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転職して、「居場所」がない…職場で孤立していた自分が、働きやすくするために取り組んだ3つのこと

この記事は、前回の記事の続編です。 職場に「居場所」を失った私が、どうやって「居場所」をつくっていったのか。前回とは別の観点で、もう少し詳しく実体験をもとに書いていきます。

新たな職場環境となる方も多い4月。この時期だからこそ、改めて当時を振り返り、今悩む人の解決の糸口になればと思い、書いてみます。

前回の記事では、「こどもの居場所づくり」を仕事にしてきた自分が、転職先の職場で居場所を失ったこと。そして「セルフ・オンボーディング」という考え方を基に、4つの支援者ネットワークを意識したこと。その結果、少しずつですが光が見えてきた経緯をお伝えしました。

今回は、「で、その4つのネットワーク、どうやって手に入れるんですか?」という、ツッコミへの私なりの答えです。

入職間もないのに、どうやって4つの支援を獲得するための関係をつくればいいのか?という悩みに応えられればと思います。

そのヒントは、私の転職時のサバイバル本「転職学」にあります。本書の内容と実体験を踏まえ、今回は3つのポイントに絞って振り返ります。

ポイント① 「〇〇では〜」を、封印する

転職者がやりがちなこと、そして(私もやってしまった)失敗として、まず挙げたいのが「出羽守」です。

「出羽守(でわのかみ)」とは、コトバンクにこう書かれています。

出羽国の長官。
《連語「では」と「出羽」をかけて》「海外では」「他業界では」のように、何かにつけて他者の例を引き合いに出して語る人のこと。多くは揶揄やゆの気持ちをこめていう。ではのかみ。

(出典) コトバンクより

本来は、出羽国(山形あたり)の守備職を意味する言葉。転職者の失敗として問題になるのは、俗語として派生した「2」のほうです。

「前の職場では、こういう資料づくりをしていたんですが…」 「前の職場では、打ち合わせのやり方がこうだったので…」

たとえば、こんな「ではの守」です。

私の場合、NPOから省庁行政官への転職でした。働き方の共通点を探す方が難しいくらいの環境変化です。決裁の取り方、仕事のスピード感、求められる成果の性質。使う言葉すらも違う。何もかもが違いました。

だからこそ「前の職場では〜」と比較したくなる気持ちは、当然といえば当然でした。

当時、民間から省庁に転職した似た境遇の同僚が何人かいました。同じ葛藤を抱える、心強い仲間です。ただ、この仲間たちが、ある意味で自分の中に潜む「出羽守」を促進していました。

ランチに行くたびに、こんな会話で盛り上がるのです。

「なんで、もっと●●しないんだろう。民間では〜」

出羽守同士の会話は、同じ葛藤を持つ者同士として共鳴し合える。それ自体は、心の安定につながります。でも、それはあくまで「転職者組」での話です。

逆の立場に立ってみると、この状況はどうでしょうか。まだ何者かもわからない転職者が、「●●では〜」と話してくる。これは、暗に自分たちのやり方を否定するようなコミュニケーションです。正直、不快だし、メンドクサイでしょう。

終いには、こう返されます。

「●●では〜と言ってますが、今あなたがいるのは、ここです。ここでは、こうなります。」

そりゃ、当然の反応です。出羽守のまま職場にいる限り、「うちの人」とは思われない

ただ、注意が必要なのはここからです。「●●では〜」と口にしていないから大丈夫、とはなりません。転職者組や職場の外の人とばかり話していれば、中の人からすると「距離を置かれているのかな」と映ります。

言葉にしていなくても、行動が暗にメッセージを発してしまっている。出羽守は口癖だけの問題ではなく、行動の問題でもあるのです。

当たり前ですが、その場の仲間として認識されなければ、職場は居場所になりにくいということです。

とは言っても、じゃあ、どうしたらよいのか。という疑問が生まれます。

ポイント② 違和感は、こっそり貯める

答えは、「違和感ノート」 です。

幸運なことに、転職前『転職学』の著者・中原先生から直接アドバイスをいただく機会に巡りあえました。

転職すると、いろんな違和感に出会うと思う。その違和感を書き留める、違和感ノートをつけるといいよ。

この「違和感ノート」とは文字通り、自分が新しい職場で感じた「もやもや」「なぜ?」「前とは違う」という違和感を、そのままメモしておくだけのものです。

まさに、このnoteの記事も、当時書いた違和感ノートを見直しながら書いています。(久しぶりに読むと、あの頃の葛藤がありありと蘇ってきます…)

