#夏の1コマ『あの夏の川を飛び越えたい』

あの夏の川を飛び越えたい
大淀川である。
宮崎市を悠々と流れる、オレのふるさとの川である。
少年の頃、この川はやたらと大きかった。向こう岸は外国くらい遠かった。いつかこの川を飛び越えてやる、と本気で思っていた少年が、たしかにここにいたのであった。
それから何十年。
俳優をやり、カメラマンをやり、タクシーを運転し、いちご農場の親方までやって、気がつけばいい歳になっていた。
久しぶりに帰った大淀川の岸辺で、オレは思い出してしまったのである。
そうだ。飛び越えるんだった。
三脚を立てる。セルフタイマーをセットする。ピピピと鳴る10秒のあいだに助走をつけ、川に向かって、よいしょと跳ぶ。
跳んだ瞬間にシャッターが切れれば、オレは川の上を飛んでいる男になる。切れなければ、ただ河原で跳びはねているあやしい男である。
跳ぶ。落ちる。カメラに戻る。また跳ぶ。
7月の陽射しの下、これを何度も繰り返した。対岸のマンションのベランダから誰かが見ていたら、通報されていてもおかしくない話なのであった。
それでも写真の中のオレは、たしかに飛んでいる。
向こう岸は、あの頃よりずいぶん近くなった。
けれど川はあの頃のまま、きらきら光って流れているのであった。
フォトコン「#夏の1コマ」に参加します。
AI画像ではありません。
三脚を立てて、セルフタイマーでよいしょと撮影しました。
川は宮崎市の大淀川です。
実はこんな写真ばかり撮っていた時期があって、朝日新聞デジタルでも特集してもらったのだった。
受講生様のnoteです。

