じられたのでご存じの方も多いでしょう。

バログンの執行猶予は前代未聞の決定であり、明らかに恣意的、例外的なものです。このような決定を平然と行うFIFAを見ると「北中米大会を経済的成功に導くために、FIFAの上層部が恣意的にアルゼンチン代表に下駄を履かせた」と疑われても仕方ない、と私は思っています。

「マリーシア」の許容範囲

サッカー解説者や有識者がよく口にする言葉に「日本代表には『マリーシア』が足りない」があります。「マリーシア」とはサッカーにおける選手の「ずるがしこさ」と訳され、特に中南米の選手が伝統的にそれを色濃く持っていると言われます。

今大会では、優勝したスペイン代表チームのエース、ラミン・ヤマル選手が準決勝のフランス戦で、相手ディフェンダーに「わざとファウルをもらいに行ったのでは?」と思われるようなシーンがありました。そう、マリーシアは中南米の専売特許ではありません。程度の差はあれ、ある程度のマリーシアは他のチームでも発揮されてきたのです。

このコラムで述べてきたアルゼンチン代表選手の暴力行為や激しいタックル、そしてメッシがククレジャ選手を退場させようと審判に「(嘘の)告げ口」をしたことも、おそらくは一種の「マリーシア」なのでしょう。しかし「マリーシア」だから、中南米の文化だから、それをそのまますべて許容すべきなのか、はまた別の話です。

「特別な選手」は「例外扱い」?

メッシのような「特別の選手」がすべて「善人」や「優等生」である必要は全くありません。何かが特別に秀でていれば、他の部分が犠牲になることもあるでしょう。

20年前の2006年には、フランス代表のジネディーヌ・ジダン選手(当時)がワールドカップ決勝で、彼に侮辱的な言葉を浴びせたイタリア代表選手に「頭突き」をしてレッドカードで退場したという事件がありました。ジダンと同時代に活躍したイングランド代表選手、ウェイン・ルーニーも試合中に相手選手を蹴るなど、素行に問題があったことが知られています。

アルゼンチン代表ではすでに故人となったディエゴ・マラドーナが活躍した時代、ドーピング疑惑があったことも有名な話です。特別の選手は時に人間的な危うさを同居させている場合があり、周囲はそれを知りつつ、監督や仲間が手綱を取りながらプレーさせてきたと言えます。

今回メッシが見せた「嘘の告げ口」「政治的横断幕の掲示に笑顔で参加」「暴力行為の傍観」「優勝チームに全員で背を向ける」という連続技は、合わせてみれば、とっくにジダンの頭突きを超えたように思えてなりません。彼の偉大な功績は認めますが、今大会では汚れたヒーローに堕ちてしまった、そんな印象を私は受けました。

近年、時代は大きく変わり、サッカーのヒーロー像も変化の岐路に立っているように思います。次回のコラムでは、今大会で現れた「新しいヒーロー」について、ポジティブな側面からまとめてみたいと思います。(続く)




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