当時の私は「面白そうだからやってみるか」くらいのかるーい気持ちで始めました。

ところが、振り返ってみると、これが実にうまくできている仕組みでした。この違和感ノート、2つの効能があります。

効能① 背景が理解できることで、組織に馴染みやすくなる

「●●では〜」と感じる感覚は、前の職場と今の職場を比較した結果に生まれる「差分」とも言い換えられます。この差分は貴重な観察眼の結果です。

この差分を観察することで、状況を俯瞰し、背景を理解できるようになります。なぜそのやり方が取られているのかを、客観的に捉え直すことができる。

転職者からすると一見「なぜ?」と思われるやり方も、組織にとっては長い積み重ねの結果としての合理的な選択です。そのやり方には、理由があります。

ただ、背景が理解できれば、「なるほど!」と合点がいくことが多いものです。これは、組織に馴染んでいくプロセスとして、とても大切なことです。

効能② 変革の種を、あたためてとっておける

さらに、俯瞰と背景理解だけではなく、もう一つの効能があります。それは、いつか組織を少しだけ変えるための「種」になり得るということです。

転職直後にその違和感を口に出すのは、信頼もなく実績もない状態での「変革宣言」に等しい。それは、タイミングが早すぎます。だからこそ、その違和感を封印するのではなく、貯蓄する

ノートに書き留めることで「今はまだ言わない」を選ぶ。郷に入っては郷に従いながら、でもその郷の中で感じた引っかかりは消さずにとっておく。

組織に慣れていくと、不思議なことが起きます。違和感はだんだんと「違和感」として感じなくなっていきます。それが「馴染む」ということです。でも同時に、変革のチャンスを見逃すリスクでもある。だからこそ、ノートが重要なのです。

出羽守を封印し、まず馴染む。ただし、違和感は封印せず、こっそり貯めておく。これは、職場を「居場所」としていくために、とても重要なものでした。

ポイント③ ソーシャルスキルを発揮する「場」をつくる

もうひとつのポイントが、ソーシャルスキルの話です。人が新たな環境に適応していくためには、良好な人間関係を築く必要であり、対人関係のスキルが求められます。

『転職学』ではこう書かれています。

そうした対人関係的な「スキル」について、社会心理学の領域では「ソーシャルスキル」という名称で研究が行われています。社会の中で他者と適切に交流していくために、必要な行動や認知の能力が「ソーシャルスキル」であり、それは「生得的な性格」ではなく、「獲得できるもの」である、と言う点が重要です。

(出典) 「転職学」(2021)  p249より (*太字は筆者追記)

つまり、生まれながら人付き合いの良いタイプの人だけが、会社の中で人間関係を築けるわけではありません。誰でもが相応の努力によって可能だということです。

とはいえ、どうしても「コミュ力高い人」「陽キャ」といった印象を持たれるかもしれません。ただ、安心してください。調査の結果で示されているのは、限定的なものでした。

『転職学』でも引用されている論文では、ソーシャルスキルとは9つの側面でできていると書かれています。しかし、転職に関する調査の結果によると、転職後の組織適応の早さに関係するスキルは、「関係開始スキル」「関係維持スキル」「主張性スキル」 の3つでした。

(画像出典) 「転職学」(2021)  p255の図を参考に筆者にて作成

なんでもかんでも「コミュニケーション力」とひとくくりにされるより、3つに絞られた方が、取り組みやすいと感じます。まず、この3つ。それだけでいいのです。

じゃあこの3つのスキル、具体的にどんな行動なのか?という疑問が続いて生まれてきます。転職学では、以下のように具体的な行動がまとめられています。

(画像出典) 「転職学」(2021)  p249の図を参考に筆者作成

図の中にあるような「気軽にあいさつする」「相手の話を真面目な態度で聞く」などの項目を見ると、そんなの当たり前だろ!と思われるかもしれません。

ただ、私が重要だと思うのは、このスキルを発揮できる場をどうやって持つのか、という点です。

自己紹介しようにも、その場がなければ自分のことを話せません。スキルは持っているだけでは発揮されない。問題は、そのスキルを発揮できる場があるかどうかです。

新入職員の受け入れ環境づくりに力をいれている職場であれば、そうした場を組織側が提供してくれるかもしれません。ただ、組織側がいつでも十分な場を用意してくれるとは限りません。自分でスキルを発揮できる場を見つける必要があります。

