大河べらぼう鑑賞◆平賀源内イチオシ!江戸の放屁男とは?
大河ドラマ「べらぼう」。
第四回目は、蔦重へさらなるミッションが下されました。今度は吉原の主人たちから、「一目千本」の次の仕掛けを考えるよう依頼されます。そこで蔦重が駆け回って呉服屋から入銀してもらい、「雛形若菜初模様」と銘打った、いわば色も鮮やかな豪華ファッションカタログを作り上げる…というお話でした。
ほかにも吉宗公の文書を偽造する源内、花瓶の水でだめになった磯田湖龍斎の絵を元の絵のように直してしまう天才少年・唐丸、そして蔦重ごと吉原を手に入れようと企む鱗形屋などなど、45分間があっという間に過ぎたモリモリの回でしたね。
そんな中、私が注目したのは、源内先生が紹介した「花咲男」という名の芸人。なんとびっくり放屁で様々な曲を奏でるという珍芸中の珍芸を披露し、当時江戸中の話題をかっさらった人物でした。
こういう人、源内先生は大好き。
さっそく風来山人というペンネームを用い、この花咲男を紹介する「放屁論」(しかも続編まである)という遊び心あふれる作品を書いています。
今回は、この「放屁論」から花咲男がどんな芸をしていたのか、そして「へ」だの「ふう」だの「ぶう」だの言いたいだけじゃないかと笑ってしまう文章を一部ピックアップしてご紹介しましょう。
※平賀源内は見世物が大好きで、この花咲男を紹介する「放屁論」のほかにも、松茸のような棒(あえて松茸のような棒とかきます)をととんとんとん叩きながら講釈した講釈師・深井志道軒を主人公にしたファンタジー小説「風流志道軒伝」も書いています。
平賀源内イチオシ!江戸の放屁男とは?
「放屁論」に見る花咲男の芸
花咲男は、「霧降(きりふり)花咲男」とも、後には「曲部福平(きょくべふくべい)」などとも名乗っていたよう。
特技は尻から自由自在に出すという屁。その興行の様子は源内先生いわく
「その人は中肉にして、色は白い。三日月形の撥鬢という髪型をしていて、縹(はなだ/薄い青色)の単の着物に緋色の縮緬の襦袢を着ている。
口上は爽やかにして不快なところもなく、お囃子に合わせてまず最初がめでたく三番叟(さんばそう)の屁を奏でる。
トッハヒョロヒョロヒッヒッヒッヒと拍子よく、次が鶏の東天紅(鶏の鳴き声)をブブブウーブウとひりわけて、その後が水車、ブウブウブンブウブウとひりながら、自分の体を車返りにして、さながら水を汲んではうつす水車のよう」
とのこと。
なんとも珍妙極まりないこの芸は、江戸の話題をかっさらい、連日小屋は押すな押すなの大盛況であったといいます。

ノリにのってる源内先生の文章をピックアップ
「放屁論」は、一生懸命読んでみてもそうたいした内容はありません。ただただ屁にひっかけた言葉遊びを楽しむ名作なので、現代語訳をしてしまってはその言葉遊びがなくなってしまいます。それでは面白くないので、すこしその雰囲気を味わえるよう原文のままピックアップしてみますね。
漢(から)にては放屁といひ、上方にては屁をこくといひ、関東にてはひるといひ、女中はすべておならといふ。その語は異なれども鳴ると臭きは同じことなり。
その音に三等あり。ブッと鳴るものは上品にしてその形円く、ブウと鳴るもの中品にしてその形飯櫃形なり。スーとすかすもの下品にて細長くして少しひらたし。これらは皆素人も常にひるところなり。かの放屁男のごとく、奇々妙々に至りては、ひらざる音なく備はらざる形なし。
そもそもいかなる故ぞと聞けば、彼が母常に芋を好みけるが、或る夜の夢に火吹き竹を呑むと見て懐胎し、鳳屁(ほうひ)元年へのえ鼬鼠(いたち)の歳、今を春辺と梅匂ふ頃誕生せしが、成人に随ひて段々功を屁ひり男、今江戸中の大評判、屁は身を助けるとはこれならんか。讃岐の行脚無一坊、神田の寓居に筆を採る。
もっともらしく難しそうに書いていますが、内容は、
「花咲男はお母さんが芋が好きで、ある夜、火吹き竹を呑む夢を見て妊娠し、鳳屁元年へのえ鼬鼠の年(そんな年はない)、ちょうど春の梅が匂うころに誕生したが、成人するにしたがってだんだん屁をひるようになり、今や江戸中の大評判となりました。まさに芸は身を助ける、もとい、屁は身を助けるといった具合ですな、ハハハハハ!」
といったことを言っているだけのことなんです笑
この名調子のダジャレ尽くしのような文章を読んで、私はまるで教養のあるフーテンの寅さんみたいだなと笑ってしまいました。
※寅さんが不明な方は「男はつらいよ」でぐぐってみてください。主人公の寅さんが「啖呵売(たんかばい)」をしている名調子が源内先生の口ぶりにかぶるような気がして笑ってしまいますよ。
おわりに
実は江戸の見世物の面白さに魅せられて、随分調べまくったことがあります。
「ゆる江戸 見世物」という冊子にもまとめたことがありますが、現在完売しており、また近々再販したいなと思っていたところ。そのうち、江戸の見世物のジャンルや代表的芸人たちについても書いてみたい。
江戸の見世物は本当に本当に面白いので、お楽しみに!
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