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【黄表紙】これが江戸の本作り!十返舎一九が『的中地本問屋』で全行程をまるっと紹介

江戸の本づくりの舞台裏、覗いてみませんか?
大河ドラマ「べらぼう」第3話でも登場した、江戸の出版文化。そのリアルな制作風景の元となったのではないか、と思われる黄表紙作品があります。

それは十返舎一九の『的中地本問屋(あたりやしたじほんといや)』という作品。

ドラマでは蔦重が、遊女を生け花に見立てた本「一目千本」を手作りする姿が描かれましたが、実はこの作品の中に、作者への依頼から、彫師・摺師・製本、そして販売まで、本作りの工程が詳しく描かれているのです。

ドラマの時代より少し後の作品ですが、江戸の出版現場はほぼこのような流れだったでしょう。ドラマを見ながらこの黄表紙作品のことを思い浮かべ、私はワクワクが止まりませんでした!

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「【初心者向け】べらぼうに面白い!江戸の黄表紙を楽しむ3つのポイント」

そこで、この記事では『的中地本問屋』のあらすじや見どころをわかりやすく紹介。

ヤジキタでおなじみの『東海道中膝栗毛』の作者として知られる十返舎一九が描く、まさに当事者目線の江戸の出版の裏側を一緒にのぞいてみましょう。

👉 この黄表紙『的中地本問屋』は現代語訳でまるっと全部読める本もあります!(記事末で紹介)



どんな話?「的中地本問屋」のざっくりあらすじ

『的中地本問屋』は、江戸の地本問屋が今年は一発大ヒットを狙い、作家や職人たちにフィクションの薬を飲ませるなどして奮起させるユーモラスな物語。

  • 作家の十返舎一九(本人登場)には《傑作ができる妙薬》を酒に入れて飲ませる。

  • 版木屋(版木を掘る職人・彫師)には、怠けられないように《宝永年中に富士山から湧き出た琵琶湖の水》=霊水をこれもまた酒に入れて飲ませる。

  • 摺師の仕事は力がいるので、摺師には《怪力で知られる武将・朝比奈の腕と景清の腕を黒焼きにしたもの》をこれもまた酒に入れて飲ませる。

  • 紙を断裁する職人には、豆腐のように分厚い紙がするすると切れるよう《祇園豆腐の包丁》を煎じて飲ませる。

…と、こんな調子。各工程ではそれぞれ職人たちが「早く仕事終えて遊びにいこうぜ」なんていう、現代と変わらない愚痴をこぼしながら仕事をしている風景が描かれていきます。リアルですね!

最終的には、見事大ヒット作品ができて、江戸中で作品は大売れに。村田屋の店先には大勢の人がつめかけ、「早くください」「いやまだ綴じてません」「綴じるのはこっちでやるから、そのままでください」、最終的には「もう摺らなくてもいいから白紙でくれ」などど、めちゃくちゃなにぎわい。

最終ページには一九が版元の村田屋から好物の蕎麦をご馳走になって、「版元もめでたい、おいらもめでたい」と喜んで終わります。


一九が紹介!江戸の本づくり 全工程まるわかりガイド

① 作家を接待して作品を発注!


まずは物語がなければ始まりません。今も昔も「面白い本を作ってほしい!」という願いは同じ。地本問屋は、人気作家を吉原や料亭などで接待して、渾身の一作を書いてもらおうとします(右ページの男が村田屋、左ページの頭をかいているのが作者・十返舎一九)。


②彫師が彫る

作品ができあがったら筆耕を頼み、その後、版木屋へ外注して専門の職人に彫ってもらいます。大河ドラマ「べらぼう」内では、実際の彫師さんが彫師役を演じられていたそうですね。そこにも感激しました。

③摺師が摺る

彫られた版木を紙に摺るのが摺師のお仕事。黄表紙などの草双紙は基本本文は墨一色ですが、表紙の題箋(タイトルを記した短冊形の紙)や袋は多色刷りでした。多色刷りの場合はずれないように版木に印をつけておきます。これを「見当」といって、「見当をつける」の語源になっています。

「早く仕事を終えて晩には遊びに行きたいなあ」
「それよりスッポン煮で飲むのがいいよ」
なんて書かれている職人さんたちの会話も、現代とあんまり変わりませんね~。

④丁合を取る

摺りあがった紙を順番どおりに一枚ずつそろえることを「丁合をとる」といいます(右ページで紙を並べている人に注目)。
左ページの左下の人は紙を半分に折っているところ。
まだ少年なので、
「早く晩にならないかな、そしたら烏飴(からすあめ)を買って食べるのに」
なんてぼやいているのがかわいいです。


⑤裁ち作業

丁合を取ったら、小口や天地をそろえて紙を裁ちそろえます(右側)。裁つのは非常に難しく、時間がかかる作業だったとのこと。

⑥表紙がけ

今度は表紙づくり。台紙に表紙用の紙を貼って表紙を作っていきます。この作品では、おそらく奉公人の少年たちが担当しています。表紙掛けは基本的にそれほど力もいらないので、子供でもやりやすかったのかもしれませんね。


⑦綴じ作業

本作りもいよいよ大詰め。最後の仕上げは、綴じの作業です。行燈のまわりに女性たちが集まって、針と糸でせっせと縫い綴じています。
「この本はとんでもなく面白いよ」
「ここはたいして書くことがなかったみたい」
なんておしゃべりもしていますよ。
今でいうパートの主婦、近所のおかみさんたちが集まっている感じでしょうか。


以上、江戸の本作りの裏側が丸わかり!十返舎一九の『的中地本問屋』を紹介しました。
それぞれの職人が愚痴をこぼしたりおしゃべりしたりして仕事に励んでいるのがわかると、ぐっと江戸時代が身近に感じられます。
飾らない庶民の姿がそのまま描かれる黄表紙だからこその醍醐味ですね。

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・画像/十返舎一九 作『的中地本問屋』,[村田屋次郎兵衛],[享和2(1802)]序. 国立国会図書館デジタルコレクション
・参考文献/『「むだ」と「うがち」の江戸絵本』小池 正胤(著)、笠間書院 ほか


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