そんなとき、私が見つけたのが、「朝チャット」 でした。

ちょうど当時、こども家庭庁にマイクロソフトの「Teams」が導入されようとしていた時期でした。超・メール社会の霞が関にチャットツールが来た!まさに「革命期」。コミュニケーションツールを当たり前のように使っている民間の方には、この衝撃の凄みは伝わりにくいかもしれません…が、それほど、大きな変革の時期でした。

その混乱の中で、「朝チャット」という取り組みが始まろうとしていました。

内容はシンプルで、勤務開始時に「今日の一言」を投稿するもの。今日どんな業務に取り組むかに加えて、任意で一言何かを添えるというものです。

ところが、実態は課の約20名のうち、投稿するのはいつも決まった3〜4名。ほとんどの人は見るだけ、でした。

それでも私は、毎日投稿し続けることにしました。しかも、業務に関係のないしょーもない内容を意図的に混ぜながら。

たとえば、「生まれたばかりの子どもの成長の話」「通勤中の一コマ」「趣味のサウナの話」「最近ハマっている番組」などなど。

そんな内容を、1〜2文でぽつりと書き込む。思わぬ人のスタンプがつく日もありますが、スタンプがひとつつかない日もある。「え、見てくれてる?」と、心が折れそうになることもありましたが、しつこく続けました。

でも、しばらく続けると不思議なことが起きました。

朝チャットの内容を糸口に、ふとした時に雑談がうまれるようになったのです。「私も時々サウナに行ってるんですよー」「お子さん、最近元気ですか?」そんな会話から、仕事以外の一面を知り合える関係が少しずつ生まれていきました。

これは、作家・平野啓一郎さんの「分人」 という概念にも通じています。

一人の「私」がいるのではなく、人やシチュエーションによって異なる「私」がいるというのが分人主義の考え方です。職場には「仕事をする私」しか見せていないと、相手にとって自分は業務上の記号でしかありません。

朝チャットは、「仕事以外の私」を少しずつ開示できる場でした。そしてそれは、相手が「仕事以外の自分」を話してくれる糸口にもなりました。人は、自分を知ってくれている相手に、自分を話しやすくなる。

私にとって、「関係開始スキル」「関係維持スキル」を支えてくれたのが、まさにこのチャットでした。

ただ、3つのスキルにはもうひとつ、「主張性スキル」があります。これは、関係が築かれてきたあとに、効果がより高まるスキルです。まず関係をつくる。その土台ができたうえでの「いうべきことを言う」は、高い効果を発揮します。

『転職学』には、こう書かれています。

転職者が職場に馴染んでいく際に必要となるのは、「角が立たないように控えめにする」といった消極的な態度ではなく、誰とでも気軽に接しつつ、周囲の状況に合わせて行動し、かつ「いうべきことはしっかり言う」というスキルである

(出典) 「転職学」(2021)  p250より

そして、この「いうべきことはしっかり言う」を実践するとき、違和感ノートが活きてきます。貯めておいた違和感を、ここぞというタイミングで形にしていく。違和感ノートは、馴染むための道具であると同時に、主張性スキルを支える土台でもありました。

まさに、この内容が職場で実践できてきたころから、「職場に居場所がない」という感覚は薄れ、「この場に居ていいんだ」と思えるようになっていきました。

ソーシャルスキルは、持っているだけでは発揮されません。発揮できる場を自分でつくりにいくこと。それが、居場所をつくる行為そのものだったのだと思います。

おわりに

「居場所づくり」を仕事にしてきた私が、転職によって自分の職場の居場所を失いました。

前の記事で書いた「4つの支援者ネットワーク」に加え、今回の3つのポイントを紹介しました。「出羽守の封印」と「違和感の貯蓄」、「ソーシャルスキル発揮のための場づくり」です。これらの実践は、職場の「居場所づくり」に効いたと実感しています。

振り返ってみると、当たり前といえば当たり前のことだったと思います。転職という環境変化の中で、「自分がどう振る舞うか」を少しだけ意識してみること。それだけで、職場にいる自分の感じ方が変わるということでした。

転職時の違和感は、今だけの貴重なものです。こっそり貯めておき、機が熟すのを待つ。その違和感が薄れていくプロセスそのものが、組織に馴染んでいく証でもあり、職場に「居場所」がうまれることでもあります。どう馴染んでいくのかを設計することは、居場所づくりそのものです。

ここまでの長文を読んでいただき、ありがとうございました。

転職したばかりの方、あるいはこれから新しい環境に飛び込もうとしている方にとって、この試行錯誤が少しでも参考になれば嬉しいです。

それでは、また!

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