LINE公式アカウント、全社1つか店舗別か
複数店舗の事業でLINE公式アカウントを始めるとき、最初に決めるのがアカウントの分け方。後から変えにくい設計判断なので、分岐の考え方を先に整理しておく。
なぜ最初に決めるべきか
アカウント構成は、あとで統合・分割しようとすると友だちリストを移行できない問題に必ず当たる。LINEの友だちはアカウント単位の資産で、別アカウントへ引き継ぐ手段がない。店舗別で始めて全社1つにまとめたくなっても、各店の友だちに「新アカウントを追加してください」とお願いする以外にない。
だから、この判断だけは運用開始前に固めておく価値がある。
3つの構成パターン
パターン1: 全社で1アカウント
利点: 管理が一元化。友だち数が集中するので認証・広告などの施策が打ちやすい。ブランドの発信が統一される
欠点: 配信の課金は「配信人数×回数」なので、全店の友だちに一斉配信すると通数が膨らむ。店舗ごとの情報(各店のクーポン・イベント)を全員に送ると、関係ない店の情報が届いてブロック要因になる
向く: 商圏が重なる都市型の多店舗、EC併設でブランド単位の発信が主、店舗数が少ない(2〜3店)
パターン2: 店舗別アカウント
利点: 友だち=その店の商圏の顧客なので、配信が自然にセグメントされる。通数の無駄が出にくく、ブロックも起きにくい。店長に運用を委譲しやすい
欠点: 管理コストが店舗数分。デザイン・文面の品質がばらつく。全社キャンペーンは各店で個別配信になる。プラン料金も店舗数分かかる(無料プランで始められる規模なら問題になりにくい)
向く: 商圏が独立した地域多店舗(飲食・美容・整体など)、FC
パターン3: 本部+店舗の併用
本部アカウントでブランド発信・全社キャンペーン、店舗アカウントで来店促進・予約対応
利点: 役割分担が明確。欠点: 顧客から見ると「どっちを追加すればいいのか」問題が起きるので、追加導線の設計(店頭は店舗アカウント、Web・広告は本部)を決めておく必要がある
向く: 店舗数が多く、ブランドマーケティングと店舗集客の両方を本気でやる規模
判断の軸は3つ
商圏が重なるか: 重ならないなら店舗別が素直。顧客にとって「隣町の店のセール」は無関係な配信でしかない
配信の主語が会社か店か: 発信したい内容がブランドの話なら1つ、各店の話なら店舗別
運用する人がどこにいるか: 本部に運用担当がいるなら1つでも回る。店長運用なら店舗別+ルール整備
課金構造の面では、店舗別は「自然なセグメント配信」として機能するため、通数コストの観点で有利なことが多い。全社1アカウントで店舗別配信をやる場合は、絞り込み配信・オーディエンスの設計が必須になる(『LINE配信コストの下げ方。セグメント配信の実務』)。
全社1アカウントで店舗を扱う技術的な手段
1アカウントに寄せる場合でも、開発で店舗別体験を作る余地はある。
友だち追加時の流入経路(店舗別QRコード)で店舗タグを付け、店舗別に絞って配信する
リッチメニューをタグ別に出し分けて「マイ店舗」のメニューを表示する
予約・会員証をミニアプリにして、店舗選択を内部で持つ
これはMessaging API開発の領域(タグ管理はツールでも可)。「1アカウントの管理のしやすさ」と「店舗別の体験」を両立する構成として、中規模以上の多店舗でよく採用される。
リスク分散の観点
アカウント凍結は原則復元不可なので、全友だちが1アカウントに集中している状態は、リスクも1点に集中している。店舗別・本部併用の構成は、万一の際に被害を局所化する効果もある。凍結対策の全体は『LINE公式アカウントの凍結対策。友だち資産を守る』に書いた。
まとめ
アカウント構成は後から変えにくい(友だちの移行手段がない)。開始前に決める価値がある
商圏が独立なら店舗別、ブランド発信主体なら全社1つ、両方本気なら本部+店舗の併用
店舗別は配信の自然なセグメントとして通数・ブロックの面で有利。1アカウント構成ならタグ・流入経路の設計で店舗別体験を作る
友だち資産の集中はリスクの集中でもある
TodoONadaでは、複数店舗のアカウント設計と、店舗タグ・出し分け配信のMessaging API開発を受けている。店舗を増やす計画があるなら、1店舗目の設計段階から相談してもらうのが一番安く済む。お問い合わせはこちら。
