AYA世代のがん2:医療者のみなさんに知ってほしいこと
「AYA世代」と呼ばれる若い世代のがん患者さんが増えています。進学・就職、結婚・出産・子育てといったライフイベントが目白押しの世代。高齢の患者さんとは異なる視点での支援が必要な場合が多く見られます。大同病院でもその支援に力を入れていくなかで、医療者側の向き合い方にも課題があることがわかってきました。
「AYA世代のがん」後編では、医療者の方たちに知っていただきたいことを取り上げます。ゲストは前編に引き続き、大同病院「がんサポートチーム」の一員でがん性疼痛看護認定看護師の荒木早希さんです。(2025年4月30日Voicyにて配信)
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医療者が見落としがちなAYA世代の課題
イズミン 前編では若い世代ならではの悩みや支援の必要性についてお伺いしました。今回は医療者の視点から改めてお話を伺います。
アラキ 入院の短期化が進む中で、私たち支援する側がAYA世代の患者さんにどのタイミングで関わるかが、チームにとって大きな課題です。
AYA世代の方たちは15~39歳と若いので、体はお元気で認知機能はしっかりしている。生活面でも自立している方がほとんどで、医療者の側も、「治療もきっと予定通りにこなして退院していくだろう」と予測してしまうので、問題を見落としがちです。本人に「心配ごとがない」と言われても、AYA世代は多くのライフイベントを抱えているので、そうした生活面の把握をしたうえでのサポートが必要だと思います。
シノハラ がん患者さんは高齢の方が多いから、介護をどうするのか、終末期をどう考えるのかといったことに医療者は常に接しています。一方、若い方は元気で理解力もあってお仕事もされているので、早期の退院を希望されるし、どうしても彼らが抱える固有の社会的な問題を見落としがち。それをサポートしたいわけだけど、なかなかきっかけ作りが難しいってことですよね。
アラキ がん患者さんのケアは、入院中や検査の段階で現場から「がんサポートチーム」に依頼があって介入することが多いのですが、私たちが情報を把握する前に退院してしまうケースも多いです。入院前から外来看護師との情報共有や、「苦痛スクリーニング」(どの程度、身体や精神的な痛みを感じているかを端的に調べる)によって少しでも早く患者さんの不安や悩みに気づけるよう、努めています。
大切なのは寄り添うサポート
イズミン 例えば口腔がんでは、話す、食べるといった人間の根本的な活動に直結しますし、見た目も大きく気になるところですよね。若くしてそのあたりに障害を持つかもしれないというのは、精神面でも機能面でも不安が大変大きいのではないでしょうか?
アラキ そうですね。口腔がんの患者さんはがんの切除が終わった後に機能面で問題が出てくるので、いろいろなサポートが必要です。
口腔がんに限らず、治療前から治療中、治療後までをがんサポートチームを中心に、いろいろな専門職種が連携してフォローする体制が、当院は比較的整っていると思います。それを強みとして、さらに全科が手厚い体制を作っていければ、患者さんにとってさらに良い状況になると思っています。
シノハラ 口腔がんで手術をすると、顔がちょっと変形したり、話す、食べるといった基本的な動作にも相当影響が出るので、外見を整える形成外科の介入が必要になったり、食事の仕方、喋り方などのリハビリテーション(言語聴覚療法)も必要になってきますね。
アラキ 医療者が患者さんの「生活者の視点」をしっかりと持って、どう関わっていくかがとても大切です。主治医からのインフォームド・コンセントの際も医療的な説明だけではなく、「この患者さんはこれから自分らしくどう生きていくか」に目を向けること、が大事だと思っています。
イズミン 緩和ケアの領域では、「全人的苦痛」とよく言われますが、肉体の痛みだけではなく社会的な痛み、心の痛みにも対するケアが必要ということが言われていますよね。
アラキ おっしゃる通りです。AYA世代は特に社会的な苦痛やスピリチュアルペインという視点が重要です。例えば「なぜこんなに若い私が」と怖さを感じていたり、仕事を一旦休まなければならない場合は役割の喪失感、周囲に同じ経験を持つ方がいないために孤独感などを感じたりすることがあるので、こうした辛さや痛みのサインを医療者が見逃さないことが大切です。
シノハラ 緩和ケアというと「終末期」のイメージが強いですが、これからどうやって生活していくのか、患者さんが社会においてどういうふうに活躍したいのか/活躍していくのか、そのためにはどうしていけばいいのか、といったことに寄り添っていく必要がありますね。
イズミン このように医療者側の認識が変わっていくことで、もっと早い段階から介入できる可能性も出てきますね。
アラキ はい。それがまさにこれからの課題であり、私たちのテーマです。実はAYA世代の方たちと現場で関わる私たち若手医療者は、同じ世代なんです。
もし自分が「がん」と言われたらどうするかをイメージすれば、おのずとわかることもあります。そのように共感したうえで、医療者の能力を発揮して、患者さんの今後のことに寄り添ってサポートしていけばよいのではないかと思っています。
シノハラ われわれ医療者が、自分ががんと宣告されたら、とか、自分の家族ががんになったらとイメージして、患者さんに寄り添い、共感し、医療を実践するって極めて重要なことですよね。
アラキ 患者さんを1人の生活者として見る視点、そして多職種が連携することで支えられる可能性をこれからも大切にしていきたいと思います。今後も「がんサポートチーム」の看護師として患者さんの味方であり続けますので、お気軽に相談いただけたらなと思っています。
イズミン アラキさん、2回にわたりありがとうございました!
ゲスト紹介
荒木早希(あらき・さき)
看護師。新卒で大同病院に入職して17年目。入職10年のときにがん性疼痛看護認定看護師の資格を取得。
好きなものは「食器」で、昨年念願の長崎のはさみ焼のお皿を揃え、そのお皿に食事をのせて家族に提供する時間が楽しみになっている。
