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大河べらぼう|俄祭りに神隠し。宝暦の色男が堂々登場!【第十二回】

大河べらぼう。
第十二話「俄(にわか)なる『明月余情』」、放送されました。

楽しかったですね~美しかったですね~。
今回は俄祭りの華やかさと、うつせみの神隠しをメインに、一気に感想・考察していきたいと思います。

◎馬面大夫が男気を見せた前回第十一話の「富本、仁義の馬面」の感想・考察はこちら。鳥山検校×瀬以(瀬川)夫婦にも注目しています。 ↓




夢のような俄祭り、神隠しにあう二人


今回はなんといっても俄の祭り。花笠踊りに、美麗な仮装、綾傘、赤、青、黄色とりどりに、吉原のメインストリート・仲ノ町で繰り広げられる祭りの再現ぶりは、これが動画で見られるってすごいことだなあと感動してしまいました。

対立しあう大文字屋と若木屋も、体力の限りににらみ合いながら踊り続ける三十日後には、お互いの健闘に兜を脱ぐ。そして二つのグループが並んで踊りだすシーンも、なんだかおかしくて笑ってしまいます。

次郎兵衛兄さんが大荷物を背負って「笠忘れた~!」と戻ってくるところも癒されましたね。いや、可愛すぎるて。

俄祭りとはー『明月余情』から

さて、「俄(にわか)」とは、俄かに(突然)始まる芝居という意味で、俄狂言、素人による即興芝居という意味。芝居といっても、歌舞伎の名シーンを簡単に真似たりする感じだったようです。

それが吉原では、春の夜桜 、玉菊燈籠と並ぶビッグイベントになったのだそう。八月朔日(一日)から三十日間もの間、吉原の大通り・仲ノ町をメインに、芸者や幇間などを中心にパレードや踊り、簡単なお芝居、コントのようなものが繰り広げられたといいます。
参考/大河ドラマ公式サイト解説

今回ドラマで、勝川春章が絵を描き、朋誠堂喜三二が序文をつけた、このイベント「俄」のパンフレットともいうべき『明月余情』。タイトルからして素敵ですね。一冊が20ページほどの本で、三冊出ています。

国立国会図書館デジタルコレクションには、「稀書複製会 編」として複製されたものがありました。眺めていると時間を忘れるほどとても楽しいので、いくつかピックアップして一緒に見てみましょう。

稀書複製会 編『明月余情』第3編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

まさにこれが、ドラマで大文字屋が躍っていたすずめ踊り。右ページ上に「大もんじや門 すずめおどり」とあるのが見えますでしょうか。左上には出演者の名前、右端には「大でき大でき(よくできたの意味)」と書いてあります。さすが大文字屋、実際に受けてたんですね~。

稀書複製会 編『明月余情』第1編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

これは丁子屋の七福神のコスプレパレード。えびす、大こく、べんてん、ふくろくじゅ……七福神の名前が書いてあって、それぞれ芸者さんでしょうか、仮装してますね。実はこの絵は4ページにわたって描かれています。かなり華やかな出し物のようなので、春章も力を入れて書いたのでしょうか。

稀書複製会 編『明月余情』第2編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

タコの被り物をつけている人たちもいます…笑
竜も見えるので、竜宮城の見立てでしょうか。こういうアイデアを出し合ってる裏を想像するのも楽しいですね。学園祭や地域のイベントのような、そんな感じを想像すると親近感が湧いてきます。

稀書複製会 編『明月余情』第3編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

パレードだけでなく、プチ軽業のような出し物もしていたみたいです。獅子舞の恰好で梯子を逆立ちで上ったり下りたりしているようですよ。ここにも「大でき大でき」の文字が♪

まだまだたくさんあるので、じっくり見たい方は下記からどうぞ。通常江戸時代の出版物は、汚れやかすれ、やぶれが多いのですが、複製版なので非常に紙面が綺麗で文字や絵も見やすいのが最高です。

『明月余情』第1編
https://dl.ndl.go.jp/pid/932212

『明月余情』第2編
https://dl.ndl.go.jp/pid/932213

『明月余情』第3編
https://dl.ndl.go.jp/pid/932214


『明月余情』の序文の素晴らしさ


そして、今回ドラマで「なんと素晴らしいのだろう」と感動したのが、朋誠堂喜三二のこの序文

稀書複製会 編『明月余情』第1編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

文の終わりから数えて三行目の半ばより。
「芸者と素人とを論せず。禿と娘を厭はず。我よ人よの譲りなく。人(にんべん)と我とを隔ぬをもて。俄の文字調ひ侍り」

祭りで賑わう雑踏の中、すれ違う人は誰が芸者か誰が素人かなんてわからない。禿であるとか一般の少女であるとか日常の立場など忘れて、自分と他人との隔たりさえなくなっていく。これが人も我も一体となって楽しむ、まさに俄の文字そのままの祭りってもんさ。

というような意味でしょうか。
祭りに夢中になっている人々の高揚した情景が見事に「俄」の文字に集約されていて素晴らしい。
ドラマの映像ともあいまって、しみじみと深く心に残りました。

新之助とうつせみの神隠し

今回、ちょっと信じられなかったのが、実はうつせみの神隠しのシーンです。

「祭りに神隠しはつきものでござんす。お幸せに」

と、うつせみの背をそっと押した花の井。

うつせみは新之助の手をとって、二人は大門を出ていく。夢のようなきらきらと美しい演出……。

え??マジで???
いやいやいや、さんざん「逃げたところで男は博打、女は夜鷹」と、女将のいねさんが言ってなかった??

祭りは神様が下りてくるから奇跡も起こるのさ、というようなことを喜三二も口にしていましたが、日常はすぐに戻ってきます。気づいたいねが「あら~、お祭りだから仕方ないわね。神隠しだったのかしら~」ってなる???

二人が仕合わせになれるのであればそれにこしたことはないのですが、新之助も平賀源内のお付きでなかったでしょうか。しれっとうつせみを別名にして「奥さん」ということにしてしまうのかな?

ま、ドラマは創作なので、創作だからこそ二人には仕合わせでいてほしいとも思っていますが、唐突に直球ファンタジーがきたので驚いてしまいました。私だけかな?

でもうつせみと新之助の未来が現実のように過酷ならそれはそれで悲しいですもんね。

これからの二人に…、幸あれ!

※ちなみに、うつせみが宴席から通りに出る際に、客からの「打掛を脱いでいきな」という一言で打掛を脱いでいったことが、衣一枚脱いで逃げた源氏物語の空蝉にかかっているのでは、というXでのポストを見かけ、実際はどうあれ、こういうのが見立て(一つの物語の中に様々な物語の要素を想起してさらに深く楽しんでいく)の面白さだなと思いました。

おわりに

今回は俄祭りの楽しさと『明月余情』、そしてうつせみの神隠しをメインに感想を書いてみました。

朋誠堂喜三二の黄表紙作家としての魅力は追加では語り尽くせないので、別記事で紹介することにします。

次回は『お江戸揺るがす座頭金』で鳥山検校×瀬以が大ピンチ!?
山東京伝も登場とあって、書きたいことがもりもりになる予感笑

また次回のべらぼうも一緒に楽しみましょう!



◎黄表紙を当時のレイアウトそのままに現代語訳した「黄表紙のぞき」を通販中です。

・「金々先生栄華夢」ほか、朋誠堂喜三二が恋川春町とタッグを組む「桃太郎後日噺」などが読める「黄表紙のぞき」はこちら ↓

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